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すっぴんガールズに恋しました!

「L級S班」格付けやルーキーの“代謝猶予期間”など… ガールズケイリン発展へ、もっと大胆な変革を

アプリ限定 2025/02/03 (月) 12:00 42

大いに盛り上がった2024年ガールズ戦線

 昨年のガールズケイリンも話題が盛りだくさんの1年だった。GIレースの新設により、創世期から行われていたガールズケイリンコレクションが3月取手で終了。最後のコレクションは坂口楓華が優勝した。

坂口
“最後のコレクション”は坂口楓華が初V(撮影:北山宏一)

 4月にはガールズケイリンで最も権威のある大会、GI・オールガールズクラシックが久留米で行われ、地元の児玉碧衣が初優勝。6月には高松宮記念杯と同時開催で行われる東西対抗戦のGI・パールカップが岸和田で行われ、GI初参戦だった石井貴子(千葉)が復活のV。7月には最後のフェスティバルが松戸で行われ、尾方真生の逃げ切り優勝を果たした。

 8月には女子オールスターが平塚で初開催され、3日制の勝ち上がりで行われた。ここではパリ五輪からの強行日程で参加した佐藤水菜が圧倒的な力を見せつけて優勝。女子オールスターは今年からはGIに昇格し、ファン投票と競走得点でメンバーが選抜されて争われる。続く11月のGI・競輪祭女子王座戦も佐藤水菜が優勝し、佐藤はグランプリ出場権を自らの力で勝ち取った。

サトミナ
GI競輪祭女子王座戦を制し、GP切符を掴んだ佐藤水菜(撮影:北山宏一)

 年末の大一番、ガールズグランプリは石井寛子が2回目の優勝。2023年にグランプリ連続出場記録が途切れてから、2024年を第2章のスタートと位置づけていた石井。賞金争いでギリギリの滑り込み出場だったが、見事に絶好の展開をものにして優勝を勝ち取った。10月の世界選手権で金メダルを獲得した佐藤水菜の一強時代にはさせたくないという気概を感じたグランプリだった。

2024年のガールズグランプリは石井寛子が7年ぶりの優勝(写真提供:チャリ・ロト)

 2025年の戦いはすでに始まっている。今年は4月に岐阜でオールガールズクラシック、6月に岸和田でパールカップ、8月に宇都宮で女子オールスター(新設)、11月に小倉で競輪祭女子王座戦と4つのGI戦が行われ、12月のグランプリは平塚で開催される。

 ここからは2024年のガールズケイリン戦線を追って気になったことを、今後のさらなる発展のために書き留めておきたい。

グランプリ末着賞金はこの額でいいのか?

 まずはガールズグランプリに出場した7人へのリスペクトだ。

 優勝賞金は年々上がっており、副賞込みで500万円だった第1回の2012年京王閣大会(優勝・小林莉子)から、2024年の第14回大会は副賞込みで1430万円と3倍近くアップ。しかし7着の賞金は第1回が30万円、昨年第14回が45万9000円とわずかしか上がっていない。もう少し末着の賞金が上がってもいいのではないだろうか?

GGP優勝選手の賞金は年々アップしているが…(撮影:北山宏一)

 一方で、普通開催の優勝賞金は45万8000円。普通開催は3日間走るため、グランプリの7着より手取りが多くなることは明らかだ。ちなみにGIオールガールズクラシック決勝の7着賞金は63万1000円である。比較するとガールズグランプリの賞金はもう少し高くてもいいような気がする。

 もちろん競輪は優勝劣敗が大前提の実力社会ではあるが、1年間グランプリ出場権のために汗水流して戦ってきた選手へ、もっと報酬があってもいいのではないか。せめて普通開催の完全優勝と同じくらいの7着賞金はあってもいいように思う。

「L級S班」新設などGPレーサーに恩恵を

 男子のグランプリに出場した9人には、S級S班の称号と赤いレーサーパンツが与えられる。さらにグランプリ優勝者には1年間“王者の証”となる、チャンピオンユニホームと1番車が与えられる。

24年GPを制した古性優作(中央)には1年間1番車が与えられる(写真提供:チャリ・ロト)

 男女ともに内枠が有利とされる現代の競輪界で、1年間1番車が保証されるというのは大きな意味のあることだ。ガールズケイリンの優勝者にも、1番車の恩恵とチャンピオンユニホームがあってもいいと思う。

 さらにガールズグランプリ出場の7人は、L級S班に格付けして、普通開催はS班7人を中心としたあっせんを出してもいいと思う。また男子のS級S班と同じように、グリーン車代を含めた移動費の支給も考えていいだろう。ガールズグランプリ出場選手の地位を上げ、リスペクトを醸成することで「グランプリに出たい。そのためにまずはGI出場を目指したい」と選手たちのモチベーションが上がり、ガールズケイリン全体のレベルアップにつながるのではないだろうか。

ガールズグランプリ2024の出場選手7人(撮影:北山宏一)

「L級S班」の設定をしたならば、この先L級1班、L級2班というクラス分けにもつながるだろう。細かいクラス分けはもう少し選手数が増えてからの話になると思うが、グランプリ出場の7人にはもっと恩恵があってもいいと思う。それだけ賞金差が少ないガールズケイリン選手がグランプリに出るのは大変なことであるし、出場した7人は尊い存在だということを分かってもらいたい。

ファンを盛り上げるための情報開示

 2023年のガールズケイリンリブランディングで、普通開催の積み重ねからGIレースへの出場、GIレースで結果を出した選手がグランプリ出場というロードマップが整備された。そうなると車券を買う側、選手を応援する側として興味を持つのは選考争いだ。しかし今のKEIRIN.JPではオールガールズクラシック、パールカップ、競輪祭女子王座戦の選考基準は掲載しているが、出場権争いがどういう状況なのかが全くわからない。

 この状況は、プロ野球やサッカーでゲーム差や勝ち点を表記していないようなものだ。首位攻防戦や昇格・降格をかけた試合が盛り上がるように、競輪も出場権争いをかけた戦いは面白い。勝負駆けの選手はいつも以上にハッスルすることも多く、車券に結び付くことも多々ある。

(撮影:北山宏一)

 加えてガールズケイリンに限ったことではないが、各レースの詳細成績の公開をしてほしいとずっと思っている。

 一つの例として取り上げるが、1月の松山で太田りゆが過度牽制の重大走行注意(以下、重注)を初日、2日目に1つずつ付けた。過度牽制の重注を1か月で3つ付けてしまうと、特別指導訓練(通称・お寺行き)の対象となる。特別指導訓練はお寺行きとも呼ばれ、京都の黄檗山万福寺で5泊6日修行をする。その間トレーニングもアスリートらしい食事もできないとなれば、太田りゆの前受け選択は納得できる部分もあるはずだ。(※詳細は太田りゆのコラムで確認してもらいたい)

 しかし、このレース中の違反行為についてJKAのオフィシャルホームページ「KEIRIN.JP」には一切記載がない。民間ポータルサイトの「エンジョイ」では開催翌日から違反行為が記載されるが、リアルタイムでは確認する方法がない。各開催場の管理棟や記者席では『競輪成績表1、2』という資料が審判から配布されるため違反行為の詳細が確認できるが、車券を買うファンの目には届かない。

 この資料には個人の違反行為だけでなく、最終周回の前回(赤板周回)と最終周回のタイムも記載されている。タイムを参考に車券を買うファンにとっては大事な数字だが、「KEIRIN.JP」には残り半周からの“上がりタイム”しか記載がない。詳細な資料が大勢の人の目に届けば、競輪ファンの知識と興味が深まって、よりコアな競輪ファンが増えていくはずだ。

 競輪の楽しみ方は千差万別。「違反行為は知らなくてもいい」「タイムは関係ない」というファンもいるだろうが、参考にできる資料は多いに越したことはない。あとは資料を見たファンが、おのおの想像をふくらませて車券を購入するだけだ。

 情報は多いほうがベターであり、必要か不必要かは運営サイドが決めることではない。とにかく多くの情報を公開して、車券購入意欲を湧かせることが大事だと思う。せっかく売り上げが毎年上がり、競輪ファンが増え、競輪が盛り上がっているならば、ファンの喜ぶことをどんどんやるべきだと思う。

ルーキーに厳しすぎる代謝制度

 もうひとつは競走得点下位の選手たちへのチャンスを増やしてほしいということだ。

 以前にも書いたが、新人選手にはルーキーシリーズ後の1期間(7月〜12月)は代謝にかかわる成績審査がノーカウントとなる“猶予期間”を設けてほしいと思っている。今回も124期の横山愛海がデビューからストレートでクビになり、2024年5月にデビューした126期も5名が1期目に47点を切ってしまっている。

 男子選手にはラインがあり、先輩選手とラインで戦うなかでレースを覚えていくことができるが、ガールズケイリンは単騎での戦い。自分1人だけでレースを覚えていくしかない。そう考えると、やはりせめて1期間は自由に走ってレースを覚える時間が必要ではないだろうか。せっかく狭き門を突破して競輪選手になったのだから、1日でも長く選手生活を続けてもらいたい。

わずか1年半で強制引退となった横山愛海(撮影:北山宏一)

「未勝利戦」のような下位選手も輝ける場を

 競走得点下位の選手のモチベーションアップには同格戦も必要だと感じている。 ガールズケイリンは級班分けがまだないので、どうしても普通開催ではグランプリやGI出場組などの“格上選手”が優勝争いを繰り返している状況だ。競走得点下位の選手たちもいろいろ考えながら奮闘しているが、脚力の差は明らかで上位に食い込むには厳しい現実がある。

 そこで提案したいのが、ボートレースに存在する「誰が勝っても初優勝」シリーズのような、いわゆる「未勝利戦」の開催だ。1期間に1、2回でいいのでまだ優勝したことのない選手を14人集めたあっせんがあってもいいのではないかと思う。もし自分が代謝争いに引っかかっている時期に「誰が勝っても初優勝」のあっせんが入ったなら、そのシリーズにピークがくるように調整して臨むだろう。代謝候補同士の直線対決にもなるはずで、選手も、車券を買う側も盛り上がることは必至だ。

級班分けができないならば“同格戦”を(撮影:北山宏一)

 4月のGI・オールガールズクラシック、8月に新設されるGI・女子オールスターは42人参加のGI戦の他に、14人あっせん2レース制のグループ戦が行われる。その中の1つのグループ戦を「誰が勝っても初優勝」シリーズにしたら、興行として盛り上がるはずだ。

 各期末の6、12月に競走得点50点未満の選手でサバイバルレースを実施するのもいいと思う。55〜56点を持った選手がいる開催では厳しいが、同格戦ならなんとかなると思う選手もいるはずだ。競走得点の低いメンバーのレースで賞金や競走得点が一緒はおかしいという意見が上がる懸念もあるが、1期間に1〜2回と考えて大目に見てもらえないだろうか。

 とにかくトップ選手だけではなく、競走得点下位の選手にもスポットライトが当たるような大胆な施策を打ってもらいたい。それもリブランディングのひとつじゃないかと思う。

 最後に… ガールズケイリンのテーマ曲、そろそろ新しいものに変更してもいいのでは? 特別競輪バージョンは新しいものができたものの、普通開催は10年以上変わっていないように思う。リブランディングの一環として入場曲、テーマ曲の変更もどうだろうか?


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松本直

千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。

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