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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

【太田りゆのレース回顧】松山決勝で前受けを選択したことについて

2025/01/22 (水) 18:00 17

2024年最終戦、2025年初戦を完全優勝した太田りゆ(撮影:北山宏一)

2025年の目標はグランプリに出場すること

 ネットケイリンの読者のみなさん、今月もこんにちは太田りゆです! 新年明けましておめでとうございます! 2025年もどうぞよろしくお願いします✧

 2024年12月30日が最終日の立川を完全優勝して、中0日で31日前検日の取手に追加で入りました。元旦から1月3日まで走ったので、年越しからまったくお正月感はない日々を過ごしましたが、新年初戦は完全優勝でスタートすることができました。

 私の今年の目標はグランプリへ出場をすること! GIを取っての出場がもちろん理想ですけど、賞金争いでもしっかりと戦えたらと思っています(`・ω・´)

連勝ストップ…松山決勝の振り返り

 今回のコラムですが『松山の決勝でなぜ前受けをしたのか?』の心理の話をメインに書いていこうと思います。決勝レース後に携帯を開いたとき、おびただしい量のDMやコメントを受け取りました。これまで「ノーメイクな私の本音」という題名のとおり、気取らず飾らずコラムを書いているので、その時に多数投げかけられていた『なぜ前受けをしたのか?』をテーマに綴ってみようと思った次第です。

 松山では初日と2日目に1つずつスタートの『過度牽制』という重大走行注意を受けました。ガールズケイリンではスタート後、誰が前受けをするかは決まっていません。それぞれの意思や戦法で「前を取るか・取らないか」を決めます。これはガールズケイリン独自のルールで、オリンピックや自転車競技では事前にくじ引きで並びが決まるので、牽制行為は発生しません。

 最近のスピード展開のガールズケイリンでは特に前受けは空気抵抗を考えると不利ですから、誘導を全員がすんなり追わず位置を探る瞬間があります。誘導から10車身程度離れると『過度牽制』の注意を貰うことになります。

スタート時は対戦メンバー、ルール、車番などから選手心理に影響がある(撮影:北山宏一)

 みんな勝ちたくて位置にこだわるがゆえの行為なのですが、この『過度牽制』を1ヶ月間で3つ受けてしまうと黄檗山というお寺で5泊6日の反省期間を過ごすことになります。この期間はトレーニングできませんし、食事も精進料理だけになります。

 私たちは「スポーツ選手じゃなくて“賭けのコマ”」と言われてしまえばそれまでですが、実際のところ、食事やトレーニングには十分に気を使っていますし、だからこそ強くあれるわけです。

トレーニングはもとより食事・睡眠・スケジューリングなども重要な要素を占める選手生活(写真:著者提供)

 この5泊6日、なおかつレースが続く競輪選手の生活をしていると、その期間、その生活をするのは選手としての身体のコンディションのロスは容易に想像できて正直恐ろしいペナルティなんです。この決勝は「あと1つ過度牽制をもらうと黄檗山が決定」という状況でした。

 そういった過度牽制に対する心理状況からレースでは前を取りました。本音を言えば後ろでじっくりまくりに構えたかったですが、前を取っても勝てると思える練習もしていますし、そのための準備もしています。それらを踏まえてレースでは前を取る選択をして、後ろが上がってきたら飛びついて、「いい位置から捲りに行こう」とプランを持っていました。

 ですが、相手が強くて経験豊富な選手だったことはもちろんですが、私の瞬時の判断ミスもありました。そのミスによって完全に内に包まれてしまい、内側から抜いたり横を捌くのはガールズケイリンではルール違反なので、為す術なくレースを終えてしまいました。

 勝てると思える準備をしていたにも関わらず、それが上手く出来ず、本当に久しぶりに悔しいというか惨めな気持ちになりました。レース後に感じるこの気持ちって次のレースが来るまで引きずってしまうものなので受け入れられないほど嫌なもの…。ただ今回のことで学んだこともありました。

状況をしっかりコメントで出すこと

 私が勝つと思ってくれて車券を買っている人もいれば、負けると思って車券を買う人もいるわけで。私が勝つも負けるも「それが正解」な人がいます。でもやっぱり私に期待してくれた方、私が負けたことで期待に添えられなかった方に『ごめんなさい』の気持ちがあって、あぁぁあぁ(:3」∠)

期待を向けられれば絶対に応えたいという気持ち(撮影:北山宏一)

 今回私が学んだことは「私の状況をしっかりコメントで出すべき」だったことです。自力、だけじゃなくて。今回の場合、「過度牽制を今月もう付けたくないと思っている」とかそういうひとことです。こういったコメントでみんなの予想も変わるかもしれないし!

 レースプランってひとつだけではないし、始まってみないとわからない部分が大半です。そんな中でレース前に出せるコメントは限られてくるとは思います。それでも今回は「過度牽制への意識」についてはコメントした方が良かったかもしれないと考えるきっかけになっています。今一度このあたりはしっかり整理して考えて、予想の材料になる情報や状況を伝えて行かなくてはと振り返っています。

“わざと負ける”はずがない

 前述したとおり、今回はたくさんのメッセージを受け取りました。応援のメッセージも激励のメッセージもたくさん届きましたし、今回のコラムのテーマにした「戦法について」の質問だったりもありました。そういったみんなの声には誠実に向き合って、このコラムで書けることやコメントの出し方、選手としての在り方を模索するきっかけにしたいし、真剣にレースを観てもらっていることに感謝しています。

 でもほんの一部の人から本当に残念で一生相手にしたくないメッセージもありました。言われようのない誹謗中傷も受け取りましたし、「わざと負けたんじゃないか」という趣旨の内容も届きました。ここでハッキリさせたいのが、わざと負けるはずがありません。

わざと負けるはずがない(撮影:北山宏一)

 今年の目標はグランプリに出場することです。中0日でも追加が欲しかったし、お正月だって関係なく目標のために走りたい一心で2025年をスタートしています。その目標に向かってできるすべてを注いでいます。完全優勝すれば一場所の手取りは70万円くらいです。今回は1・1・5着なので39万円でした。

 グランプリの賞金争いはシビアですし、お金が欲しいというよりもランキングに意識を集中しています。そんな中、わざと負ける状況になり得ません。何よりもこれまで私がやってきたプライドは絶対にお金の影響は一切受けません。

 それはここでしっかり綴っておきたいことでした。なるべく取りこぼさないように、一つ一つ丁寧に走ることを忘れず、また気を引き締めて頑張ります!

 さて、24日からは大宮競輪で走ってきます。私の地元戦になりますが、なんと初めての大宮出走です! 完全優勝できるように全力でやってきます!(※あと1つで黄檗山の状況は変わらず…大宮も過度牽制絶賛リーチ中!)

大宮競輪場イベントでファンの方とパシャリ(撮影:北山宏一)

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太田りゆ“ノーメイクな私の本音”

太田りゆ

Ota Riyu

埼玉県上尾市出身。112期生のガールズケイリン選手。2017年7月、高松競輪場でデビューし初勝利。同開催で完全優勝を成し遂げ、デビューシリーズから大きなインパクトを与えた。また自転車競技選手としてナショナルチームに所属し、数々の国際大会に出場。2019年のワールドカップでケイリン種目で銀メダルを獲得した。2021年の東京五輪にはリザーブ選手として日本代表に選出された。東京五輪終了後はパリ五輪をめざしナショナルチームで活動する一方で、ヨーロッパエリアで開催しているチャンピオンズリーグにも参戦。チームの支援のない状況下で世界の強豪を相手に戦い抜いた。2022年、2023年とアジア選手権スプリント種目で金メダルを獲得し連覇を果たしている。そして2024年、日本代表選手に選出され、パリ五輪に出場。ケイリン種目では日本人女子歴代最高順位となる9位の成績を残した。パリ五輪終了後に日本代表引退を宣言し、競技を引退。ガールズケイリンに専念することを表明した。趣味はメイクとファッション、ディズニー。パワーの源はコカ・コーラ。

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