2024/12/20 (金) 18:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は静岡競輪場で30日に開催される「KEIRINグランプリ2024」のレース展望です。
17日に【KEIRINグランプリ2024】の前夜祭と、共同記者会見が行われました。そこでは車番や並びも発表されましたが、サプライズな並びやコメントなども無く、終始、和気あいあいとしたイベントとなりました。
自分が初めて【KEIRINグランプリ】に出場したのは、1990年となります。前夜祭の後のエピソードとなりますが、滝澤(正光)さんや、中野(浩一)さんといった大先輩から、「飲みに行くぞ!」と誘われて、夜の街に繰り出しました。
その時のメンバーでは自分が最も年下となります。普段はしのぎを削り合っている先輩とは言えども、一度、レースを離れれば人間的にも尊敬できる方ばかりです。
さすがに緊張はしましたが、先輩たちとグラスを傾けながら、このメンバーでグランプリを走れるのは、とても光栄だと思いました。
その年は4着でしたが、次の年の【KEIRINグランプリ】では優勝することができました。
ゴールの瞬間からの大歓声は、今でも忘れられません。それ以降も含めて【KEIRINグランプリ】には通算で7度出場しましたが、一度、あの雰囲気を味わってしまうと、「また、グランプリに出たい!」との意欲が出てくるようになり、それが選手としてのモチベーションともなっていました。
今回は岩本俊介選手、北井佑季選手が初出場となりました。2人も前夜祭から、これまでのGIとはまた違った雰囲気を感じているはずです。そしてグランプリ当日のバンク内の熱気も、更に選手たちのアドレナリンを掻き立ててくれます。
岩本選手と北井選手には、その中で最高のパフォーマンスを見せて欲しいと思いますし、来年以降もこの舞台を目標とするような走りを見せてもらいたいです。
前夜祭で発表された注目の車番、そして並びですが、近畿ラインが⑨脇本雄太選手-①古性優作選手、関東ラインが④眞杉匠選手-②平原康多選手、南関東ラインが⑦北井佑季選手-③郡司浩平選手-⑤岩本俊介選手となり、⑥清水裕友選手と⑧新山響平選手は単騎戦となっています。
並びは想定通りと言えますが、やはり、選手が選択した車番がカギとなってきそうです。自分がグランプリに出始めた頃は、前受けをした選手が不利であり、スタートでのけん制も見られていましたが、現在のルールでは、レースの選択肢が多い前受けをしたラインが有利となっています。
車番通りに行くのなら、前受けをするのは近畿ラインとなりますが、脇本選手のレースプランからすると、後ろのラインが抑えに来た時には突っ張っていくのではなく、8番手まで下げるはずです。その時、抑えに来ているのが、後方からのレースとなっていそうな南関東ラインでしょう。
南関東ラインの先頭を任されたのは、今年の【高松宮記念杯】を制するなど、競輪界を代表する先行選手となった北井選手です。
そのレースでは郡司選手がラスト2周からの突っ張り先行で、北井選手の番手捲りを引っ張り出したレースとなりました。北井選手としてはその時の借りを返すべく、ここでは先行に打って出ると思います。
ただ、自分が先行するレースで後ろの選手に恩を返したいという気持ちは、関東のリーダーである、平原選手を番手に付けた眞杉選手も一緒だと思います。
眞杉選手はバック回数にも証明されている先行は勿論のこと、最近は横の動きも磨かれてきています。先行した南関東ラインの後ろは、誰もが欲しいポジションとなりますが、眞杉選手ならば岩本選手の横で粘り込むことで、南関東の3番手を奪うことも可能でしょう。
ただ、この争いでラインが短くなるようだと、後方に構えている脇本選手にとっては、絶好の捲り頃ともなります。それは眞杉選手も分かっているはずであり、先行、捲り、粘り込みのいずれかを選ぶためには、スタートしてからの位置取りがカギとなりそうです。
そう考えていくと、今年のグランプリでやるべきことがハッキリしているのは、北井選手が先行していく南関東ラインです。この展開になれば、番手から捲っていく郡司選手が、かなり有利となります。
近畿ラインは8番手からの捲りとなりそうです。ただ、先行してかかりきっている北井選手とは距離があるだけでなく、眞杉選手や単騎の選手たちが先捲りを打った場合には、さすがの脇本選手と言えども、前の7車を交わし切るのは難しいくなります。
しかも、脇本選手の番手となった古性選手ですが、前を任せてしまうレースでは、持ち味である自在性が封じ込まれてしまいます。古性選手はこのグランプリを制すれば、史上初の4億円レーサーの期待もかかっていますが、今回は優勝どころか、2着も難しいのではという見解です。
注目すべきは単騎の2人ですが、調子では清水選手より新山選手の方を上に取ります。ただ、新山選手は8番車から勝負できる位置を奪っていくのは大変です。そして前走の【ひろしまピースカップ】で捲りが出ていなかったのも気になりました。
清水選手は【共同通信社杯】での骨折の影響もあるのか、その後のレースでは精彩を欠いています。ただ【競輪祭】から充分なレース間隔を取っており、更に状態を上げてグランプリへと臨めるはずです。また、南関東ラインの後ろを回れる車番となっただけに、新山選手よりは展開も向きそうです。
【KEIRINグランプリ】の印ですが、◎は③郡司選手、〇は⑤岩本選手、△は眞杉選手、×は⑥清水選手とします。
南関東ラインの3番手かつ、そして横も狙われるポジションとなった岩本選手ですが、タテ脚は前の2人(北井選手、郡司選手)と引けを取りません。もし、郡司選手がスムーズに番手発進できたのならば、ゴール前では逆転の可能性もあると見ています。
また南関東ラインを眞杉選手や清水選手の捲りが飲み込む可能性もあると見て、買い目ではその組み合わせも出してあります。
【KEIRINグランプリ】の3日間は、静岡競輪場でスピードチャンネルの解説に加えて、グランプリ当日の30日には予想会も行います。
来場された皆さんとお会いできる機会もあると思いますので、今年の競輪界の集大成となる大一番を、みんなで盛り上げていきましょう!
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。
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