アプリ限定 2024/11/26 (火) 12:00 65
岩本俊介(40歳・千葉=94期)が長い一年の戦いの末に初のグランプリ出場を決めた。
小倉競輪場で行われた「第66回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」は死闘に次ぐ死闘となり、岩本は決勝のわずかな条件(脇本雄太優勝で松浦悠士が3着以下という…)をくぐり抜けて、最後の9人に名前を連ねることになった。来年はS班の赤いパンツを履く。
2008年7月のデビューから、94期としては他のアマ実績のある選手たちとは異色の感を持ち、“怪物”として評されてきた。早くにGIを取ると言われてきたが、届かないばかりか、決勝にもずっと乗れなかった。やっと今年、5月いわき平の「日本選手権競輪(GI)」で決勝にたどり着いた。
ダービーの準決は深谷知広(35歳・静岡=96期)の番手があり、そのチャンスをものにした。深谷が地元静岡のグランプリに出られないのは無念を極めるが、南関の仲間に思いを託し、来年につないでほしい。
競輪祭の準決は、郡司浩平(34歳・神奈川=99期)がいて深谷と岩本の3人。「すごいメンバーだね」と3人は話していた。もちろん郡司が先頭。2人を背負った思いは明らかだったものの、レースはレース。結果にはつなげられなかった。
落車した郡司は最終日も走るため、準備をしていたのだが、とにかく恐ろしい表情をしていた。悔しさなのか、無念さからなのか、見ているだけで涙が出そうな雰囲気だった。岩本としても、あの凄まじい仕掛けを繰り出した郡司の思いに応えられなかったものは重かっただろう。前の2人が落車し、立て直すのが精いっぱいで決勝に乗れなかった。
準決の並びが決まった後、岩本に話を聞いた。まず、前検日に会った時に「平常心!平常心!」と声をかけるのが私としては精いっぱいだった。でももう、準決の前には「ダメだ、平常心は無理だ!とにかく頑張って!」と言うしかなかった。岩本も「ヤバイっす!」と言い、その後に軽く冗談を言って整えていた。
岩本はグランプリが決まり、S班となることも決まった後の取材で「自分が一番弱くて一番練習しないといけない」と率直に話している。とはいえ、岩本には仲間がいる。
S班の岩本と連係する南関の仲間たちとの戦いがすでに楽しみだ。静岡グランプリがまず大事なのだが、2025年がとにかく楽しみでならない。岩本は、やってくれる。もはやそこに言葉はいらない。岩本は来年、やれる。
武骨で、不器用で、うまくいかないレースは多かった。でもずっとやれることは全部やってきた。実直で…。コロナ禍の時、開催がなくなり、その時に競輪選手の状況を電話取材して、写真は送ってもらって、ファンに伝える、という時期があった。
あの時、なんだかふっと電話してその取材をお願いしたのが岩本だった。快く応じてくれて、コロナを乗り越えてまた…と思った。正直、ここまでとは思わなかったけど(ごめんなさい!)。岩本俊介がグランプリの舞台に立つこと、来年赤いパンツで走ることを、多くの人たちが心で共有してほしいと思う。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。