2025/11/15 (土) 12:00 12
小田原競輪場で2週連続GIIIが開催されている。1センター側にあったスタンドが撤去され、ホームの位置からは小田原城が綺麗に見えるようになった。市の所有地にあるということでこうした工事は容易にはできないとずっと聞いてきたが、耐震の問題もあり、昨年後半から長期の工事が行われた。
9月30日初日のモーニング開催から再開すると、その眺望は一新した。1センター側は正門の方でもあり、入場したファンが開けた明るい空気に包まれるようだった。GIII開催ではキッチンカーや、イベントなども盛況で、古い昭和のイメージが強かった小田原競輪場は生まれ変わっていた。
1センターからレースを見るスペースも広く、振り返れば小田原城。お洒落な写真スポットにもなっていた。ただし「市の土地なので建物を建てられない」という状況もあり、雨の際への準備としてテントが数多く張られていた。
実際、大雨になると厳しい環境になってしまうだろうが、現状では晴れの日でもゆっくりと座って、テーブルで落ち着いてという空間ができていたもので、ファンは有効に利用していた感じだった。多くの人たちが、楽しんでいた。
場内の様子をうかがっていると「トイレが綺麗になってるよ、ウォシュレットがあるよ!」と仲間に伝えているファンがいた。近年の施設整備が進む中、JKAや施行者はリアルに「トイレを綺麗にしないと」と意識していた。
そういうところから。大事な視点、感覚だった。「ちょっと、もう、行きたくない」と思わせないことが大事なのだ。腹の奥からきっちり出る感覚を味わえる和式もいいが、令和の時代のお尻には「きっちりウォッシュ」が主流。結婚に際し「男の胃袋をつかめ」という言葉が昔あったわけだが、競輪場などの催しの場では「来場者のお尻をつかめ」ということなのだろう。
“清ケツ”であることは、“ケツ定的に”大事なのだ。“ケツ断”を下した小田原競輪場が、これからも長くファンに愛されると確信している。時折書いているが、全国の各競輪場がこうした施設整備を進めている。今、ファンが増えている最中にあって、より進めていくことが肝要だ。
写真は以前、小田原に雪が降った時のもので、映っている左側と中央の2つのスタンドが撤去された。「昔はこんな感じでね」「増成富夫が記念を優勝してね」などと振り返る声も聞く。やはりいろんな歴史を知ることは、競輪を楽しむ調味料に違いない。
昔話ばかりするのは煙たがられるものだが、新しいファンにたくさんの競輪の物語を知ってほしいと思う。それぞれの競輪場に、そこに通ったファンの歴史がある。そこで戦ってきた選手たちのメモリーが埋まっている。
手に届く宇宙は限りなく澄んでーー。目の前に広がる無限の競輪の世界は、新しいファンや選手たちが作り上げていく。小田原競輪場の様子を見て、あぁこれからの競輪がまた楽しみだ、と強く感じた。
もうだいぶ前になるが、2センター側の奥にあった便所は和式で、クッとヒザをかがめると、ちょうど目の前に落書きが書いてあった。「ラーメン、つけめん、ボク造免」。2013年1月に引退した造免浩二(76期=引退)さんの名前を、狩野英孝のギャグで包んだ落書きがあった。クスっ、と笑うと、ブリっ、とうんこが出たことを思い出す。
X(旧 Twitter)でも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のXはこちら
前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。
