2024/11/17 (日) 16:30 9
今年最後のGI「競輪祭」と「第2回競輪祭女子王座戦」がいよいよ目前に迫ってきました。グランプリ出場を懸けた熱きバトルを元ガールズケイリン選手の高木真備さんに展望してもらいます。また大盛況に終わった防府記念のわんにゃんフェスティバルの成果や、今後の活動予定もうかがいます。
ーーまもなく競輪祭が始まりますね。まずはガールズの「女子王座戦」についてうかがいたいのですが、その前に現在の状況を一度整理しましょう。グランプリの権利を持っているのはGIを制した児玉碧衣選手、石井貴子(千葉)選手。そして坂口楓華選手、尾崎睦選手、尾方真生選手は賞金での出場が有力です。残り2枠を賞金で争っているのは石井寛子選手、奥井迪選手、そして条件は厳しいですが吉川美穂選手、小林莉子選手も可能性は残っています。その他の選手は獲るしかない状況といえるでしょう。
本当に今年も熾烈ですね。見ている方はすごくワクワクするのですが、走る方は大変だろうなぁと…。
ーー最後の大一番に臨む11月の心境というのはどういったものでしょうか。
グランプリ出場がほぼ決まっている、まさにボーダー上、獲るしかない状況、のいずれも経験があります。出場がほぼ決まっている時は、もちろん勝ちたいし1着を取りたい、取らなきゃっていう気持ちではあるのですが、モチベーションを保つのが難しかったです。ボーダー上は…。一番イヤですね(苦笑)。とにかく一戦も落とせない、ひとつでも良い着を取らなきゃいけないという状況なので。あと、これは人によってですが、周りの選手の着順を見て賞金を計算することもあります。“〇〇さんが決勝で〇着までに入って、〇〇さんが〇着以下なら逆転する”とか。獲るしかない状況というのは、開き直って思い切っていけるので、気持ちの面では一番戦いやすいのかなって思います。
ーー真備さんは現役時代グランプリに4回出場(17、18、20、21年)していますが、2019年は出場を逃してしまいました。
獲るしかない状況というのが19年だったのですが結局その年は出場できませんでした。出られない年があったことによって、改めてグランプリに出場することのすごさに気付くことができたし、「来年は絶対に出たい」とグランプリへの思いがもう一段階上がった気がします。翌年から意識が大きく変わったのは間違いないので、21年に優勝できたのは、この出場できなかった経験があったからだとハッキリ言えます。
ーーいま賞金ボーダー上にいるのは、まさに出場できず悔しい思いをした経験を持つ選手ばかりです。
全員を応援したい気持ちなのですが…。多くてもその中から2人、権利を持っていない佐藤水菜選手や太田りゆ選手、梅川風子選手などが優勝すると、その中から1人になりますね…。
ーー今、名前が挙がった3人はまさに獲るしかない状況ですが、3人とも優勝候補に挙げられています。中でも注目はやはり佐藤選手でしょうか。
そうですね。去年のグランプリ覇者ですし、今年もオールスターを優勝していて、「今年も絶対にグランプリに出る」と譲れない気持ちがあると思います。去年(の女子王座決勝)はすでに権利を持っていたので、長い距離を踏んでいましたが、今年は2着ではダメなので、確実に1着が取れる仕掛けをしてくるのではないでしょうか。
ーーでは続いて男子の「競輪祭」についてお話を聞かせてください。
競輪祭といえば毎年、ボーダー上の選手に注目が集まりますよね。あと、競輪祭で初めてGIタイトルを獲得したという選手も多くいるイメージです。
ーー確かに19年の松浦悠士選手、20年の郡司浩平選手、21年は吉田拓矢選手、22年は新山響平選手と4年連続で、競輪祭で新たなタイトルホルダーが生まれました。
ドームだからなのか、先行選手が駆けると“カカって”押し切る場面をよく見る気がします。普段、ラインの先頭で頑張っている積極的な選手が、ここでチャンスをモノにして一気にタイトル獲得、というシーンも見てみたいなとも思います。あと去年は涙の準優勝だった松井宏佑選手がリベンジを果たしてGI初制覇、というのもあるかもしれませんね。
ーー特に注目している選手はいますか。
今年は静岡でグランプリが行われるので、地元の深谷知広選手は本当に頑張ってほしいと思っています。深谷選手は南関のために戦ってラインから優勝者を出したり、ヨコの技術も磨いて若い選手を援護したりと南関を盛り上げてきた選手なので。権利を持っている郡司選手や北井佑季選手は、1人でも多くの南関の仲間とグランプリを走りたいと思っているはずですし、競輪祭で深谷選手と連係する場合は恩返しの意味も込めて思い切ったレースをするかもしれません。そうなれば深谷選手のチャンスは広がるのかなって思います。
ーー真備さんの最近の活動についてうかがいます。リニューアルされた防府競輪場で行われたわんにゃんフェスティバルはいかがでしたか。
ありがたいことにたくさんの方に集まっていただきました。というか競輪場が、すっっっごくキレイになっていましたし、お客さんも多くてすごい賑わいでした。そして、譲渡会でもたくさんのご縁がありました。
ーー大盛況だったようですね。
山口県はすごく積極的に活動されている団体さんが多くて、譲渡会も毎週のように開催していたり、防府市内でも活発に行われているのですが、それでも引き取り手が決まらない時もよくあります。最初に連絡した時、団体関係者の方は「うまくいくかどうか…」と半信半疑な部分もあったようでした。ただ私は、競輪場は普段は譲渡会に来ない方が来たり、広島競輪場が改修中ということもあって県外からのお客さんも望めるので、普段の譲渡会とは違う層の方が来てくれるのでは、と期待していました。実際にはワンちゃん2匹、ネコちゃん8匹にご縁があり団体関係者の方も「こんなに決まるとは思わなかったです」と喜んでくださったので、すごくうれしかったですし開催して良かったなと心から思いました。
ーー真備さんの活動も着々と実を結び始めていますね。
ボランティアさんからは「車券を初めて買ってみました」とか「初めて競輪を生で観たけど、楽しかったしイメージが変わりました」と言っていただけました。こういった声が聞けて本当にうれしいですし、これからもそういった方が増えていくように活動を続けていきたいと思います。
ーー他に何か出来事などはありましたか。
うれしいことがひとつあったんです。私は今、日常生活のお手伝いが必要な方と動物が一緒に生活する施設で働いているのですが、その施設で生活している1人が「ぷーちゃん」(※真備さんが里親になり、その施設で“仕事”をしているトイプードル)のためにプレゼントをつくってくれました。その子は外に出るのが苦手なんですけど、手作りのものをあげたいと頑張って通って、マフラーをプレゼントしていました。終わってから「楽しくできた」という報告を受けて、私もすごく幸せな気持ちになりました。
ーーでは最後に、今後のわんにゃんフェスティバルの予定を教えてください。
17日に取手競輪場で行われる「サイクルアートフェスティバル」にブースを出させていただきます。競輪開催日ではないのですが、毎年やっている大きいお祭りです。あとは24日の競輪祭の最終日と、30日に久留米シティプラザという市民ホールの六角堂広場で開催させていただきます。ご都合のつく方はぜひ足をお運びください!
高木真備
Takagi Makibi
元ガールズケイリン選手(106期)。2014年に奈良競輪場でデビューし、玉野競輪場で初優勝する。2016年のガールズケイリンコレクションでファン投票1位を獲得して、優勝。同年末にガールズグランプリ初出場を果たす。2020年には、特別競輪ガールズケイリンフェスティバル(いわき平)で完全優勝し、同年のガールズケイリンコレクション(伊東)も優勝した。ガールズケイリングランプリ2021で悲願の優勝を果たし、2022年4月に引退。現在は動物保護活動をしている。