2021/07/10 (土) 12:00 6
7月、119期と120期の本デビューが各地をにぎわしている。ガールズ10期にあたる120期は苦戦続き。先輩選手たちの経験の前に跳ね返されているが、級班制度のない戦いなので、やむを得ない面もある。
まず開催に慣れること、力を出し切れるようになるまで、が最初のステップとして求められる。
ひとつ上の段階に入ると、劇的に成績が上昇するケースもあるので、よく見ておきたい。
開催に同期が少ないので心細いのも事実。そうしたメンタル面の影響を受けていると感じる…。それではいかに脚力があってもレースで結果が出せない。養成所では、孤独な本デビューから強い心理で戦うトレーニングも必要なのかもしれない。
119期は、力強い、スピード感ある走りを多くの選手たちが見せている。そんな若鮎たちと連係するベテランたちの声を聞くことも多い。
「作戦会議から、全く違うんだよね…」。
戸惑い顔で、少し前から複数の選手から聞いた。確か…2、3年前から。
要すると作戦がシンプル、組み立てに深さがない、それで勝てる…のだ。
そんな話をいろんな選手としていると「デビューから7車立てだから、深く考えることが必要ないからなのかな」と思い至る。「9車だと、考えることや対応することが多い。そうか〜」。
9車立てでは“脳内でどれだけの情報を処理しながら”だったのか…と改めて思うものだった。
7車立てで成績を残し、上位へ。そこで壁に当たる理由の一つがあるのだろう。頭脳警察。
『その考えで考え方で大丈夫なのか! 』取り締まる思考回路を誰もが、実は持っている。
“Who Are the Brain Police?”…。
印象的だったのが、「楽、っていう言葉が出てくるんですよ」とベテランが首を傾げた時だった。体は傷だらけ、気持ち一本で先行勝負を貫いてきたレーサー。武骨一筋…。「俺たちのころだったら、作戦会議で楽っていう言葉は使えなかった」。とはいえ、“楽”もまた真理なのが競輪の面白さだ。
別線がどう動いて、自分がこう出られれば、楽。初手にここが取れれば、楽。勝ちに近づくという意味だ。悪い話じゃない。“楽=戦略”だ。
そこでまたしかし、がある。「若いうちにそれをやってていいの? そんな言葉、使えなかったよ、昔は」。
“Brain Police!”。見えない価値を高めること、自分という選手に対する目を作ること。
もう古い話なのかな。上に行くには下積みが必要。そんな時代じゃないのかな…。
永遠に正解はない世界。9車立てと7車立ての共存する時代を取材できる今を享受したい。今までには聞かれなかった話も出てくる。それを書くのが、当方の仕事だ…。
選手のコメントは、叫び。
昔、頭脳警察というバンドがあって、何かを叫んでいた。できあがった音楽が多く聞かれる現代。かつて、できあがろうとしない拒絶のロックがあった。競輪が生み出しているブルースを、多くの人に聞いて欲しい。
Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のTwitterはこちら
前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。