2021/07/08 (木) 12:00 6
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は福井競輪「第71回不死鳥杯(GIII)」に出場する古性優作選手を解説する。
⚫︎古性優作
身長は168cmと自力トップクラスの中では小柄に分類されるが、体重は77kgと当たり負けする事も無い。フレーム(骨格)に目を向ける。下肢(脚の長さ)は若干短めだが、上肢(腕の長さ)は平均以上あるように見える。体幹部は厚みに優れ、重心は低い。
古性選手のボディーはバランスタイプで、高回転時も筋量が邪魔をする事はないだろう。カーフ(ふくらはぎ)の盛り上がりはなかなかのもので、引き締まった足首とのコントラストが素晴らしい。スプリンタータイプである事は一目瞭然だ。
そして何より古性選手といえば、異次元のハンドル捌きが魅力だ。筆者も古性選手の番手を走った事があるが、まず一般的な選手とそもそも自転車の挙動(動き方)が違う。自転車の左右への振り方が独特で、誰にも真似出来ないかもしれない。古性選手はハンドル捌きをガイドする手首、肩甲骨の使い方がずば抜けている。そのためスタンディング(立ちこぎ)状態でも決してバランスを崩す事は無いのだ。
ブロックや横のさばきと言うのは、準備が整ってないとこなす事は出来ない。たとえ一流の追い込み選手にとってもそれは同様だ。特にスタンディング状態での横のさばきは、最高難易度であるが、彼はそれを苦にするどころか得意としている。簡単に言うと立ち回りにスキがないのだ。現時点で脚力負け以外の競り負けが考えられないほど、自転車を操作する技術が突出している。
筋肉にフォーカスするコラムなのに技術的な話をしてしまった。それくらい古性優作は筆者のお気に入りの選手だ。間違いなくタイトルに1番近い男だろう。
そして最後に…
古性選手の公式プロフィール欄にある“ニックネーム”箇所には『こしょう』と書かれてある。ニックネームは本名以外の愛称であるものだが、古性選手は苗字をそのまま“ニックネーム”として記入している。イントネーションが違うのだろうか? どこかに抑揚を付けるのだろうか? 謎は深まるばかりだ。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
SS級の自力選手は郡司浩平選手のみ。各地区をみても、大砲と呼べる選手が関東の森田優弥選手、中部の山口拳矢選手、近畿の古性優作選手くらいしかいない。郡司選手が本調子ならば4日間『グンちゃんワンマンショー』となる可能性も。
筆者が個人的に楽しみなのは山口拳矢選手だ。先日、松浦悠士選手のカマシを許さず先行した開催があったが、今度は郡司選手の最高クラスのカマシ捲くりを抑える先行が見たい。そうなればこの4日間は極上の開催となるだろう。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。