2024/06/30 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は取手競輪場で開催されている【水戸黄門賞】の決勝レース展望です。
【水戸黄門賞】が開催されている取手競輪場では、様々なイベントの中で、茨城選手会のブーズも出展しています。
自分も二次予選の日に予想会イベントに参加させてもらいましたが、選手会ブースを覗いてみると、パワーマックス(エアロバイク)やワットバイクが置いてあり、ファンの方と選手とで脚力勝負が行われていました。
その他にもメインスタンド前の特設ステージでは、連日のように選手会のトークショーが行われているだけでなく、決勝当日にはチャリティーオークションも開催されます。
選手時代から茨城の選手会はこうしたイベントに協力的であり、それがレースにおける団結力としても現れているのではないかと思っていました。
その事実が改めて証明されたのが、茨城の選手を含めた、決勝における関東ラインの並びではないのでしょうか。
関東ラインは⑦小林選手-⑤坂井選手-①吉田選手-⑧吉澤選手-⑥芦澤選手と5車での連係。中近ラインかつ、SS班での連係となったのが、③脇本選手-②山口選手。④松本選手、⑨守澤選手は単騎となっています。
準決勝で圧巻のレースを見せたのは脇本選手です。番手を回っていた東口選手が付いて行けない程の加速で、上がりタイムは10秒7を記録しています。二次予選は雨だけでなく、道中では接触がありながらも、10秒9で捲ってきていたように、いい状態まで戻っているのは間違いありません。
準決勝では山口選手も8番手から鮮やかな捲りを決めています。この2人がラインを組むのは初めてであり、その走りにも興味が沸いてきますが、それでも関東5車の先行をとらえるのは難しいと言えるでしょう。
1番車に吉田選手が入っただけに、スタートを取るのは関東ラインとなりそうです。こうなると、脇本選手は単騎の2人を挟んだ8番手から前を抑えにかかりますが、小林選手はその動き出しを見て、突っ張り先行へと入っていきます。
小林選手はスプリンターと言うよりも、地脚のある先行を得意としており、残り2周から踏み出していっても、スピードを維持できます。その番手から捲っていくのは、ダッシュ力のある坂井選手。3番手となった吉田選手の裏表が、3連単の本線となりそうです。
関東ラインの5番手を回る芦澤選手は、さすがに不利な位置取りと言えますが、準決勝の後には涙を流しながら、「競輪は脚力ではなく、ラインの強さと気持ち」と話していました。
その準決勝では眞杉選手が突っ張り先行をして、吉田選手が1着、芦澤選手が2着となりました。これはオールスターで眞杉選手のGI初優勝を引き出した、吉田選手の走りに、今回は眞杉選手が前を回ることで恩を返したと言えます。
関東ラインの先頭を任された小林選手も、記念初優勝を完全優勝で達成した【三山王冠争奪戦】では、眞杉選手の突っ張り先行があったからこそ、番手捲りを決められたはずです。
最近の競輪ではラインの存在が、改めて重要視されるようになってきています。ここで関東ラインから優勝者が出せたのならば、グランプリに向けての機運も高まってくるはずであり、関東ラインでの上位独占も充分に期待できそうです。
◎は①吉田選手、○は⑤坂井選手、△は⑧吉澤選手とします。✕は準決勝でいい捲りを出していただけでなく、決勝でも関東ラインの後ろからレースを運んでいきそうな④松本選手に回したいと思います。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。