2024/07/07 (日) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は小松島競輪場で開催されている阿波おどり杯争覇戦の決勝レース展望です。
【阿波おどり杯争覇戦】が行われている小松島競輪場は、海にほど近いバンクとしても知られていますが、岸壁沿いに作られた宿舎からは紀伊水道が一望できます。
お風呂に入っている時だけでなく、ローラーに乗っている時ですら、目の前に広がる景色は格別であり、個人的には全国の競輪場で最も癒される場所でした。
海に近いバンクと言うことで風の影響も受けやすいのですが、その海風ですら、今大会に出場した選手の身体を、クールダウンさせるまでには至らなかったようです。
特にこの時期は宿舎や控室と、外気温との差がかなりあるので、体調管理がとても難しくなります。実際に今大会に出場した選手からは、「熱中症気味」といったコメントも聞かれていました。
すり鉢状に作られたバンクは熱が逃げにくく、猛暑ともなれば日中の練習もままならなくなります。また、レースに臨むのは僅かな時間だとしても、それまでのウォーミングアップで、外気温に身体を慣らしておく必要が出てきます。
明日も30℃超えの予報が出ている小松島競輪場ですが、出場する選手にはベストコンディションでレースに臨んでもらいたいと思います。また、現地で観戦されるファンの方も、充分な暑さ対策をしてきてください。
決勝の並びですが、地元徳島ラインが①犬伏選手-④小倉選手。中四国ラインで連係するかと思われた⑨清水選手は単騎となりました。
福島ラインは③新田選手-⑦佐藤選手。決勝で唯一3車で並んだ九州ラインは、⑤嘉永選手-⑧山田選手-⑥山口選手となり、②深谷選手は単騎戦となります。
注目の先行争いは後ろに小倉選手を付けた犬伏選手が、レースの主導権を握っていきそうです。
準決勝で1番車に入った犬伏選手でしたが、スタートを取りにはいかず、そのレースで前受けをしたのが2番車の新田選手でした。決勝でも犬伏選手は新田選手にスタートを取らせて、その後ろからレースを進めていくと見ています。
北日本ラインと徳島ライン、そして単騎の2人を挟んだ6番手から、嘉永選手が新田選手を抑えにかかりますが、そのタイミングで犬伏選手が発進。その時に深谷選手、清水選手と単騎の2人がどんな動きをしているかがポイントです。
単騎の2人としては、抑えに行った九州ラインの後ろを付いていくだけでなく、出切った嘉永選手を一度叩くことで、犬伏選手の先行を引き出すという作戦もあります。
その展開となれば、先行した熊本ラインの後ろが絶好のポジションとなりますが、◎は車番的に3番手を取っていそうな深谷選手、○は清水選手としました。ただ、ゴール前で2人の着順が変わる狙い目も予想には入れてあります。
単騎2人の後ろから捲ってくる△は嘉永選手としましたが、展開的に8番手に置かれてしまう×新田選手は、2着までが精一杯と言えそうです。
特選と二次予選を勝利した佐藤選手は、コースも見えているだけでなく、準決勝でも番手の仕事をきっちりとこなしていました。ただ、新田選手が後方のままでは持ち味を発揮できないだけに、福島ラインの位置取りや、仕掛けにも注目したいどころです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。