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車券“予報”師マキビの「わんだふる♡らいふ」

どうしよう…やばい…高木真備が現役時代に経験したスタート牽制「勝つなら絶対に我慢しなきゃ」

2024/05/23 (木) 18:00 35

今月も元ガールズケイリン選手・高木真備さんはイベントや動画配信サイトへの出演、動物保護の活動など大忙し。そんな真備さんに、先日行われた今年最初のガールズGI「オールガールズクラシック」や「日本選手権競輪」について振り返ってもらいます。また現役時代は出場の常連だったオールスターファン投票についての思いや、読者の方の質問にお答えしながら近況の活動についてもうかがっていきます。

イベントや動物保護の活動など大忙しな高木真備(撮影:北山宏一)

勝敗に大きくかかわってくるスタート牽制

ーー今年最初のガールズGIは地元・久留米の児玉碧衣選手の優勝で幕を閉じました。決勝戦を見た感想を教えてください。

 全員が「勝ちたい」という気持ちに溢れていたと思います。特にあのスタート牽制にそれが表れていたように感じました。

ーーそのスタート牽制について意見をうかがいたいと思います。「発走はすみやかに!」という声掛けが毎回発走直前にあるように、号砲が鳴ったらすぐに誘導員を追い掛けるのがルールのはずです。また普段のレースでは逆に、スタートを取りたい複数の選手が号砲と同時に飛び出すシーンもよく見られます。なぜ今回の決勝戦ではスタート牽制があったのでしょうか。

 もちろん、メンバー構成や車番、その選手のスタイルによって違いはありますが、あの場面では「前受けは勝つチャンスが減る」と全員が判断したからだと思います。それは今のガールズケイリンのルールによるものだと思います。

「勝ちたい」気持ちが表れた決勝戦のスタート牽制(写真提供:チャリ・ロト)

ーーどういうことでしょうか。

 男子と違ってガールズケイリンは誘導が退避する場所が決まっています。ビッグの決勝戦など、みんなの仕掛けが遅くなるレースでは、誘導が退避したあと1人だけ長い時間、風を受けてかなり脚をつかわされるので、前受けは結構リスクが高いんです。

ーーそうなんですね。真備さんは現役時代にスタート牽制をした経験はありますか?

 私もあります。みんなが全然出ない時は「どうしよう」、「ヤバイ」っていう空気になるのですが、それでも勝つなら絶対に我慢しなきゃ、って感じで…。それほどスタートを取るか取らないかは、勝敗に大きくかかわってきます。

ーーでは、今後も大きいレースの決勝戦などでスタート牽制が再び発生してしまう可能性も高い?

 そうなってしまう可能性は十分に考えられます。なので、誘導員退避のタイミングについてはルールを変更するなどの議論があってもいいのかなと感じています。

白熱のダービーの決勝戦「心理戦があったのかな」

ダービーで復活優勝を遂げた平原康多選手(撮影:北山宏一)

ーー日本選手権競輪(ダービー)は平原康多選手が復活優勝を遂げました。平原選手とは“埼京”つながりですが、現役時代は接点などありましたか?

 私が初めてコレクションを優勝したオールスターの時に、埼玉勢に胴上げしてもらったのですが、そこに平原さんもいらっしゃいました。あと自転車取り(※レース直後の選手を同県や同地区の選手が出迎えながら自転車を受け取る)があった時代は、東京勢が少なかったり、不在だったりすると埼玉の選手が手伝ってくれていたので、お世話になっていました。

ーーダービーの決勝戦を見て感じたことはありましたか。

 単騎の選手が多かったからこその心理戦があったのかなって、勝手に想像しながら見ていました。ガールズケイリンも全員が単騎のレースなので。

ーーそれは真備さんならではの着眼点ですね。

 ここから先はあくまでも元ガールズ選手の個人的な感想です(笑)。私は同期の清水裕友選手に注目していたのですが、古性優作選手の後ろが取れて、良い位置だと一瞬感じました。でもよくよく考えると、良い位置だからこそあそこから動くのは逆に難しかったのかなって。また古性選手も、後ろに清水選手がいたことで仕掛けるタイミングを取りにくかったのかな、なんて思いました。

ーー真備さんも似たような経験が?

現役時代、心理戦に多く直面していた(photo by Shimajoe)

 ガールズケイリンは全員単騎なので、自力のある選手が自分の後ろに入ってしまうと、番手まくりを打たれたり、差される可能性が高い気がして、仕掛けにくくなることがあります。また自力選手の後ろをすんなり取れた時は“前が仕掛けてくれるかもしれないし、自分から仕掛けずに付いていくべきなのかな”と迷うことがありました。位置が悪ければ「自分で行くしかない!」と腹をくくることができて、それが結果的に良い仕掛けにつながることもありますが、良い位置だからこそ心理戦になってしまう、ということが結構ありました。

 このようなレースはライン戦が基本の男子のレースではあまり見られないですが、ガールズではよくあるケースです。ダービーの決勝を見ていて、ライン戦と単騎戦の、それぞれの難しさと深さを感じてすごく勉強になりました。そして改めて男子選手のレベルの高さを感じることができました。

「ファン投票で選ばれたい」っておこがましい雰囲気があった

ーー先日、オールスターのファン投票が締め切られました。真備さんは現役時代、オールスターに何度も出場されています。真備さんにとってオールスターとはどんな大会ですか。

 私が初めてビッグレースに出場したのがオールスターでした(2015年7月・松戸コレクション)。その頃は優勝とかも全然できていなかったし、実力もまだ伴っていなかったのに、ファンの方が投票してくださったおかげで7人しか走れない大レースを経験させていただきました。

ーー結果は逃げて惜しい2着でした。

 出場できたのは先行する姿を評価していただいたからだと思ったので、「先行するんだ!」っていう気持ちで臨みました。それが3・3バンクでうまくハマってくれた感じです。でも正直、あのメンバーで逃げて2着に残れるとは思っていませんでした。その頃は普段のレースで先行していても、「最後はどうせ差されちゃうんだろうな」っていうのがよぎってしまい、実際にいつも差されていましたから。なんとか打破しなきゃって思っていたタイミングで迎えたオールスターで逃げ粘ることができたので、この2着は自分にとって大きなターニングポイントになりました。このレースのあとから、先行しても「私は粘れるんだ!」と心から思って走れるようになり、数場所後からは逃げて優勝できるようになってきました。そして次の年のオールスターではビッグレース初優勝を達成することもできました。オールスターは私にとって本当に特別な大会です。

ーーファン投票の結果が出るまではドキドキしていましたか。

2017年のガールズドリームレースではゴール寸前で差し切り逆転し見事優勝(写真:本人提供)

 そうですね…ドキドキ…していましたね(笑)。今は多くの選手が「ファン投票をお願いします」とか自分のSNSなどで積極的にアピールしているじゃないですか。でも当時は「ファン投票で選ばれたい」って言うのがおこがましいというか恥ずかしいという雰囲気があって、自分から「投票をお願いします」って呼びかける選手はあまりいなかった気がします。『選ばれると思ってるの?』って周りの選手に言われたこともありましたし(苦笑)。ただファン目線で考えると、選手が自分の口からお投票を願いしますって呼びかけるのは、盛り上がるしうれしいことなのかなって。今の流れは良いことだと思います。

動物も生きていて楽しいなと思えて輝ける場所、社会をつくりたい

ーーさて、ここからは真備さんの近況の活動についてうかがいたいと思います。読者の方からこんな質問が届きました。『夜勤の仕事ってどんなお仕事ですか?』確かに先月のコラムで「夜勤明けにマックに寄る」と言っていましたね。

 引退後に「日常生活のお手伝いを必要とする方が保護犬と一緒に住む福祉施設」というのをつくったので、今はそこで働いて、住んでいる方たちの食事をつくったり掃除をしたりしています。何かあった時のために夜間も常駐しているので夜勤もあるんです。競輪のイベント等に呼んでいただいて私が施設に行けない時には、他の職員の方に見てもらったりと何人かでサポートさせていただいています。

保護犬と一緒に住む福祉施設をつくってさまざまなことに取り組んでいる(写真:本人提供)

ーーそうだったんですね。それにしても素晴らしい行動力です。

 犬や猫を保護して譲渡するという団体さんは今も全国にあって、その方々のおかげで助かっている命がたくさんあります。でも、まだまだ行き場のない動物たちがたくさんいるので、それ以外の場所で犬や猫が輝ける場所をつくりたいなと考えています。

 高齢者や障がいを持つ方、学童や児童養護施設などの子どもたちが保護動物と触れ合える場所をつくることや、ドッグトレーニングという仕事を障がいを持つ方の仕事にできたらもっと広がるかな…とか。人間だけではなく、動物も生きていて楽しいなと思えて、お互いを必要としながら輝ける場所、社会をつくっていくというのが大きな目標です。その目標の実現に向けて、今はやれることをやりつつ、勉強と貯金をしています。2ヶ月くらい前にTVKさんが私の活動についての特集を組んで放送してくださいました。今でもYouTubeに動画が上がっているので、もしよかったら「TVK 高木真備」で検索してご覧になってください!

ーー動物保護の活動と並行して、全国各地の競輪場のイベントに出演するなど引っ張りだこですね。そして真備さんが、その土地の美味しいものをたくさん食べている写真などをSNSでよく目にします(笑)。

 ははは。そうなんですよ〜。ありがたいことに色々な場所に呼んでくださって、そこで美味しい物をたくさんいただいています!

ーー現役の頃に比べれば運動量も減っていると思いますが…。そんなに食べても大丈夫なんですか。

 全然大丈夫じゃないです。最近ちょっと体重が…(苦笑)。

ーーヤバイじゃないですか!

 そうなんです! だから最近、自分の中でルールを決めました。

ーーなんでしょう。

 毎日体重を測ってアプリに記録することと、たくさん食べていい日と我慢する日をしっかり分けることにしました。

ーーそれは大事なダイエットの基本ですね。

 遠征に行くと美味しい食べ物がたくさんあるし、食事やおやつを用意していただけることも多くあるんです。そういう時は体重とか気にせずに、楽しく気持ちよく食べることにしました!(笑)。でもその代わり、家にいる時などはちゃんと我慢して、バランスを取っています。

ーーということは、夜勤明けのマックシェイクも今は我慢しているんですね。

 そうなんですよ(涙)。でもそれだけは解禁しちゃおうかなって企んでいます(笑)。


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高木真備

Takagi Makibi

元ガールズケイリン選手(106期)。2014年に奈良競輪場でデビューし、玉野競輪場で初優勝する。2016年のガールズケイリンコレクションでファン投票1位を獲得して、優勝。同年末にガールズグランプリ初出場を果たす。2020年には、特別競輪ガールズケイリンフェスティバル(いわき平)で完全優勝し、同年のガールズケイリンコレクション(伊東)も優勝した。ガールズケイリングランプリ2021で悲願の優勝を果たし、2022年4月に引退。現在は動物保護活動をしている。

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