アプリ限定 2024/04/23 (火) 16:30 33
久留米競輪場で4月26〜28日に行われる「第2回オールガールズクラシック」。今年の見どころや出場選手の近況、勝ち上がりルールをデイリースポーツの松本直記者に解説いただきます。
ガールズケイリンNO.1を決めるGI・第2回オールガールズクラシックが26日に開幕する。28日まで3日間の日程で、久留米競輪場で開催される。選考期間は2023年2月から2024年1月までの1年間で、獲得賞金額上位42人が出場権を掴んだ。
優勝者には12月29日に静岡で行われるガールズグランプリ2024の優先出走権と、優勝賞金750万円(副賞含む)が贈られる。
無事故完走なら準決進出が確定している初日特選「ティアラカップ」には昨年12月29日に行われたガールズグランプリ1〜3着と、賞金上位者が選ばれた。昨年のガールズグランプリ1着の佐藤水菜、同2着の梅川風子はナショナルチームの活動のため出場しない。同3着の児玉碧衣と、児玉を除く選考用賞金ランキング上位7番手までが選ばれている。
まずは「ティアラカップ」出場組をチェックしていこう。
選考順位1位は児玉碧衣。地元久留米の看板レーサーだ。昨年から今年にかけてはアップダウンの激しい状況が続いている。
ガールズグランプリ2022(平塚)で落車し、人生初の鎖骨骨折を経験した児玉。痛みに耐えて競走に参加しレース勘を戻していき、6月にはガールズケイリン初のGIレース・第1回パールカップ(岸和田)を優勝した。8月にはガールズケイリンコレクション・ドリームレース(西武園)で佐藤水菜、太田りゆのナショナルチーム勢を完封する逃げ切り優勝を果たした。
しかし後半戦は10月のオールガールズクラシック(松戸)は決勝4着、11月の競輪祭女子王座戦(小倉)は予選敗退、ガールズグランプリ2023(立川)はナショナルチームの佐藤水菜、梅川風子に完敗の3着と精彩を欠いてしまった。
年が明けてから普通開催では結果を出すも、2月からは腰痛、食あたりで欠場期間が長くなった。3月のガールズケイリンコレクション(取手)は久米詩の逃げをたたけず7着大敗と“児玉碧衣らしさ”を見ることができなかった。
ただこの負けは無駄ではなかった。敗戦、悔しさは児玉碧衣を強くする養分なのだ。「負けたくない」と気持ちを奮い立たせ練習に向き合い、結果もついてきた。4月は玉野、松山と2場所連続完全Vで、地元久留米で開催されるGIにきっちり間に合った。
流れが悪いときこそロングスパートを敢行して勝利のリズムを引き寄せる、児玉碧衣の“復活の方程式”は完璧だ。あとは直前まで体調を崩さず前検日を迎えるだけ。
久留米でオールガールズクラシックが開催されるのは選手人生において、最初で最後になるかもしれない。全集中の3日間は児玉らしいダッシュ力を発揮して、トップスピードの高さでライバル達をねじ伏せていく。
選考順位2位の久米詩は、状態が気がかりだ。
直前の向日町は1日目に落車。しかし欠場することはなかった。2日目の予選2はまくりを繰り出すも後続に差されて3着。今年初めて決勝進出を外してしまった。それでも最終日の一般戦は気持ちを切らさず走り切り、まくりを決めて1着と意地を見せた。
状態の回復が鍵になるが、きっちり立て直してくれば侮れない。ビッグレースでの勝負強さが売りの選手だけに目が離せない。
選考順位3位は坂口楓華。充実度は今年一番だ。
昨年のガールズグランプリは後方で何もできず5着。悔しさを晴らすように年頭から1着を量産し、1月後半の岸和田から4月四日市まで8開催連続優勝。3月には初のガールズケイリンコレクション(取手)優勝も成し遂げた。
努力と根性のたたき上げレーサーがGI優勝へ手が届く所まで登ってきた。逃げ、まくり、差しと自在に戦える強みを生かして、GI初優勝へ挑む。
選考順位4位の吉川美穂は今年の優勝が3回と、少し物足りない成績だ。
しかしビッグレースになればなるほど、吉川美穂の追走技術は目立つ。中距離種目で鍛えた併走能力と地脚を生かした自在戦はGIレースで生きてくる。久留米バンクは初登場だが、侮れない一人に違いない。
選考順位5位は尾方真生。ホームバンクでのGI開催で高まる部分も大きいはずだ。
今年は消極的なレースも目に付いたが、地元GIに向けてレース内容がよくなった。尾方真生の魅力は先行力。風を切って先頭に立ち「来るなら来い」の気持ちで駆けたときには強じんな粘り足を発揮する。
直前の岸和田決勝は先行勝負で押し切り優勝と波にも乗ってきた。走り慣れた久留米バンクならなおさら強気な組み立てで勝負できそうだ。尾方は積極策でGIを勝てる可能性を感じる選手。遺憾なく先行力を発揮してもらいたい。
選考順位6位はガールズケイリンのレジェンド・石井寛子。
昨年のガールズグランプリは獲得賞金レースで敗れ出場できず。その悔しさが原動力となり、今年は例年以上のハイピッチで1着を積み上げている。
今年の優勝は7回と衰えは全く感じない。直前の前橋では逃げ切り、外併走からの差し勝負、イン切り飛び付きからの一気差しと変幻自在の技を繰り出した。
スピードだけでなく、テクニックで勝負できるガールズケイリンの第一人者。GIウィナーは喉から手が出るくらい欲しい称号だろう。地元久留米勢にとって強敵になることは間違いない。
選考順位7位は柳原真緒。2022年のガールズグランプリ覇者で昨年は賞金女王として1年間戦ったが、体調不良の時期もあり、思うような結果を残せなかった。
グランプリ出場は逃してしまったが、今年に入って復調ムードだ。ここまで3Vを挙げており、直近の岸和田も優勝。配分も空いているため調整はバッチリだろう。
予選は5個レース。準決への勝ち上がりは1、2着の10人と3着から4人。3着勝ち上がりの序列は選考順位となる。
小林莉子は今年の安定感が抜群。昨年末の12月西武園決勝で落車したが、今年に入ってからは1着ラッシュ。
1月名古屋で今年の初優勝を決めるとそこから3月伊東まで6場所連続優勝。差し脚だけじゃなく、まくりも出ていて気配はここ数年で一番いい。決勝進出へ予選では負けられない。
山原さくらはハイペースで1着を量産し、今年は4回優勝と絶好調モード。ロングスパートを多用して成績が安定している。
昨年の第1回オールガールズクラシックでは初日特選「ティアラカップ」は前受けから突っ張り先行で1着と結果を出している。久留米バンクは22年8月、23年4月と連続優勝と相性は抜群だ。
今年の充実ぶりが目立つのは尾崎睦。昨年は11月のGI・競輪祭女子王座戦で決勝進出し、復活ムードが漂ってきた。今年は2月の前橋で初優勝を決めると、同月京王閣から4場所連続完全優勝。12連勝と勢いに乗ってきた。
今年養成所に入る128期の弟子を取ったことも成績アップの要因となっている。
當銘直美は今年ここまで優勝5回。3月玉野から3場所連続優勝で久留米入りする。以前はマーク、追い込みが中心だったが、近況は先行まくりの自力で勝負できるようになってきた。
戦法のカードが増えたことで成績が安定。GIでも「決勝進出が目標」と公言しているだけに有言実行へ攻めの競走に徹する。
地元の小林優香の巻き返しも怖い。2月の高松決勝で落車し右肋骨と肩鎖関節の脱臼のケガを負ってしまったが、4月の小倉で復帰。復帰戦を完全優勝で決めて、地元GIに間に合わせた。
久留米は15年11月の初出走から7場所連続完全優勝。21連勝の負けなしバンク。東京五輪に出場したオリンピアンで、潜在能力はガールズケイリントップレベル。GI優勝で復活をアピールしたい。
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。