2025/06/12 (木) 08:00 5
そういや、現役のころ富山に行くのって、まあ〜大変だったのよ。今でこそ北陸新幹線を使って、ラクちんでしょ? でも当時はそんなの無くてね。羽田から飛行機でピュッと行くか、在来線をチマチマ乗り継いで行くかしかなかったんだわ。遠足かって話よ。で、オレは飛行機派だったんだけど、これが毎回スリル満点。レースがちょっと押すだけで「やべっ、帰りの飛行機に間に合わねえ!」って。
しかもさ、発走時間はどんどん遅らせるクセに、飛行機は一切待ってくれないわけ。場内放送が「まもなく締め切りま〜す」なんて言ってても、実際はま〜ったく締め切る気配ナシ。気がつきゃ20分、30分の遅れとかザラ。で、レース終わった頃には飛行機はもう空の上でバイバイだよ。しょうがないから電車にチェンジするんだけど、こっちも時間ギリギリ。輪行バッグ担いでホームまで全力疾走よ。レースが終わってもまだレースって感じで、もう汗はダラダラ、滝みたい。
でもね、ある日ちょっとイイ話があって。たまたま居合わせたファンのご夫婦が、オレのボストンバッグを持ってくれたのよ。「そんなの悪いですよ、いいですよ」ってポーズで断ったものの、結局は甘えてしまった。おかげでなんとか富山発の電車に飛び乗れた。あのときは助かったなぁ、と今でも感謝してます。ホントにありがとうございました!
さあ、富山の思い出を語ったところで、シリーズ展望に入っていくべ! 高松宮記念杯を直前に控え、S班不在のメンバー構成だよ。なにせ、S班がいない。そう「S班不在」ってやつ。いやー、近頃このパターンが増えてきた気がするな。
そして、毎回こう言っている。『突出した選手がいないってことは、穴党にとっちゃ夢の舞台』って。ええ、今回も例に漏れずそのパターンです(笑)。要するにね、誰が勝っても不思議じゃない。実力が拮抗してるってのは、裏を返せば展開一つで主役がコロコロ入れ替わるってこと。これがまた面白いわけよ。
さて、主力どころをざっくり見ていこうか。東の主力勢は佐藤一伸に大川剛、それから飯野祐太。一方の西は柏野智典、松本秀之介、三宅達也、岡崎智哉。名前だけ見れば「おっ」と思わせる顔ぶれではあるけど、「絶対王者」ってほどの存在がいないし、どこからでも狙えそうな気配。
特にね、大川が積極的に仕掛ければ、佐藤がズバッと抜けてくるシナリオがありそうだし、逆に松本がタイミング良く仕掛けたら、柏野や三宅がしっかり食らいついてくる形もある。そんでもって、こういう混戦になってくると、岡崎の一発がある可能性もある。…なんなら、そうなってほしい(笑)。
で、ここからが本題。こういうメンバー構成になると、必然的に頭の中が“妄想モード”に切り替わってしまう。まずは地元の村田祐樹。ここ最近ちょっと復調気配があって、「おっ?」って思っていたら、今回ちょうど地元戦。モチベーションはMAXだろうし、元々持ってるポテンシャルは高いから、流れに乗れば怖いよ。ここで結果を残せば後半戦に向けてドンと弾みがつくし、本人も気合は入っていると思う。梶原海斗も面白い存在よ。攻めの姿勢がいいし、ガンガン行けば九州勢の強い味方になり魅力的。
そして町田太我。いやもう、この選手は逃げるしかねえタイプ。格上相手でも逃げるとしぶとく粘りの強さもあるし、案外こういうとこでハマるんじゃないか?と思っている。最後に野田源一。単騎でも自在に動けるのが強み。今の状態もなかなか良さ気だし、レース自体が面白くなるのよ。まさに「何かやってくれそうな気配」がムンムン。
とまあ、いろいろ妄想してたらキリがない(笑)。でもそれが楽しいんだよね。こういう“誰が勝っても驚かない構図”ってワクワクするね。現地で見るもよし、画面の前で叫ぶもよし。高配当の匂いもプンプンしてるし、きっと熱いレースが繰り広げられるだろうよ。
妄想レースは12Rの初日特選に決めた。いつもの並びの整理から。⑨松本秀之介-⑦柏野智典-①三宅達也の西日本ライン、②佐藤一伸と③野田源一は単騎戦、⑧橋本壮史-④武田豊樹の茨城コンビ、中近は⑤岡崎智哉-⑥岡本総になり、混戦激戦モードが超濃厚に漂っている。
ここはのっけから穴狙いでいってみるべ。なんてったって徹底先行は橋本だし、武田が付けば尚更の事、逃げるとしか思えない。初手の並びは枠なりで三宅が取り、松本が前受けからで、⇐⑨⑦①・②・③・⑧④・⑤⑥の形だろう。この並びなら岡崎が押さえ、野田が切り、佐藤が続くか、その逆もあるべ。そこを橋本がノコノコ叩いて「マイペース先行」ってわけだ。久々に「競輪は番手だ」の発動で茨城コンビのワンツー④=⑧、この後は佐藤か野田になろう。そこで②③④⑧ボックスは必須条件になるべ。
もしも岡崎がスタートを決めると流れは大きく変わる。野田か佐藤が切りに行ってもそこは突っ張り橋本を待つだろう。脚を使いながら橋本が出ればトップスピードは上がらない。そうなれば松本が一気にかまし、柏野とのゴール勝負ってわけで、そこは押さえるしかねーかね!
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。