2024/04/12 (金) 12:00 15
小田原と平塚競輪場で場立ち予想屋として活躍を続ける、あきちゃんこと「大津昌広」。じっくり時間をかけた予想は、ユーザーからの信頼も厚く、多くのファンから支持されている。
今回はnetkeirinでも大活躍中の大津昌広が、競輪を始めたきっかけや勝率を上げるポイント、予想のコツを紹介する。(取材・構成:netkeirin編集部)
ーー大津さんは競輪予想屋として30年活躍されていますが、予想屋になったきっかけを教えてください。
大津昌広(以下:大津) 大学卒業後5年間のサラリーマン生活を経て、結婚したちょうど1ヶ月後に上司のやり方にどうしても納得出来ずに、後先考えず仕事を辞めてしまって…。これからどうしようと悩んでいたら、私の母方の祖父と叔父たちが競輪予想屋を営んでおり、その祖父が「まだ何もやること決まってないんだったら、 見習いでうちに来るか」と、声をかけてくれました。それで見習いになったのが競輪の世界に足を踏み入れたきっかけです。まさかそのときはその後30年間もこの商売を続けるなんて思ってもみなかったんですけどね(笑)。
ーーそれまで競輪に触れたことは?
大津 祖父や叔父たち全員が予想屋だったので、逆にそこが“神聖な場”っていうか、なんか関わっちゃいけないのかなって感じでした。ですから子供の頃から1回も競輪場行ったことなかったですし、見習いになる27歳まで競輪場へは一度も足を運んだことはなかったです。
ーー競輪が好きとか面白くて、というわけではなかったのですね?
大津 好きとか嫌い以前に全く知らなかったんです。競輪場に行くと多くの予想屋がいて、助手として親方に付くことになり、レースを見ながら競輪を覚える日々を送りました。見習いを始めた当初は競輪のレース展開も理解しておらず、お客さんの1人が「なんで、弱いのに前を取るんだよ!」って怒ってるから、“1番前の選手の方が、1番後ろの選手よりも10m以上もゴールに近いのに、何で怒っているのだろう?”と疑問に思ったんです。助手をしていくうちに前を取ったからと言っても、誘導員が下がってからレースが始まるので、スタートで前を取ったからと言って有利ではないを知り、競輪の奥深さに興味を持ち始めました。なので、初心者の方々が「競輪わからない」っていう気持ちはすごくわかりますよ。
ーーこれから競輪を始めたい人は何をすればいいでしょうか?
大津 やはりレースを観ること。自分の場合は、見習いになって毎日競輪のレース見て、最初の半年間で競輪のルールやレースの流れを覚え、さらに半年かけて選手を覚えました。レースを通じて選手の特徴やレース展開を理解すると、やっと競輪が面白くなってくると思います。
ーー競輪の予想を当てるコツはありますか?
大津 自分も30年予想屋をやっていますが、正直ないと思います。ただ、勝率を上げるという面では、数多くのレースを見ることが重要。競輪の流れや選手の特徴を理解するためには、たくさんの知識と経験を積む必要があると思います。日々レースを見ることで、競輪新聞だけではわからない選手の調子の変化も見抜くことができます。数多くのレースを見て、選手を覚え、特徴を把握することが大切ですね。
ーー競輪新聞だけではわからない選手の情報とは具体的には?
大津 例えば、落車明けでここ3場所成績が悪くて競走得点が100点の選手と、ここ3場所抜群の成績を収めている95点の選手がいます。競輪新聞とかは調子が悪くても100点の選手を本命にしますが、私は95点の選手を本命に選ぶことも。これは現場での観察や日々のレースを見ることから得られる知識に基づき、判断ができるわけです。
ーー選手の特徴を判断材料にしているのですか?
大津 先行型でも、逃げてなんぼの選手もいれば、捲りがすごく得意な選手もいます。なかには 捌いて横をバンバンやったりする自力型もいれば、そういう横が全くできない人もいます。そういうのは本当に見て覚えるしか方法がないので。
ーー予想のこだわりはありますか?
大津 自分のこだわりは選手の力量とタイプ、最近の調子(3・4日目なら、初・2日目のデキ)も考慮してレース展開を予想します。レースを何パターンか頭の中でシミュレーションし、「これだ!」と思う最適な展開を選択します。時には展開が逆にいったりして外れることもありますけど(笑)。
ーー考え抜いて「これだ!」と決定する決め手は?
大津 基本的には穴を教えたいので、何パターンかあるうちでも、こっちの方が明らかに確率が高いなというときは、固い方を取ることもありますが、同じくらいだったらやっぱり配当の良い方を取りますね。現場のお客さんは穴を当てて欲しい方が多いので、ネットのように回収率は関係なく、現場ではいかに高配当のところを当てるかが重要になります。なので、本命を当てるとかえって、常連のお客さんに怒られてしまいます(笑)。
ーー予想屋をやっていて、忘れらない予想はありますか?
大津 昔のことは忘れちゃっているんですが、今覚えているなかで、お客さんと大喜びしてバンザイしたっていうのは、2012年の京王閣のKEIRINグランプリ。今は引退した村上義弘さんが優勝して、配当が8万4800円でした。
ーーお客さんと喜びを分かち合ったんですか?
大津 そのレースはそこまでの伏線がありまして。当時強かった村上さんですが、グランプリ前にろっ骨をやってしまって。「村上はちょっとダメでしょ」と解説者含め、みんな言っていて。でもね、村上さんがコメントしたときに鬼気迫るものを感じて「いや、村上さんでいきたいな」と思ったんです。
ーーどんなレースだったのですか?
大津 東北ラインが佐藤友和選手、山崎芳仁選手、成田和也選手。関東勢が強力で、武田豊樹選手がまだ逃げでやっていて、番手がもう引退した長塚智広さん、3番手に岡田征陽選手。もう1つのラインがデビューしてメキメキ力をつけてきた深谷知広選手と、その番手が浅井康太選手。そして村上さんが単騎でした。前も見えないどしゃぶりの雨の中、直線勝負だと思っていたんですけど、先行する深谷選手の最終バック3番手から村上さんが捲りをうって、つっこんできた成田選手との写真判定でした。自分は成田選手アタマで予想を出していなかったから、お客さんと頭抱えちゃって…。でも、『決定、1着村上』と判定が出た瞬間に「うわぁ〜!」ってお客さんとバンザイしたんです。もう10数年前のことですけど(笑)。
ーー大津さんとっての予想の魅力はどんなところにありますか?
大津 やっぱり、自分の予想通りにレースが展開して当たった時が1番嬉しい瞬間です。逆に展開が外れて当たっても嬉しさは半減します。展開と予想の一致が重要で、外れても展開が当たっていれば納得できるんです。
ーー読み通りの展開が肝なのですね。
大津 そうですね。当たったレースは当然みんな注目してくれて、『ウマいね』をつけてくれるのですが、外れたレースのできれば見解をよく見てほしいです。netkeirin を始めた頃はなかったですが、最近になって外れているのに『ウマいね』がつくことがあって。しっかり見解を見てくれているんだなぁって嬉しくなりますね。
ーーもし、競輪選手になれるとしたら誰になりたいですか?
大津 自分は佐藤慎太郎選手が大好きで、代謝の激しい競輪の世界で10年以上前から現在まで、全く強さが変わらず長くトップクラスで活躍し続けることは素晴らしいと思います。そのためには計り知れない努力と苦労があると思うのですが、それを表に全く見せない姿には、感銘を受けています。見えないところで、きっとすごく頑張っているんだろうなって思うんですよね。
ーー予想で贔屓にしたりすることは?
大津 予想では贔屓はしませんよ(笑)。でも私の大好きな選手は間違いなく慎太郎です。東北の自力選手に限らず、番手が有るなら、東や西の選手に関わらず回れる選手は、なかなかいないですよね。きっと、性格や人柄が影響しているのでしょうね。
ーーでは最後にnetkeirinユーザーにメッセージをお願いします。
大津 いつも予想を見ていただき、ありがとうございます。2024年の2月は予想屋人生で1、2を争うくらいの大スランプに陥りました。当時は本当に心が折れていたのですが、予想が外れているときでもかなりのユーザーの方にご利用いただいていたことをのちに知って、本当に嬉しく感激しました。そんなお客さんのためにも、もっと頑張りたいという気持ちが湧きましたね。これまでの努力が無駄ではなかったことを実感し、当たらない時でも信じてくれるお客さんがいることに感謝しています。
今後ともよろしくお願いします。
熟考された予想は、見解も丁寧でわかりやすい。常にお客さんのことを考え、どんなレースでも手を抜かない予想は、netkeirinだけでなく現場でも多くファンに信頼され、愛されている。大スランプを乗り越えた、大津昌広はますます輝き続けるだろう。
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。