2024/03/29 (金) 11:50 14
勝負の世界に生きる競輪選手たちが、コーヒーについて語ることがあります。
3月22日のnetkeirinで、取手競輪「ウィナーズカップ(GII)」で茨城支部選手会ブースを訪れたアオケイ・宮本記者は、コーヒーを振る舞う吉田元輝(37歳・茨城=100期)の言葉を紹介しています。
「選手はコーヒーが好きな人が多い。選手たちは開催中お酒を飲むことができないし、その中で嗜好品としてコーヒーを飲んでリラックス。自分が趣味でやっていて、使っている道具を持ってきました」(3月22日、netkeirinニュース面)
1杯100円からのチャリティーコーヒーに腕を振るう、笑顔の吉田を伝えていました。
選手たちのコーヒーに向ける思いはさまざまです。ひとときの癒やし、ダイエット、人間関係づくり、トレーニングのメリハリのため...。過去にnetkeirinで取り上げた、競輪選手とコーヒーをめぐる記事を振り返ってみましょう。
ブラックコーヒーで10キロ以上の減量に成功した選手がいます。2023年11月8日に開幕した松戸競輪でチャレンジ準決勝に進出した赤井学(50歳・千葉=77期)は、痩せた理由について記者から質問を受けました。そこで明かしたのが独自のメソッド「赤井式ダイエット方法」です。
「別に痩せようと思って始めたわけじゃないけど、MAX92キロあったのが78キロまで落ちた。今は78〜81キロくらいをキープしていますよ」(2023年11月9日、netkeirinニュース面)
赤井のダイエット方法は食前と食後にブラックコーヒーを飲み、筋力や持久力アップのトレーニングを行うことです。「下半身を鍛えると代謝が上がる」と述べ、食事はトレーニングを始める1時間前くらいが最適であると説明。「ウエイトをしてからガッツリ食べること」は避けるべきで、「プロテインを飲むくらいならいい」とも語りました。
競輪界で“日本一のマーク屋”として知られる佐藤慎太郎(47歳・福島=78期)。かつて、連載コラムでトレーニングメニューを公開し、そのなかでもコーヒーが登場したことがあります。
「寝ている間に摂れなかった栄養もサプリですぐに補うようにして、1日を全力で過ごすための準備を怠らない。オレの場合、朝飯は少なめにしていて、糖質とタンパク質、ビタミンをバランス良く摂るようにしている」(2021年7月23日、netkeirinコラム面)
朝食のメニューはベーグル1個、フルーツ、サプリ、そして1杯のコーヒー。控えめな朝食で糖質とタンパク質、ビタミンをバランスよく摂取することを心がけます。午前中はウエートトレーニングを実施し、昼食後には昼寝をして休息。
目覚めのタイミングで、再びコーヒーが登場します。1日のスケジュールでペースを生み出す時間管理術の一環としてコーヒーを活用しているように見えます。
特別競輪優勝歴10回のトップスター脇本雄太(35歳・福井=94期)にとって、コーヒーは心身の緊張をときほぐす重要なツールです。
選手はレース開催期間中、外部との接触は絶たれており、リラックスする手段が限られています。この環境の中で、コーヒーはシリーズ中にリズムを保つ上で不可欠なツールと連載コラムで述べています。
「外に出れず、内にいるしかない。リラックス方法も限られる中で、リラクゼイションとして必要です」(2022年11月19日、netkeirinコラム面)
コーヒーを通じて“人とのつながり”を築くことができ、豊かな時間を過ごすことにも役立つとも語ります。脇本は他の選手たちにコーヒーを振る舞いながら、一人ひとりの好みや性格を観察する面白さも見だしていました。どうも選手同士の“絆”にも関係してきそうなエピソードです。
「飲むことにしっかり興味を持っているか、そうでないのか。ただカフェインを摂れればいい、という人もいる。飲んでいる反応とか、面白んですよ」(同上)
レース開催期間中、選手は宿舎にスマホなどの通信機器を持ち込むことができず、外部との接触ができない環境にいます。携帯電話、スマホ、タブレット、PCなどは、全て競輪場に入場する際に預けなければなりません。最終日にレースが終わり競輪場を出るときに返却されます。
世の中から隔離された宿舎生活を、外部からはうかがい知れません。かつて、ガールズケイリンの佐々木恵理(34歳・愛知=110期)が明かしたところによれば、本を読んだりDVDを見たり、仲の良い選手同士が会話を楽しんだりして過ごしているとのこと。選手が交わす会話の内容は競輪や自転車に関するものだけでなく、趣味に関するものなどだそうです。
「4日間外部から遮断され同じ空間で生活するのは、日常の時間よりも濃いものとなっています」(2021年12月29日、netkeirinコラム面)
弟子が師匠に、後輩選手が先輩に淹(い)れるときも、どうせなら美味しいコーヒーで楽しんでもらいたいと思うことでしょう。宿舎という独特の空間で、コーヒーに徐々にハマっていく選手たちの光景が見えてきそうです。(netkeirin編集部・木村邦彦)
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