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前田睦生の感情移入

【KEIRINグランプリ2023】競輪推理の基礎「逃げるのは誰? 逃げるべきなのは!?」

2023/12/27 (水) 12:00 18

立川でまたドラマが生まれる

最強にして最弱の戦法“逃げ”

 競輪のレースを推理する時、「どうなっても関係ない。強いこの選手が勝つ」であればよいのだが、抜きん出て強い選手がいた場合、他の選手はある意味同じ方向性を持って強い選手を警戒する。その強い選手が逃げて(先行して、ともいう)しまえば、押し切って1着という力関係の時、簡単のようで難しくなってしまう。

 警戒されても、強い選手が逃げて勝ってしまえば誰も文句は言えない。
 最たる例が昨年の「KEIRINグランプリ2022」の脇本雄太(34歳・福井=94期)になる。この時は前団が混戦になるという面はあったが、ただひたすら脇本の勝利だった。今年の立川大会も構成は近い。

 そのため、脇本を先行させると厳しい。しかも番手は古性優作(32歳・大阪=100期)なので、より他のラインの選手にはチャンスがとても小さくなる。今年、ブレずに先行の道に挑んできた新山響平(30歳・青森=100期)が逃げる可能性が高く、単騎の3人、何でもできる清水裕友(29歳・山口=105期)が位置を取って、脇本を警戒しての走りをもくろむ。

 お品書きは分かりやすいが、注文通りなのか…?

新山響平が目指すもの

新山響平が考えていることは

 「逃げ」について書いているので今回の主役は新山。『脇本を逃がして捲ってみよう』という発想はどうか。新山はヨコをやらないわけではないが、脇本が先行態勢に入った時にいい位置を取れる可能性は低い。他の選手の方が意欲的に位置を狙ってくる。リスクになる。

 いや、そもそも脇本を逃がして捲ろうとは頭には浮かばないか。清水が行ってくれての中団なら…は少しは浮かぶだろうが、やはり単騎勢が簡単にはさせてくれそうにない。

 新山が面倒くさいことが嫌いな性格かどうかまでは分からないが、目指すところにまっすぐ進もうとするのは、これまでの戦いぶりを見て感じるものだ。“逃げて全員不発にすればいいんでしょ”が新山の心だと思う。師匠・坂本勉さん(引退=57期)が逃げ切った1990年がある。新山が一番気にしているのは「逃げ切りゴールなら勉さんみたいに右手をサッと上げないとな…」という点だろう。

で、逃げ切るの?

立川売店でくつろぐ深谷知広(2010年)

 新山が逃げる推理から入って、『次は誰かが捲れるのか』になる。新山の番手は佐藤慎太郎(47歳・福島=78期)。ヨコはそう簡単には通れない。“白河の関”。場所が立川、ということで先行が苦しむバンクなのはある。天気予想は好天のようでも、直線は長い。

 3番手以降で、脇本が8番手の場合、7番手までの選手は、脇本が来る前にと、仕掛けたい気持ちがある。前団が密集した上を、脇本…の可能性がある。しかし、脇本はどうしても警戒され続ける。誰かに外に張られる危険性もあり、

 えっ、じゃあ、新山の逃げ切り? 慎太郎の差し? もう一人、伸びて来る?

 競輪でよく言われる言葉が「100個パターン考えると101個目が来る。1万のパターンを1万1個目が来る」というもの。今回のグランプリは筋立て自体は見えやすいので、ファンのみなさまにはできるだけ多くのパターンを考え、悩み抜いてほしいと思う。

 当方の推理は4545個目のパターンで、新山が逃げて脇本が後方、清水、眞杉匠(24歳・栃木=113期)が踏んでいって、山口拳矢(27歳・岐阜=117期)はコースを狙う。脇本は松浦悠士(33歳・広島=98期)の動きが邪魔になり…、5番車深谷知広(33歳・静岡=96期)が最後大外を伸び切る、というものになる。右手を、上げる。りょ、両手かも…(これは4546個目)。

ヤンググランプリで「逃げるべきなのは?」

犬伏湧也が見つめる先がある

 当コラムの公開時点では28日の「ヤンググランプリ2023」の並びは分かっていない。「ここも誰が逃げるの?」になるのだが、この点では「逃げるべきなのは?」だけを書きたい。

 犬伏湧也(28歳・徳島=119期)ーー。

 今年、タイトルが目の前に迫りつつ、つかめなかった。昨年のヤンググランプリは後方で仕掛けを欠いた。来年へ、を示すために。犬伏が逃げて、結果がどうなるのかの戦いを見たい。

ガールズグランプリは「逃げ切り、ある?」

児玉碧衣はやってくれる

 圧倒的な力を持つ佐藤水菜(25歳・神奈川=114期)が逃げれば、そのまま押し切れる可能性が高い。なので、グランプリと同じように「サトミナを後方へ」が発生する。

 でもその時逃げているのが私だったら困る…。新山は慎太郎の援護を背に逃げ切れる可能性を含むが、ガールズは真後ろも常に敵。しかし、もたもたしていたら、サトミナに行かれてしまう…。

 非常に悩ましい構成なのだが、今年先行で力をつけてきた坂口楓華(26歳・愛知=112期)や、つかみたい“何か”をつかめなかった尾方真生(24歳・福岡=118期)は、逃げて勝負に出ていい。最後の切符を手にした梅川風子(32歳・東京=112期)も大きな舞台では何度も逃げてきた。今回は経験を武器に“勝てる先行”を見せるかもしれない。

 初出場の久米詩(24歳・静岡=116期)と吉川美穂(30歳・和歌山=120期)は自在性が売りだが、挑戦者として…。あまりにも悩ましい限りだが、みんなの考え事が目の前にたまっているのが見えると、児玉碧衣(28歳・福岡=108期)がスコーンと行くか。

 ガールズケイリンって何?

 アオイの走りはそれを問い続けてきた。そして、答え続けてきた。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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