2023/12/22 (金) 12:00 32
netkeirinをご覧の皆さんこんにちは。金子貴志です。
早いもので今年も残すところわずかになりました。寒さも厳しくなりましたが、身体には十分に気をつけてください。
今回は私の弟子のことと、久留米競輪での出来事、そして今年最後に走るレースへの意気込みを書いていきます。
日本競輪選手養成所第127回生の1次試験合格発表が、11月17日にありました。私の弟子は昨年に引き続いて受験し、1次試験を突破しました。そして2次試験を12月5、6日の2日間受けてきました。
昨年は2次試験で落ちてしまい、悔し涙を流していました。それが昨日のことのように思い出されます。この1年間、しっかり計画を立てて、試験日から逆算してハードなトレーニングを行い、それに耐え抜いてくれました。1年前の悔しさがあったからこそ、頑張ってこられたのだと思います。
人はどうしても、時が過ぎるとだんだん感情が薄れてくるものです。ですがこの1年、弟子には何度も「あの日の悔しさを忘れるなよ」と言い続けてきました。自分より後から練習を始めたアマチュア選手が合格して、自分は合格できなかった… そばで見ていても相当な悔しさが伝わってきました。
そこから1年間、反骨心をもって一生懸命トレーニングを積みました。私から見ても「人間は1年間でこんなにこんなに変わるのか」と思うほど成長し、今は精悍な顔つきになっています。
実際、昨年の1次試験では合格ギリギリのタイムでしたが、今年は余裕をもって走れたようです。2次試験も本人から感触が良かったと聞き、力を出し切れたのだなとホッとしました。何とか合格してもらいたいです。デビューして、一緒に連係できるようになることが今の私のモチベーションにもなっています。発表は来年1月18日です。
もちろん合格してくれればいいですが、万が一叶わなかったとしてもこの1年間、続けてきたことは今後の人生に必ず役立ちます。努力したことは絶対に無駄になりません。前回、トークショーのことを書きましたが、本当に無駄な努力なんてないのです。
何事も積み重ねたものは、カタチを変えてもいずれ我が身を助けてくれます。弟子にはこの“悔しさ”を原動力とした1年を、ずっと鮮明に覚えていてほしいです。人間としての基礎になっていく、価値ある時間を過ごしたと確信しています。
先日、久留米に参加して帰り支度をしていた時に、徳島の川口雄太君が話しかけてくれました。雄太君のお父さんが57期の川口秀人さんと聞き、驚きました。
私が優勝した10年前の立川グランプリの時、アマチュアだった雄太君と秀人さんがレースを見てくれて、秀人さんが凄く応援していたと教えてくれて感激しました。秀人さんとは僕が新人の頃レースで何度か連係したことがあり、相性が良かったことを覚えています。それに秀人さんからは以前、このコラムを読んでいると聞き、今まで以上にコラムを書く時には力が入るようになりました。
なんと雄太君は、立川グランプリでの私のガッツポーズの写真を携帯の待ち受け画面にしてくれていたそうなのです。「アマチュア時代、待ち受けにして頑張ってました」と言ってくれました。当時の私を目標にしてくれていたことが嬉しく、それを伝えてくれたことにも感謝の気持ちがこみ上げました。最終日は一緒のレースだったので、そういう選手と一緒に走れるということも感慨深いです。
同じレースだと別のラインになってしまいますが全力で戦い、別々のレースの時は私も応援してもらった分、雄太君を全力で応援したいと思います。お父さんの秀人さんは57歳の今も現役で頑張られていて、私もそういう選手が目標です。二人との縁を感じた出来事でした。
さて、今年最後のレースは立川競輪のグランプリシリーズです。グランプリを制覇している思い入れのある競輪場ですが、実は久しぶりです。お客さんもたくさん入るでしょうね。
グランプリで勝つという夢を叶えた10年後の今、私は“S級最弱”になってしまいました。点数を持っていないので6番車ばかり、今年の後半は思うようなレースが全くできていません。それでもオッズを見ると私から買ってくれている人がいるとわかり、点数がないなかでも「何とかしよう」と気持ちが奮い立ちます。
人生、いいときばかりではありません。こういうときにも応援してくださる方がいて本当によかったと思っています。そんな想いも乗せて、立川を走ります。来年につながるきっかけを掴めるように頑張るので、応援していただけると嬉しいです。
立川競輪場には、歴代の立川グランプリの優勝パネルが飾られています。前検日には10年前に優勝した時のパネルをゆっくり眺めて、気持ちを新たにしたいと思います。今回のグランプリには深谷も出場するので、ぜひ優勝してほしいです。勝ったあかつきには、次に立川に参加したとき、深谷の優勝パネルをじっくり見ようと思います。
そして最後に… 読者の皆さん、今年も1年間コラムを読んでいただきありがとうございました。良いお年をお迎えください。
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Kaneko Takashi
愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。
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