2023/11/12 (日) 15:00 6
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は四日市競輪場で開催されている泗水杯争奪戦の決勝レース展望です。
【オールスター競輪】で落車してから、約3カ月ぶりのレースとなった脇本選手が、復帰戦として選んだのが【泗水杯争奪戦】となりました。
このコラムを読んでいられる皆さんも、脇本選手の調子が、どこまで戻っているのかが気になっているかと思います。
準決勝までの三日間を見た印象としては、状態云々と言うよりも、スピード能力の絶対値が、他の選手たちとは全く違っていました。捲っていった二次予選では上がりが11秒0。そして、4車となった坂井選手に先捲りをされた準決勝の12レースでも、上がりで11秒3を出しています。
まだまだ怪我の痛みも残っているはずですし、3日間を戦ってきた疲れもあるかと思いますが、スピードだけなら怪我をする前までに戻っていると言えそうです。
決勝ではその脇本選手の後ろが近走だけでなく、今大会も調子の良さが目立つ南選手で、近畿ラインは2車。地元の浅井選手の後ろは川口選手で、中部ラインも2車となります。準決勝で北日本の3人と連係した坂井選手は、この決勝でも和田選手が番手を主張したことで、東日本ラインも2車となりました、そして、準決勝11レースではライン3車で上位独占。3連単で17万越えの払い戻しを演出した四国ラインは、その準決勝と同じように、小川選手-橋本選手-栗田選手での並びとなりました。
車番的に前受けをするのは脇本選手だとは思いますが、準決勝と同じように小川選手がスタートを取りに行くことも考えられます。
それでも、脇本選手は一旦後ろに引いてからの発進は変わらないはずです。小川選手が前受けをしたのなら、脇本選手はその後ろに入れます。
後方にいる坂井選手や浅井選手が先行体勢に入った場合には、主導権を握ったラインとの距離が短くなるだけに、捲りが更に出しやすくなります。もし、外から蓋をされたとしても、前受けをした時と同様に、一旦後ろに下げてしまえばいいだけですから、スタートの位置取りはあまり気にしなくても良さそうです。
いずれにしても脇本選手が一気に捲っていった時には、淀みの無いスピードで流れていく単調なレースとなりそうなだけに、その時に南選手の口が開いてしまうことも考えられます。
1着の脇本選手は堅いと思いますが、2着に南選手が付いて行けた時、そして、南選手が離れてしまった時の2着候補を入れた2パターンの3車単の車券を狙ってみたいと思います。
地元の浅井選手は二次予選で脇本選手の番手を回りましたが、それでも付いていくことはできませんでした。それも本人は分かっているはずですので、勝つためには捲ってくる脇本選手よりも、更に早い仕掛けを考えているはずです。
直線の長い四日市バンクも脇本選手の走りに合っています。ナイター開催かつ、開催2日目は雨も降るなど、重いバンクとなるだけの条件は揃っていましたが、それでも脇本選手は、他の選手の苦労など関係ないほどの「地脚」を持っています。
ここでの優勝をステップとして、更にいい状態で【競輪祭】へと臨んでいけそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。