2023/11/08 (水) 12:00 41
四日市競輪場で11月9〜12日の日程で「開設72周年記念 泗水杯争奪戦(GIII)」がナイター開催される。脇本雄太(34歳・福井=94期)が8月西武園競輪「オールスター競輪(GI)」での落車、大ケガからの復帰戦に挑む。KEIRINグランプリ(立川)の出場がかかる賞金は前半の走りなら安泰といえたが…この大ケガで争いの渦中にいることとなった。
脇本自身のコラムでは「賞金争いがあるから、で無理に復帰する考えはない」と記されている。『無理することでその後に影響が出ることのリスクは負えない』という考えだ。体の傷、心理面、とにかく多種多様な経験をしてきているので、慎重というよりは、適切に判断することが大事と思っているわけだ。
その上で、だが、少し早め?かとは感じる。ケガはあまりにも重症。診断は全治6ヶ月。競輪選手は往々にしてその診断より早く復帰するほど“強い”が、すべてに当てはまるわけではない。
あらゆる手段を尽くしたのは間違いない。
肩甲骨に筋肉が挟まって、という症状も出たという。そのことについて同じケガを負った松浦悠士(32歳・広島=98期)に少し前に聞いてみたら、「そんな感じは自分もありますね。寝た時にそこがこわばって、起きると寝違えたみたいな感じになる」とのことだった。肩甲骨が折れた影響は日常的にあるという。
しかし、「でもね、先生が鎖骨の手術をしたら練習していいよ、って言うんです。肩甲骨は折れているけど、どうしようもないんで」と松浦は続け、笑っていた。競輪選手にケガや苦しい事の取材をすることは多いが、得てしてみな笑顔で笑いながら、が多い。こちら一般人からすれば、信じられない、意味不明レベルでも…。その時、松浦の笑顔を見て「あっ、そうなんですね〜」と平常の顔で応じたが、実は私は完全にひいていた。「いや、ヤバイやろ!」(心の声)
脇本も松浦も競輪のルールや、戦法、心理面に詳しく、またケガや治し方、向き合い方についても強い。競輪選手として、強い。ワッキーは同じようなケガをした松浦、ワッキーの方がひどいケガではあったが、見ていて「走りてえな、俺も」と思ったのではないか。しっかり治すことの大事さと、戦いたいという心のうずきの結晶がこの四日市の場で見られると期待したい。
坂口晃輔(35歳・三重=95期)の走りが熱い。小柄で、見た目に優し過ぎる雰囲気なのだが、マーク屋としての走りは鬼レベル。ラインを守り、自力選手をかばい、一つひとつの走りが献身的だ。
「中部は今、やっぱり層が薄いんで。その中で1人でも多く勝ち上がりにつながるように、と思っています」
ラインでの戦いにド集中の日々。タテ脚もキレる。「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)」では同期の河端朋之(40歳・岡山=95期)が決勝に進出した。95期の中で一番にGI決勝に勝ち上がったのが坂口で、2017年8月のこと。ただし、記念の優勝はない。
ワッキーが筆頭にいる94期、そして深谷知広(34歳・静岡=96期)が名を連ねる96期に挟まれた95期。地味な印象があるものの、実力者も揃っている。坂口が輝くことで、中堅からベテランになっていく仲間たちに、これから…の気持ちを伝えてほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。