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前田睦生の感情移入

【競輪の楽しみ方】YouTube、年齢層…変わる競輪 しかしファンが求める変わらない競輪

2023/11/04 (土) 12:00 48

競輪とファン

競輪の楽しみ方

 先日、京王閣のナイター記念(ゴールドカップレース)の取材に行った際、最終日に時間があったので場内に出た。2000年夏に競輪に出合い、2006年夏から記者として仕事をすることになったのだが、できるだけ本場やサテライトに行って、現場の雰囲気に触れようとしてきた。

 いつか書いたと思うが、高齢者が多くなった競輪場に血圧を測る部屋を設置し、ホスピタリティ施設としての競輪場に…と思っていたのに、若い人たちが多くなってきたので、もうそんな時代じゃない…と。反応が遅れる状態の中で、京王閣でよりそれを、また現在に感じるものがあった。

 若い人たちが、競輪選手に魅力を感じ、競輪の面白さにハマり、金網に張り付いて楽しんでいる。もちろんそこにはこれまでを支えてきた高齢の方々や、中堅世代。ナイターなので仕事帰りの人たちも多くいた。これからどうなる…が、追いつかない。

みんなのYouTube

競輪場は変わってきた

 そして、本場に行けない時でもYouTube番組が強い力を発揮するようになった。かつてはニコニコ生放送のコメント欄のにぎわいがすごかったものの、YouTubeが取って代わり、各競輪場の番組が特色を打ち出し始めた。

 さらには一般のファンが競輪の番組を作り、楽しみ方を増やし、ネットワークを広げ、とすさまじい勢いだ。既存のメディアの中にいる私は、追いつかない。

 “競輪村”という言葉がある。

 競輪に関する仕事に就いていると、当然、毎日、常に競輪に触れる。そこで外からの目を失う危険性には気を付けてきた。一番は、ファンは毎日競輪場に来れるわけではなく、例えば1週間に1日、ともすれば1ヶ月に1日。ようやく休みが取れて、「よし、今日は競輪場に!」と楽しみに足を運ぶ。その時間を少しでも有意義にできれば、というのが私たちの仕事。しかし、村の中にとどまっていると忘れがちになる。

ファンが知りたいこと

皿屋豊がもだえていた

 記者の仕事は、選手に直接取材をすることがすべて。私が記者になったばかりの時に「ファンの代わりに聞くんだよ。ファンが知りたいことを聞いて、書くんだよ」と教わった。

 京王閣記念ではいくつかのレースに、ファンは疑問を感じたと思う。後ろの選手と決まりづらい走りになってしまい、当の本人が最も悔しいわけだが、その時何があったのか。どう伝えるか、に今さらのように直面した。

 準決12Rが終わった後には、皿屋豊(40歳・三重=111期)が坂井洋(29歳・栃木=115期)について「力勝負をしてほしかった。苦言になるかもしれないけど、言わざるを得ないです」と肩を震わせていた。皿屋は人のレースを非難するタイプではないので、相当な思いだったと感じた。

 この時はシンプルに皿屋のコメントを載せることで、ファンに伝えられればと考えたが、もしかしたら今の時代はもっと強く、誇張的なものが求められたのかもしれない。しかし、追いつかない。坂井とて、悔しさにまみれている…(落車もしてしまっていた)。

競輪メディアはどこへ行く

「自分の背中を見てみなよ」

 競輪についてはスポーツ新聞が権威的な役割を果たしてきた。全国の専門紙が予想に関しては突出していて、詳しく、なぜこの目が狙いになるのかを論じてきた。

 ネットの発達、SNS、民間サイトや一般のファンの活動により、その構図は崩れている。スポーツ新聞の記者という立場なので、今の位置で何をするべきか、をずっと考えているが、追いつかない。追いつかない時間が確実に続いていて、もう少しで取り返しがつかなくなる気がしている。

 選手の姿を伝える、これだけは変わらないと思っている。大きく世の中が変わっている中で、ただそこにしがみついている。若い人たちの躍動的な姿や活動を目の当たりにして、「アンタ、背中が煤けてるぜ」と言われている気がしてならない。アウフヘーベン、アウフヘーベン、アウフ、アウフ、アウ、アウ、アウ…。

 安西先生、オレ、アウフヘーベンしたいです。

「アウフヘーベンってヘーゲルだっけ」


X(旧Twitter)でも競輪のこぼれ話をツイート中
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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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