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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の超回復】共同通信社杯という名の“秋の大収穫祭”を終えて

2023/09/26 (火) 18:00 43

佐藤慎太郎の秋がはじまった(撮影:北山宏一)

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、青森の帰り道にさらなるパワーを獲得すべく黒ニンニクを仕入れた佐藤慎太郎です。これを食って毎日最大出力で練習に励み、今年残りのレースに向けて進化していく。今回のコラムは出場したレースの振り返りをメインに書く。優勝こそできなかったが、確かな収穫高があったからね。ここに記録していこうと思う。

“積み重ね”は決して裏切らない

 まずは京都・黄檗山の違反訓練明け中二日で追加参戦した平安賞について。走り慣れている沖縄のバンクで体の状態を確かめてから乗り込みたかったので、『京都⇒沖縄⇒京都』のスケジュールを敢行。練習でのタイム計測は上々だったが、どうも感覚が鈍い気がした。寺で修行していたわけで練習不足は当然。この仕上がりでどこまで行けるのか? と期待と不安が入り混じる前検日となった。

平安賞前検日「脚は仕上がっていないが仏パワーを頼りにどうにかする」とコメント(撮影:北山宏一)

 いざシリーズを走ってみて、全日程で好調とは言えない仕上がりだった。だが「その割に走れる」って感覚を得た。準優勝という結果には心残りがあるものの、冷静に考えれば“上出来”と言える。この開催での収穫は「不安は気のせい」ってこと。どうしても練習がベースにあるオレは練習が不足すれば不安になる。でも積み重ねは決して裏切らないということが再認識できた。

 何年も毎日毎日、真剣に一日一日に注ぎ込んできた。その積み重ねを思えば「一週間練習しないぐらいで突然に脚力が削がれるなんてことはない」って話。自分に向ける「大丈夫か?」って言葉は錯覚であり、積み重ねてきた日々こそ現実。『積み重ねこそ強い』と自信に繋げられた開催だったな。この感覚は今後に良い影響をもたらすと思う。もちろん、仏パワーの後押しも受け続けていく所存だけどな!

向日町記念決勝ワンツー、記念初制覇となった北井佑季を讃えた(撮影:北山宏一)

“ライン”を別の角度から考える機会

 続いて共同通信社杯について。自動番組だからある程度のことは覚悟して入っている。『目標選手の不在番組』もあるだろうし、単騎になって相手ラインの切れ目を縫っていくような走りも必要になるだろう、と心の準備もしていた。ただ、『目標不在、しかもオレがラインの先頭』はサプライズ成分が多かったぜ。佐藤慎太郎に和田圭がマーク、五日市誠が3番手を固めた。自分自身で番手に攻め込んでいける選手たちが自分の後ろに並ぶ構成ってわけ。

 そうなると作戦を組み立てる上で“後ろも引き込みたい”って心情は当然のように湧く。「慎太郎さんが前々に攻めるならオレらは後ろにいる」ってニュアンスを受け取るわけでさ。タイガースファンのオレだが、リーグ優勝を決めた前検日の夜はさすがに試合見る余裕もなかったな。シミュレーションで手一杯になった。おかげで8時間しか寝られなかった。

サプライズ番組について冗談を交えながら会見でコメントを発表(写真提供:チャリ・ロト)

 ただ、レース前には方針も定まっていた。イチかバチかで捲りを打とう、みたいな発想はせず「どうなるかわからないことはしない」ということ。何が何でも着に絡み、勝ち上がりを逃さないということ。『S級S班の佐藤慎太郎に求められているもの』をよく考えて。これをラインの仲間にも伝えて臨んだ。プレッシャーや葛藤も生じる番組だったが、ラインを普段とは違う角度で見ることができた。自動番組ならではのプラスの経験だ。

“ガッカリ”で終わるはずもなく

 初日は番組がサプライズなら二次予選は古性優作の動きに驚いた。BMXで叩き上げた古性はセオリーにない車のコントロールができる選手。だが今回はその技術に加えてタイミングを見極めるための判断力も冴えていたと思う。反応しきれなかった自分には大いにガッカリした。

二次予選終了後の記者会見では悔しさの表情を滲ませた(写真提供:チャリ・ロト)

 レース後に映像を確認し、反省点とともに今後の対策アイディアをあぶり出した。この歳になり上位戦線で走りたいと欲している以上は「驚いた」や「ガッカリ」で終わるはずもない。実戦で間近に動きを見て体感し、自分の中にインプットできるものがあった。これはガッカリの先にある大収穫だ。次に似たような攻められ方をしても、その時は相手の動きに反応できるように対策をぶつけていきたい。

 そして勝ち上がりを懸けた準決勝。まさかここでも驚きが待っているとは思わなかった。レース中、完全に北井とのワンツーで決勝へ進めると思っていた。4コーナーを回る時にもその考えは揺るがなかったし、「嘉永泰斗は仕上がっていたし来るかもな」くらいのことは頭によぎったが、確定板は間違いなしと疑わなかった。

北井佑季が主導権を握り東日本でゴール勝負の様相(写真提供:チャリ・ロト)

 レース後にVTRを確認した。嘉永の最後方からの捲りはもちろんすごかった。でも直線で嘉永にうまくスイッチした南修二の動きも抜群。北井もオレもベストを尽くしたにも関わらず、勝ち上がりを逃した。力を出し切った中で負けたわけだから、相手の方が強かったと受け入れるほかない。もう一段階レベルアップしなければ結果が出ないことを確認したレースとなった。

準決勝レース後の1枚、信じられないといった心情を背中が物語っている(撮影:北山宏一)

これから改めて自転車を追求したい

 そして迎えたシリーズ最終日。決勝には進めなかったが大きな収穫を感じていたし、地元の特別競輪を白星締めで終わろうと意気込んだが2着だった。連係した眞杉がいいレースをしてくれて、オレも自分の中では良い感覚で“チョイ差し”を繰り出す流れで走れていた。振り返っても今できる最善は尽くした走りだったように思う。

 眞杉匠と山口拳矢。若い世代かつグランプリへの切符を手にしている二人と走れたことはそれだけで収穫だ。オレもグランプリ出場を狙うひとりだし、大一番で彼らと戦うつもりでやっているわけだからね。最善を尽くして1着を獲れなかった意味を持ち帰っている。

 シリーズを通じて「もう一段階上に行かねば」の思いが強い。その“もう一段階”は行けるところにあると思う。今はフレームの寸法を調整することで解消できるものがある気がしている。山積みの課題を見つけている現状だが、セッティング面に活路がある。

オールスター競輪でもフレーム寸法調整の必要性をコメントしていた(撮影:北山宏一)

 脚力にも課題を感じている昨今、そのための練習はやってきたし、継続してやっている。その練習をベースにする方針は変えず、しっかりこなしていく。その上でフレームの寸法を見直し、セッティング面に求めたい“さらなるレベル”がある。機材への意識変化とともに“もう一段階”の上積みを狙っていくよ。

 グランプリどうのこうのって言及する権利はまだ有していないが、今年も乗るぞ! という目標めがけて試行錯誤の毎日を積み重ねようと思う。

今年も残り3か月! 悔いのない日々を!

 しかし、地元の共同通信社杯は大収穫だったせいか、本当に疲れた。サプライズ収穫が多過ぎだろ(笑)。まあ、黒ニンニクでこんな疲れ一瞬でブチ飛ばし、超回復する気でいるけどね。とはいえ、去年の今頃を思えば、落車で記憶を飛ばして入院してみたり、復帰したと思えば「またかよ…」って病院の天井を見ていたり。それに比べれば今年は順調に走れている。これは本当にありがたいこと。

 とにもかくにも「トレーニングを欠かさない」というオレの生命線がしっかりと確保できている。今年もあと3か月、気を引き締めてストイックに鍛えていくぜ。やるしかねえんだからよ!

 筆を置こうと思ったが阪神タイガースな。リーグ優勝は嬉しいが、これからのクライマックスシリーズを何としても勝ち切って欲しい気持ちだ。リーグ優勝をしたチームが日本一を懸けて争うのが見てえわけよ! 頑張れ阪神タイガース! ガハハ!

タイガース優勝祈願(撮影:北山宏一)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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