2023/06/23 (金) 12:00 37
久留米競輪場で6月24〜27日に開催される「開設74周年記念 第29回中野カップレース(GIII)」に脇本雄太(34歳・福井=94期)と新山響平(29歳・青森=107期)が走る。S班は新田祐大(38歳・福島=90期)と3人だ。
新田は「高松宮記念杯競輪(GI)」では失格という結果に終わったものの、その走りは圧倒的だった。うっ憤を晴らすべく、活躍を期しているだろう。とはいえまずは、脇本と新山の争いが先になる。初日特選でさすがに新田ー新山の並びにはならないだろう。
高松宮記念杯の決勝で、新山は「確率は少ないと思った」という脇本の突っ張り先行の前に散った。攻略できそうでできない脇本の壁を、新山はどう打ち破ろうとするのか。最近の走りを見れば、“先行でワッキーより強ければいい”を目指しているように見える。その純粋な戦いを今回も見たい。
新山の歩みは脇本がかつて歩んだ道だ。裏技でクリアしてもつまらないから、完全なクリアを目指して脇本は突き進んだ。肉体のポテンシャルと、頭脳の回転力、そして病的な執着心がワッキーを作り上げた。
今もってワッキーは子どもだと思う。ただし、彼が背負っている責任は一般の人々には想像もしえないもので、そこと戦っているのは大人を超えている。子どもと大人の分かれ目は“責任”だ。
責任から目を背けることもしないあたりが、ともすれば子どもなのかもしれないのだが、躍起になって競輪に打ち込んでいる。以前も書いたが、この脇本雄太の戦いぶり、走りを目の当たりにできることに感謝しないといけないのが、今競輪を見ることができている我々の立っている場所だ。
東口善朋(43歳・和歌山=85期)の高松宮記念杯の動きはすさまじかった。長く近畿の名脇役を務めている。菅原文太、千葉真一、松方弘樹がいる中で田中邦衛より頑張っていると言っていい(この表現はちょっと自信ない)。
おもむろにTwitterを始め、「コツコツが勝つコツ」というフレーズで一世を風靡している。何の変哲もない真摯なフレーズなのだが、東口の天然性からもグッとくるものがある。
その花が咲くには、脇本の番手で優勝を得てこそ、だと思う。夢はGIの舞台で、だが、由緒ある中野カップの決勝でそのシーンが見られたら…。悔し涙は何度も見てきたが、違う涙があるかもしれない。表彰式で東口が「コツコツが〜」と振ったら「勝つコツ!」とみんなでシャウトしてほしい。
最終日(27日)の9Rで行われるレインボーカップチャレンジファイナルは121期9人の戦いになる。全員が7月からのA級2班昇格を決めており、1〜3着に与えられる特別昇班の権利は緊迫感を持たない。
先だって若手記者が勇気を持って「ガールズケイリンのミッドナイトの車番の入れ方は変えた方がいい」と直言していた。“競技性”という観点から指摘した鋭いものだった。
私ももう歳を取ってしまい“老害”かつ“面倒くさいハゲ”と扱われることも増えた。が、こんな若手記者の頑張りを嫉妬し、妬み、嫉み、またその若さを羨みつつ「でもアタシ、負けへん!」「ハゲ、負けへんよ!」と子どものように対抗する気持ちがある。レインボーカップは制度を変えた方がいい。
ワッキーが戦っている姿をずっと見てきた人間として、背筋を伸ばしたい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。