2023/06/12 (月) 18:00 92
4月に右肩甲骨を骨折した平原康多選手は、懸命なリハビリとトレーニングの甲斐あって、GI高松宮記念杯(宮記念杯)の出場にこぎつけました。常人ではありえない回復力と精神力です。今回は復活までの道のりについて詳しくお聞きしました。復帰戦が楽しみです!
ーー誕生日おめでとうございます(取材は誕生日前日の10日に行われた)。netkeirinの担当編集から誕生日の過ごし方について知りたいという要望がありました。
ありがとうございます。今年は、誕生日当日が宮記念杯の前泊なので、1日早く家で家族にお祝いしてもらいます。
ーーいつも自宅でお祝いするのですか?
いつもは比較的、外食が多いのかな。家に帰るとケーキがあるって感じで。
ーー今日もケーキが用意してあるんですね?
自分が用意する側じゃないから分かりませんけど、用意してなかったら寂しいですね、ははは。
ーープレゼントは何をもらうんですか?
僕は自分で好きな物を買わせてもらってるんで、特に何か買ってもらうとかはないんです。ただ、子供たちと奥さんが合同で手紙をくれたりしますね。
ーーめちゃくちゃ温かいじゃないですか。
今のところは大事にしてもらってますね。
ーーでも、逆に奥様の誕生日に手紙ってわけにはいきませんよね?
それはもちろんプレゼントを買ってあげますよ、ははは。
ーーそういえば中川誠一郎選手も6月生まれでした。何か伝えたいことはありますか?
特にはないですけど、お互いに年を取りましたねってことで、ははは。
ーー宮記念杯の復帰は半信半疑でした。良く間に合いましたね。リハビリは大変だったでしょう。
今回のけがは、自分史上でもベスト3に入る大けがでした。ゼロから戻すのは簡単ですけど、今回はゼロに戻すだけで大変でした。
ーー肩甲骨が折れるとどうなってしまうのですか?
肩から腕がほぼやられた状態です。腕も上がらないし、脳がブレーキをかけてしまうから、力を入れられない。全力で力を入れられるようになるまで、ものすごく時間がかかりました。
ーーもう骨はくっついたのですか?
いや、まだ全然折れたままですよ。
ーーえ!? それで復帰して大丈夫なのですか?
治療院の先生とかは、イカレてると言ってました、ははは。
ーーほぼ同時期に同じけがをした郡司浩平選手や、頸椎骨折の守澤太志選手も宮記念杯には強行出場しそうですね。
それがSSのメンタルなんでしょう。第三者の目線で彼らを見たら、気合入ってるなあ〜なんて感心しちゃいますよね。やっぱり競輪選手っておかしいんでしょう、ははは。
ーー下半身のトレーニングはすぐに再開していましたよね。
下半身の筋力に関しては、落車前より上がっているかもしれません。でも、上半身と合わせるのが大変でした。
ーー怖くて上半身に力を入れられない状況で、どうやって合わせていくのですか?
脳の指令で追い込めなくなっているから、一気には出来ない。今日は65%で踏み込めたから、明日は66%で、なんて感じで地道にやりました。無理し過ぎてもうまくいきませんから。
ーーそうやって向き合えるのは凄いです。
一昨年もヒジを骨折して1カ月で復帰しました。その時もちゃんと走れたので、その経験が大きいですね。
ーーその年は宮記念杯を欠場することになりましたね。
その時の悔しさもあって今回は間に合わせたかった。宮記念杯は初めてタイトルを取った特別な大会ですから。
ーー先日、弟の啓多選手と話した時に、「神頼みなのか、兄貴が石を買い出した」と言っていました。
はははは、もともと石は好きなんですよ。
ーーパワーストーン的なものですか?
そうです、そうです。石って面白いんですよ。
ーー宗教チックなものではないですよね…?
違いますよ(笑)。最初は、キムタクが自宅の玄関にアメジストのデカいのを置いていたのをSNSで見たんです。
ーーきっかけはキムタクですか(笑)。
縁起が良さそうだし、ちょっと真似してみようと。色々調べていたら面白い世界だなと好きになっちゃった感じです。話さないけど、選手でもけっこう好きな人いると思いますよ。パワーストーンクラブでも作ろうかな、ははは。
ーー善光寺にお参りに行っているSNSも見ました。
家族で行ってきました。練習とリハビリだけだと息が詰まるので、行って良かったです。お祓いもしてもらったし、気分が変わりました。
ーー欠場期間も前向きにとらえて、いい時間に変えるのはさすがです。
僕も年齢的には、普通のアスリートじゃ大ベテランの部類ですから。
ーー競輪界では60代まで頑張れますからね。
佐古(雅俊)さんは引退してしまいましたけど、63歳まで現役を続けられたなんて、別次元すぎて言葉にならないですよ。
ーー神山雄一郎選手もようやく900勝を達成しました。
神山さんに関しては、ずっとトップで走られていたわけですから、どんだけ凄いんだよと。本当に尊敬します。今回の宮記念杯は武田(豊樹)先生もいるし、僕も頑張らないといけませんね。
ーー武田選手も鎖骨を骨折していましたし、ダービーは2人とも出られませんでしたからね。
武田さんと現場で会うのが楽しみです。今回は関東の雰囲気がダービーとは変わるかもしれませんね。
ーーこの復帰までの期間で何か変えたことはありましたか?
いいきっかけだったので、練習環境を見直しました。自分の中で行き詰まっていた部分があったので、なるべく意思の疎通をしやすくするために、最近は少数精鋭で練習していました。
ーー平原選手を頼ってくる人は後を絶たないでしょう。
うれしいことなんですけど、気が付いたら大人数になっていて。このけがを機にもう一度、集中できる環境で自分自身を鍛え直そうと思いました。
ーーいよいよ出陣ですね。どういう心境ですか?
冷やかしじゃないので、ただ参加して、前に離れてゴールなんてことは考えられない。もちろん優勝するつもりで行ってきます!!
平原康多
Hirahara Kota
埼玉県狭山市出身。日本競輪学校87期卒。競輪選手・平原康広(28期)を父に持ち、その影響も受けて高校時代から自転車競技をスタート。ジュニア世界自転車競技大会などで活躍し、頭角を現していった。レースデビューは2002年8月5日の西武園。同レースで初勝利を記録。2009年には高松宮記念杯と競輪祭を制し、2010年も高松宮記念杯で勝利。その後もGⅠ決勝進出常連の存在感を示し、2013年は全日本選抜、2014年と2016年には競輪祭、2017年も全日本選抜などで頂点に輝く。最高峰のS級S班に君臨し続け、全国の強者と凌ぎを削っている。