◆痛みよりも、悔しさで眠れない日々…

ーーダービーの欠場は本当に残念でした。けがの具合はいかがですか？

平原　まだ腕が上がらないんですけど、練習は出来ることをやっています。

ーー肩甲骨が折れていてやれる練習とは？

平原　すぐにレッグプレスは始めたし、下半身の筋力はまったく落ちていないと思います。今は下ハンドルを持ってワットバイクを漕ぐぐらいは出来ますね。

ーー落車後、数日は欠場が発表されませんでした。かなりギリギリまで出場を迷っていたんですか？

平原　一言で言えば悪あがきですね、ははは。レントゲン写真を見た時から無理なのは分かっていました。痛みもハンドルを触れないレベルでしたから。

ーーそれがダービーの重みですか。欠場を決めるまでには、かなりの葛藤があったんでしょうね。

平原　痛みよりも悔しさで眠れない日が続きました。武雄G3の時は、かなり状態が上がってきていて、(さらに良くなる)先が見えていた。ダービーはかなりいい勝負が出来るぞと思っていました。

ーー確かに武雄の2次予選、菊池岳仁選手を残したレースは圧巻でした。

平原　菊池もまだ本調子じゃなくて、いい掛かりではなかったけど、ああやって残せば、これからまた頑張ろうという気持ちになってもらえますからね。

ーーただ前に踏んでいれば、もっと簡単に勝てましたよね？

平原　そうですね。番手まくりで勝つ方が簡単です。でも、躊躇なく番手まくりにいけるって、相当メンタルが強くないと難しいですよ。

ーー今、頭に誰かをイメージしましたか？

平原　してないです、はははは。

ーー17年ぶりに自宅で見たダービーはいかがでしたか？

平原　悔しさしかないですよ。あとはうらやましさかな。でも、毎日見ていました。

ーー現場では、平原選手のいないダービーはもの足りないという声がありました。

平原　その場にいないのに名前が出たり、そんな風に言ってもらえるのは選手冥利につきますね。

◆関東のために「変わらないといけないのかな」

ーー欠場前に発表された特選の番組は、眞杉匠選手が一緒でした。結果的に平原選手の代わりに眞杉選手の後ろを回った吉田拓矢選手が勝ちました。

平原　はたして自分が番手を回って、同じように眞杉に安心感を与えられたかは分からないけど、自分だったらどうなったかは想像しました。

ーー平原選手は眞杉選手への評価がすごく高いですね。

平原　見ていて自分も頑張ろうと思わせてくれる選手です。後輩だけど、尊敬に値しますね。

ーーそう思えるきっかけは何だったんですか？

平原　走りにプライドがにじみ出ているじゃないですか。先行して9着ばかりという時期も見ていたけど、それでも貫く。これは将来的にすごい選手になるぞと感じました。そう思った若手は、眞杉と新山(響平)くらいです。見習わないといけないし、関東のみんなも彼らを目指して欲しいと思います。

ーー今、名前が出た新山選手ですが、ダービーでは凄みが増していましたね。

平原　自信に満ちていた最近の走りが、ダービーでもそのまま出ていましたね。

ーー関東勢は残念ながら1人も決勝に進むことが出来ませんでした。

平原　実は最終日の夜、武田(豊樹)さんと会って食事をしたんです。

ーー関東幹部会じゃないですか！

平原　ははは。武田さんも鎖骨を折って今回のダービーは自宅で関東勢の応援をしながら見ていた。そこで感じたことを意見交換しました。感じていることは一緒でしたね。今、地区のレベルがどうかと考えると、関東は下の方だねと。やっぱり底上げするには地区ごとに見習うべき選手というのが必要です。今まで僕は後輩に口うるさく言ってこなかったけど、それも少し変わらないといけないかなと思うところもあって…。

ーー平原選手自身は、今でも自力で戦う方が好きなのですか？

平原　30歳を過ぎたあたりから若手が出てきて、後ろに付く機会が増えました。周りには追い込み寄りの自在と思われているかもしれませんが、僕は何も変わっていません。好きとか嫌いじゃなく、若いころから僕の中で意識革命というものは起こっていないんですよ。

ーーいい目標が付いた時に、ラッキーだなとは思わないですか？

平原　そう思ったらすぐに弱くなっていくと思います。この目標に付いて、自分がどういうパフォーマンスが出来るのか。それを一番に考えますね。

ーー関東勢のいないダービー決勝はどう推理しましたか？

平原　準決勝のワッキー(脇本雄太)のタイムがとにかくすごかった。まあそれぐらいやるだろうとも思うんですけど、ワッキーと古性(優作)なら、別線がどう戦っても何とかしちゃうのかなと。ただ、競輪はドラマがあった方が面白いし、近畿勢が簡単に勝っちゃうと、またか！ と思うファンの人も多かったんじゃないかな。

ーー心情的に応援した選手はいましたか？

平原　ライバルだけど、苦労を知っている新山や清水(裕友)には頑張って欲しいと思って見ていました。清水は惜しかったですね。

ーーそういえば、郡司浩平選手も同じけがを負ってしまいました。

平原　郡司が肩甲骨で、守沢(太志)は頸椎ですよね。今年のSSはどうなってるんですかね。僕は、今年はそういう年なんだと開き直っている部分もありますけど。

ーー郡司選手は地元のG1に懸けていたでしょうし、悔しかったでしょうね。

平原　悔しかったでしょうけど、あそこまで戦えたので。僕もダービーで肩甲骨を折ったなら本望だったけど…ははは。

ーーこれでSS争いは混沌としてきました。

平原　現時点で賞金ランクの30位にも入っていない自分は、何かを守る位置にすらいない。攻めるしかないです。SSにこだわるよりも、レースに対してもっと勝負していかないといけないでしょう。どこか現状維持で守りに入っていた部分もある。詳しくは言えないけど、今はやってみようと思っていたことにトライする時期と思っています。

ーーこのダービーの欠場も無駄にはならなかったんですね。

平原　得たものしかないですよ。客観的にレースを見て、色々な選手のフォームを見たり、研究も出来た。いつもと違う視点で見られたと思います。

ーーそうやってポジティブ思考に持っていけるのは凄いです。

平原　骨折が分かって、まずは絶望感を味わいました。2年前、練習中に落車して宮杯を欠場した時と同じような状況だったので、またこれだ…と思いました。でも、その後に「あの時の経験があったから今がある」と思えることもあった。また、ここをターニングポイントにしたいですね。自分が変わろうと思わなかったら変われないですから。

ーー平原選手がドラマの中心に戻れるのはいつごろになりそうですか？

平原　宮杯(高松宮記念杯)での復帰を目指しています。そこまでにどこまで戻せるか頑張ってみます。

(※文中敬称略)