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筋トレマニア加藤慎平の筋肉で語る競輪

【筋肉診断】大楠賞争奪戦に出場する岩本俊介、吉田拓矢を解説!

2021/04/21 (水) 12:00 2

●岩本俊介

 身長は179cm、体重は90kgを超える。トップアスリートとして充分なフレーム(骨格)、筋量を持っていると推測できる。

 爆発的な踏み出し・ダッシュ力でトップスピードを誇り、一気に前団を飲み込みゴールまで我慢する脚質タイプ。ガードを固めてパンチをかいくぐり、顎先にショートアッパーを決めるタイプではなく、高山善廣vsドン・フライの殴り合いのようなレースを得意とするレーサーだ。

 そして筋肉の付着の仕方はバランスタイプ。どこかの部位にだけ多く付着するのでは無く、体幹部を中心に全体的にドシッとしたフォルムだ。

 岩本選手の骨格は少し特徴的。179cmの身長に対して大腿骨(股関節から膝関節を繋ぐ骨)が若干短く、高身長選手が自転車トルクを生み出すメリットである“てこ”のパワーが生かされていないように見える。なぜ岩本選手は爆発的なトルクを生み出す事が出来るのか?

 ルーツは自転車競技以前に打ち込んでいた陸上競技にあると読む。岩本選手は陸上100mで日本選手権に出場する程のスプリンターであった。

 筆者が経営するジムにも陸上短距離の選手が多数来ているが、10秒前半で走ることが出来る選手は異常に早いスピードで股関節の伸展と伸張を繰り返す傾向がある。パワー(仕事率)を決定つける力×速度の部分で岩本選手は“速度”の部分に秀でているのではないかと、筆者は読む。

●吉田拓矢

 筋肉から選手を掘り下げ、分析するこのコーナー最難関の選手かもしれない。

 身長は171cm、体重も73kgと競輪選手としては圧倒的に小柄な身体データだ。筆者はデータを常に疑ってかかるので、写真で全体フォルム、バランスをチェックする。しかし、やはり華奢だ。自力選手として常に110点以上の競走得点を叩き出している吉田選手の秘密を何とか探ろう。

 小柄ながらも決してアンバランスな骨格、体型ではなく、アスリート的マイナス面は見られないが、筋量の面では間違いなく足りていない。しかし彼の自転車は伸びるし進む。

 当然自転車を速く進ませる要素は決して筋肉だけではない。つまり、彼は身体的な“仕事効率”が異常に高いのだろう。いわば、自転車にブレーキが掛からない身体の使い方ができるのだ。

 人間というのは、自分が本来持っている能力を100%競技で発揮できることはまず無い。プロアスリートでも6、7割だろう。吉田選手の場合はその割合が高いと分析する。

●本レースで注目すべき選手は…?

 SS級自力選手がなんと郡司浩平選手、松浦悠士選手、清水裕友選手の3名が名を連ね、地元・山田英明選手にとっては何とも厳しい開催となる。当然SS自力3名が中心となってくるが、やはり中国勢の戦力が抜けていると言わざる得ない。

 そこに対抗出来る戦力は岩本俊介選手、野原雅也選手、吉田拓矢選手あたりか。岩本、野原のスピードはSS選手を脅かすに充分だ。

 山田英明は松浦ー清水との越境ラインを組めるかどうかがポイントになる。

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加藤慎平

Kato Shimpei

岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。

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