2023/05/18 (木) 18:00 43
惜しかった…。清水裕友ファンなら誰もがゴール直前まで夢を見ただろう。GI「第77回日本選手権(ダービー)」は8分の1車輪差で準優勝。大漁は逃したが、4日間ヒロトの走りを披露してくれた。今回はもちろん、ダービーを清水選手に振り返ってもらいます。最後はお便りコーナーも。
ーーダービーお疲れさまでした。優勝にはほんの少し届かず…。惜しかったですね。率直な思いを教えてください。
悔しい。悔しかったですけどね。年頭から一個の目標にしていた大会で力は出し切れたと思う。
ーー初日特選は脇本雄太選手との対戦でした。ビッグレースの特選メンバーはあらかじめ発表されますが、知っていましたか?
極力あまり見たくはないけど、どうしても(報道とかで)目に入ってしまう。知ってました。
ーー関東勢が主導権を奪って脇本選手を不発に追いやりました。関東勢の後ろを奪って、外を踏み上げての2着でした。
全日本選抜の初日も脇本さんとの対戦で、自分から動いて結果が良くなかった。しっかり位置取りをしないとって思ってた。前のレースがしっかりと生きた。自分でしっかり位置を取って、捲りに行ってヨシタク(吉田拓矢)に合わされたけど、ツケマイ気味に行って粘れた。吉澤(純平)さんにも踏み負けてなかったし、状態の良さも確認出来た。悪ければ外から行かれたりしますからね。
ーー優秀競走の「ゴールデンレーサー(GDR)賞」行きも決まりました。
大きかった。(準決勝が決まって)気持ちの面では優位にはなった。
ーー2走目が4日目になりました。2日間空くというのは何か影響はありますか?
二次予選だと、3日目なのか4日目なのかが2日目のレース後にならないとわからない。GDR賞に行けて、2走目の日程が早くわかったので気持ちの余裕というか、調整もしやすかった。
ーー準決勝が決まったというだけでなく、リズム的にも好影響だったんですね。
ですね。
ーーGDR賞は荒井崇博選手との連係でした。荒井選手からは何か話はあったんですか?
好きに走らせてもらいました。
ーー9着でしたが、新山響平選手との踏み合いは見応え十分でした。
スタートのアヤで後ろ攻めになってしまったのが…。ちょっと想定外だった。新山さんが前受けだったし、突っ張られるのだけはレースとして面白くない。そこだけ意識して、あとは流れの中で対応しようと。打鐘のところで少し泳がされたんで、どこまで戦えるのかと腹をくくった。新山さんとは力の差を感じましたね。
ーー準決勝は、深谷知広選手-郡司浩平選手-小原太樹選手の南関勢が強力なラインでした。番組を見た心境は?
強力ですけど、そこを倒さないと決勝に行けないんで。展開的には読みやすかったですよ。考えて走れたかなと思う。
ーー渡邉一成選手が前受けをして、橋本優己選手を突っ張りました。
一成さんが前を取った時点で、スンナリは引かないだろうなというのは(頭に)あった。
ーーひとまず渡邉-守澤太志選手の後ろを確保して、そこを南関勢が襲いかかる展開になりました。最終的には捲りを決めて見事に1着。
まず(郡司と守澤の)落車は残念でした。仕掛ける時に、守澤さんが小原さんを持っていったあおりがあって、ちょっと「うぉー」って思ったけど、車が伸びていってくれた。行けるところまで行こうと。
ーー深谷選手の番手で郡司選手も待ち構えていました。
郡司さんがタテに踏むのかヨコに来るのかを考えながらの捲りでした。でも自分のスピードも悪くなかったので、なんとか乗り越えてくれっていう思いで走った。落車があり、少し複雑な気持ちもあります。
ーー準決勝1着での決勝進出。決勝の並びは犬伏湧也選手-香川雄介選手の四国同士の間に入る形になりました。
いろいろ話をして、ですね。
ーー葛藤というか、迷いももちろん?
ですね、四国と四国の間に入るのはちょっと申し訳ない気持ちがあった。桑原(大志)さんや小倉(竜二)さんとか、中四国の先輩方と相談して、最終的には自分で決断した。香川さんも準決勝の直後に「ハコ行っていいよ」とは言ってくれていたんですけど。やっぱり迷いはあった。でも、いい連係は出来たかなと思ってます。
ーー昨年のダービー以来のGI決勝戦でした。どんな心境だったんでしょうか?
凄く緊張した。四国の間に入れてもらってるし、前の犬伏君と後ろの香川さんに迷惑をかけられない。今までのGIの中で一番緊張した。
ーー犬伏選手が脇本選手、新山選手を相手に果敢なレースをしました。
とにかく犬伏君がめちゃくちゃ強かった。最終2コーナーでつまったところで出た感じ。僕も付いてるだけで脚を削られてましたね。
ーー何度も後ろの状況を確認していましたね。気持ちの面では余裕がありましたか?
余裕というか、誰がどこにいるかとか隊列は把握出来ていた。
ーーさすがの犬伏選手でもペースは落ちてしまう。あとは(どうするかの)判断だったと思います。
犬伏君のカカりは凄かったけど、赤板過ぎから駆けてるんで。それが脇本さん、新山さんの凄さなんでしょうね。それをムダにしたくない気持ちでした。(判断を)一歩間違えたらやられてしまう。自分も脇本さん、新山さんの圧を感じてました。
ーー番手から出て、先頭で最後の4コーナーを通過しました。
脚が三角になってた。3コーナーくらいから自分のリズムに合わない感じがあった。でも脚が三角に回ってる割にはなかなか誰も来ないなぁと。そういえば全日本選抜(20年豊橋)を獲った時も最後は三角に回ってた。あの感じだとは思いましたね。
ーーよく耳にする“脚が三角に回る”ですが、スムーズじゃないってことですよね?
はい。本当に丸じゃなくて三角に回ってる感じです。
ーー真っ先に栄光のゴールに飛び込んだかと思ったところで、外を青の勝負服の山口拳矢選手が突っ込んできました。
ゴールした瞬間は、やられたかなというのはあった。モニターで確認したら拳矢君のアップになったので、やっぱりやられたんだ、と。
ーー山口選手も、モニターを見てガッツポーズをしたそうです。
僕もモニターを見て、やられたかな、が確信に変わりました。
ーーわずかに8分の1車輪。手が届きかけていたダービー王とはなりませんでした。
基本的には勝った選手が強かったということ。
ーーあらためて、決勝で中四国での連係を終えての気持ちを聞かせてください。
決勝の2着は犬伏君と香川さんのおかげ。犬伏君があれだけ頑張ってくれた分、優勝したかった。申し訳ない気持ちですね。こういう並びになって、責任感もより強く持って走れた。凄く仲間に助けてもらった開催だった。中四国の先輩たちにこれからも恩返ししていければと思ってる。
ーー4日間、清水裕友の走りができたんじゃないでしょうか。
今年に入ってからは動けてはいたんで。今回も初日からしっかり動けたし、シリーズを通して内容ある走りが出来たと思う。
ーーちなみに夜は眠れましたか??
しっかりと。そういうのは大丈夫。あまり言っても…。この開催で見えたものもあったので。
ーー見えたものとは?
犬伏君の後ろで、自分の脚力のなさにあらためて気付かされた。彼は衝撃的な強さでした。強い後輩に課題をもらった。中四国はみんな強いんで。その中で自分も強い自力の中に入っていけるようにしたい。脚力や先行力で言ったら取鳥雄吾、町田(太我)、犬伏、太田(竜馬)には敵わない。そういう選手の中に入っていけたら。
ーー話は前後してしまいますが、ダービーは何が良かったんでしょう?
守りに入らなかったのが良かった。4日間攻めることが出来た。平塚ダービーに向けてしっかりやってきたというのもあって、それが攻める気持ちにつながったのかな、というのもある。
ーーGI決勝も1年ぶりでした。
ですね。それにGIの確定板も優勝した全日本選抜以来だった。久々にGIの確定板に載れたか〜って感じですかね。
ーーひとまずは、前半戦の大目標だったダービーが終了しました。
次は高松宮記念杯に向けてですね。守りに入らず攻めるレースが出来たんで、これを続けられるように。去年よりかはだいぶ良くなっていると思うし、あとは夏場ですね。いつも落ちるので、今年はそれがないようにしたい。
ーー今年の夏対策とかは考えていますか?
これといって…。毎年いろいろ考えて練習とか調整とか変えてるけど、やっぱり夏はきつい。
ーー暑さですか? 湿気ですか?
両方ですね。
ーー体の面ですか? 脚の方ですか?
体ですね。脚もずっと乳酸が溜まってる感じです。
ーー今年はいい意味で走りも変わっている印象です。
しっかり練習出来てる。タイトルを獲りたいという気持ちで出来ている。今思えば、去年はSSを維持したいという気持ちが強かったかもしれない。
ーーそういえば髪の色も変わってましたね。ダービー前にですか?
ですね。気分転換に。散髪屋さんにお任せで、いい感じでやってくれました。
ーーしばらくはその感じで?
色が落ちるまではこれで行こうかな。
ーーそれではお便りコーナーに行きたいと思います。やっぱりダービー準優勝の反響は大きいですね。いつもより多めです。よろしくお願いします。
そうなんですね。はい。
【読者から届いた質問コーナー】
ーーフレームの色を白くしたのは心機一転でしょうか?サイズやセッティングが異なるのもあるでしょうが、色を変えて気持ち的な変化はありましたか??(匿名)
去年作って、去年も少し乗ったフレームです。色は作った時の気分ですね。A級時代にも白は乗ったことがある。気持ちの変化はそこまでないけど、白は視覚的にも軽いというか綺麗。好きな色は赤だけど、その次に好きなのが白。車も白が多い。黒の車も乗ったことがあるけど、これじゃない感があった。
ーー赤、白以外の色のフレームも乗ったことがありますか?
強い自力選手に青色が多いイメージがあったので、A級の時に水色を乗ってみたけど、全然ダメだった。乗っていて違和感しかなかったですね。
ーー今年はいつから使用したんですか? 以前のフレームとはサイズやセッティングも異なるんですか?
前橋から乗ってて、だいぶ良くなってた。セッティングとかいろいろとやって、去年乗った時とは別ものだった。これを乗りこなせないとGIで通用しないかなと思って乗って、乗りこなせてるまでは行ってないけど、凄く良くなってる。前橋の前まで乗っていた赤のフレームとは、一緒のところがないというくらい全く別もの。強いて言えばハンドルの幅くらいかな。
ーーGI日本選手権競輪お疲れ様でした。初日から思い切りのいい競走で清水「らしい」走りを見れて本当に感動しました。準優勝でしたが決勝のレース後に松浦さんや同県の桑原さん、小倉さん達とはお話しましたか? 私はSS清水の返り咲きに期待して年末まで楽しみに応援してます、これからも頑張ってください!(ゲスト)
(話は)ちょこっとしました。内容はここで話すことじゃないかな。
ーーダービーお疲れ様でした。すごくドキドキ心臓が大変でした。それだけ中々熱くなってみるスポーツも高校の時に応援してた相撲以来です笑 競輪を見てる女性は周りにいないですがどんどん女性ももっともっとみて欲しい。そして一緒に清水選手を応援していきたいです。これからも自分らしくで頑張ってほしいです。(ゲスト)
ありがとうございます。
ーーダービー決勝の前売りで、3-全-全を買ってこの質問を書いています。別府FIからダービーまで3週間と比較的間隔が開きまとまった練習ができたのではないかと思いますが、その間どのような練習に取り組んでこられましたか?(匿名)
別府の後は基礎練習を多めに。土台に戻る感じで。スピード練習を多めにやっていたけど結果が出なかったので。競輪場にはあまり入らず練習してた。バンクにはそんなに入らず、街道とかウエートとか。思い切って練習方法を変えた。それがダービーにすぐにつながったとは思ってない。もっと先を見てやらないといけないと思ってる。その中でとりあえず目標の一個だったダービーに向けてという感じでしたね。
ーーお疲れ様でした! 夢を見ました。わずか1/8車輪ですか。1/8車輪って何センチくらいなんでしょうか? たとえるならどのくらいの大きさ?(匿名)
たとえるならタイヤ8分の1分ですね!
ーー間違いないですね。
7センチ、うーん、10センチ弱くらいなのかな。
ーーたったそれだけの差だったんですね。走ってる選手たちは優劣がわかるものなんですか?
差してる方はわかると思いますよ。抜かれる方は8分の1車輪よりも抜かれてる感覚かな。今回もそう。あとから、あぁ8分の1だったんだって。
ーー競輪祭以来の6日制GIはどうでしたか? 長かったですか? 空き時間はどんなことをしていましたか?(lalala)
負けた時は凄く長いけど、勝ち上がってる時は不思議と長く感じない。今回は長く感じなかったですね。ゆっくりと過ごせた。3日目の朝だけ軽く自転車に乗ったくらいで、昼寝をしたり、コーヒーを飲んだりして本当にゆっくりしてた。
ーーリラックス出来ていたんでしょうね。
だと思う。
ーー清水選手のコメントの中で「フワフワした感じが…」というのよく聞くような気がするのですが、この「フワフワした感じ」というのはどのような状態なのですか? また、開催期間中に「フワフワ」は解消されるのでしょうか?(匿名)
基本的に1走目が多くて、1走すると解消する。よほど力を出せなかったら別ですが。筋肉に刺激が入ってないような状態。脚は軽いけどパッとモガいた時に締まってないような感じですかね。
ーー前回の記事で街道練習の話が出ていましたが、街道練習はどのルートを使われることが多いですか。ずいぶん昔になりますが、262号線(防府〜山口間)で練習する選手の姿を見たことがあります。(鯖山トンネルまでの坂は結構キツくてかなり負荷がかかりそうです。)また、一般車と同じ道を走るわけですが、怖くはありませんか?(匿名)
僕は262で練習することはないです。安全を確認しながら、車通りの少ないところでやってます。
ーー私も同郷なので、防府開催が無くて寂しい思いを日々重ねて居ます。2年後の改修後には防府競輪場に応援に行こうと思ってます。そこで、質問です。『もう連勝は良いよ』の前人未到の5連覇。昨年の記念、私もヒロト君に頑張って欲しいから赤板過ぎから叫んじゃいました。もちろん、ゴールの大歓声とともに、私の目にも熱いものが…。改修休場開けの防府記念のV6狙いますか? いい返事待ってます。(匿名)
それはもちろん、はい!
(取材・構成=netkeirin編集部)
清水裕友
Hiroto Shimizu
清水裕友(しみずひろと)。山口県防府市出身。105期。日本競輪選手会山口支部所属。師匠は國村洋。ビックレースはGI「読売新聞社杯全日本選抜競輪」(2020年)、GII「サマーナイトフェスティバル」(2020年)、GII「ウィナーズカップ」(2021年)。