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前田睦生の感情移入

【競輪の必須ルール】「先頭誘導員の早期追い抜き」での失格ルールの存在意義とは? 選手とファンの叫び声ーー

アプリ限定 2023/03/20 (月) 12:00 37

競輪のルールのあり方とは

ルールのあり方

 世の中にはいろんなルールがあって、競輪にも当然ルールがある。1948年11月に小倉競輪場で始まってから、競輪のルールも紆余曲折を経てきた。では、何のためにルールはあるの? そもそもの話がある。

 大まかに言って、9人が自転車に乗って2000mを誰がいち早くゴールするかを競うのが競輪。その上で、着順を当ててギャンブルとして成立させることが必要だった。走る人と賭ける人がいて、成立する。その売り上げをもって地域社会に貢献することが狙いだ。

 ルールというものは簡単であればあるほどよい。なぜならそれは、多くの参加者を許容することになるからだ。たくさんの選手がいて、多くのファンがいて、売り上げが成り立って、地域へ貢献できるのが、理想的な形だ。

 その形を生むために、ルールは存在する必要があって、その機能を果たす。

競技規則58条

ルールは様々な変遷を経てきた

 競輪は「競技規則」と呼ばれるルールに基づいて開催される。様々あるが、今回取り上げるのは58条の「先頭誘導員の早期追い抜き」のルール、また制裁についてだ。

 例えば、400mバンクの5周回を競うレースで、どんなタイミングでも先頭誘導員をかわしていいというルールだった場合、近年の競輪を楽しむファンからすれば、しっちゃかめっちゃかな状態のレースになりうる。

 いきなり1周も経たないうちに誰かが誘導員をかわして退避させたとなると、そこからしばらくは誰かが先頭にならざるをえない。風を受ける先頭の位置など、誰も行きたくない。なぜなら勝利から遠ざかるから。風圧と戦って不利にはなれない。誰も追いかけない。けん制状態が続き、レースが壊れ、ファンが理解できないものとなるといった事態が想定される。だから現在は、昔の「普通競走」と呼ばれる先頭誘導員のいない形ではなく、「先頭固定競走」というものが行われている。

 競技規則で決まっている位置まで追い抜いてはいけない、は競輪において必須のルールだ。

近年の早期追い抜きルールの変遷

ファンにわかりやすいものがよい

 大きなレースでレースが動き始まる前に、先頭誘導員と接触するなどして、選手が失格するケースが起こった。とにかく先頭に立たなければ、の思いで、早くに先頭誘導員をかわしてしまい複数の選手が失格となるレースもあった。

 簡単にいえば、打鐘が鳴る残り1周半のところから、ファンからしても「勝負が始まった」と感じる。だが、早期追い抜きはそうした勝負が始まる前の段階での失格になる。「何があったの」「どういうこと」。すべてのファンが競技規則に精通しているわけではない。“よくわからない失格”でファンが戸惑うこともあった。

 “これではダメですよ、ファンに楽しんでもらえるものから遠ざかる”ということで制裁も厳しいルールになったのだが、先頭誘導員が誘導するタイムが早まったことや、7車立ての原理による、ギリギリのタイミングで先頭に立つことが勝負の条件になったことが、多くの早期追い抜きの失格を生み続けている。

叫び声を聞いて

選手は規則に従うのみ

 取材現場でこの早期追い抜きの失格になり、4ヶ月相当のあっせん停止になるケースを何度も目にした。失格となった選手は、特に何かを言うわけではない。まず聞こえるのが「なにがあったの」というファンの声。「これ、どういう失格なの」。1着、2着、また3着となった選手が失格となれば、当たっていた、と思っている車券がハズレになる。

「どういうこと?」という戸惑いの声をファンからよく聞くことになる。

 そして、他の選手からの声がある。先日の話。「明日の決勝は、どうですか」と問いかけたところ「そんなのはどうでもいい!」と自分が決勝に進んだ話ではなく、その前のレースで早期追い抜きで失格したケースの話になった。口の端から血がにじみ出ているようだった。

「選手の制裁は仕方ない。でも、ファンはよくわからんでしょう! このルールができたこととファンがどうなるか、が離れすぎている。ファンを筆頭に、多くの人が不幸になる可能性を持っているこのルール、どうにかならんのですか。売り上げは今、上がっているといっても、このルールでやめるファンもいると思う。ガールズケイリンの落車の多さや、代謝の問題とかでガールズの選手になりたいという人も増えていない。もっと大きな、全体的に見ないといけないんじゃないんですか! 競輪は全然安泰じゃないでしょう!」

簡単で率直なルールへ

ファンを置き去りにしてはいけない

 失格と制裁の現行のルールはルールだ。選手は失格になれば半年近いあっせん停止が現実だとしても、今はそのルールに抵触して失格したことに対しては、「その選手がダメだ」としか思わない。(それを強いられる競技構成に関しては、う〜ん、という留保はあるが…)

 だが、ファンからすれば、車券的にもそうだが、応援している選手がこの失格となれば、走る姿を長く見られなくなる。これは“不幸”の連鎖。ルールのあり方として、解決した方がいい。

 単純に先頭誘導員が決まった地点で退避するとしてもいいと思う。そういった指摘をしている方もいるし、意見を集めていいと思う。

 ルールの存在意義は、『誰もが分かりやすく、納得できるために』が基準だ。どんなルールでも、『失格』の時点でスッキリと選手もファンも納得がいくものがよい。その後に何らかの尾を引くルールであれば、改善しないといけないと思う。

 競輪は過酷な競技だが、そうであっても“みんなが楽しめて、それが地域貢献になる”という姿へ。今回は58条という競技規則について、様々な声があったので書かせてもらったが、さらに大きな姿をとらえる競輪界であってほしい。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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