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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の一答入魂】競輪はオレにとってアドベンチャー「仕事だけど、仕事じゃない」

2023/03/15 (水) 18:00 39

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさんアニョハセヨ! 最近の練習では韓国の選手とも張り合っている佐藤慎太郎です。今回のコラムではそんな近況を報告しつつ、日ごろの感謝を筆に込め、みなさんから寄せられた質問に答えていく回にしようと思う。

高知・全日本選抜競輪に参戦した慎太郎選手(撮影:島尻譲)

チャンスに対しての“準備不足”

 まずは高知の全日本選抜を振り返る。シリーズを通して状態も悪くなく、現地の声援も嬉しかった。前回書いたとおり、オレにとって高知は縁起のいいバンクだし、気持ちを高ぶらせて走ることができた。ただ、決勝進出はならず。オレは準決で勝ち上がりを逃した。準決はレースの途中まで頭も冴えていたし、自分自身に余裕も感じていた。しかし、自分の感覚と実際の脚力にギャップがあったようで、最終局面では余力が残せていなかった。

 結果を分析し、総括すれば「準備不足」ということ。決勝へ進むためのチャンスは十分にあったレースだから、必ず次に繋げていくきっかけとしたい。新田をマークする際の脚へのダメージやポイントを再考し、この敗戦をトレーニングに活かす。脚力を鍛え、細かい部分を詰めていけば、まだまだ十分に戦える手ごたえを掴めたGI戦だった。「万全の準備」のレベルを引き上げ、気合を入れ直して精進する。

準決勝最終4角では勝ち上がりへのコースを見つけるも「脚が残っていなかった」(撮影:島尻譲)

沖縄の練習場に個性豊かな選手たち

 全日本選抜が明けて課題に取り組む日々の中、静岡から深谷とエンカツこと遠藤勝弥君が沖縄に来た。オレも深谷たちの練習に混ぜてもらう形で合同練習。普段一緒に練習してない選手との練習には新しい発見が多々ある。早速メニューに取り入れたくなる気づきもあったし、とても有意義だった。

深谷知広選手と慎太郎選手は大舞台でも連係実績がある(撮影:島尻譲)

 ちなみにエンカツ君はボディービルの大会も経験している筋肉ガチ勢なんだけど、夏のビーチに向けて体づくりを進めるオレに「肩をデカくする」トレーニングを伝授してくれた。こんなところにも合同練習の恩恵があり、オスとしての魅力を爆上げさせたいって裏テーマも大いに進めることができた。選手以前に一人の男! ここもしっかり仕上げていく!

遠藤勝弥選手は“サ活”もガチ勢

 その後も韓国競輪のトップに君臨する選手たちが練習に来たり、本当に刺激のある良い時間を過ごしている。合宿や出稽古といった合同練習はプラスしかない。自分自身を律して取り組む練習とは別の集中力・緊張感が発揮できる。たとえ練習とて「弱みは見せたくねえ」ってのがいいんだろうね。良質なトレーニングに打ち込めている日々をしっかりと血肉に変えて、別府のウィナーズカップに乗り込んでいくとする!

慎太郎が全力でアンサー

 それでは寄せられた質問に答えていく。一答入魂で行くぜ!

「脳みそも筋肉のオレに聞きたいことなんかあるのかよ? 全力で答えるまでだけど」(撮影:島尻譲)

ーー慎太郎さんを見かけたらプライベートな時間でも声をかけてOK?

 余裕でオーケー。プライベート中に声をかけてもらって戸惑ったことなどない。むしろ声かけではなく、いっそのことハグがいいよな。科学的なデータで15秒以上ハグをするとストレスが軽減できるというのがあるらしい。コミュニケーションを取りつつ、オレのストレスを軽くしてください。もっとも、ストレスなんざ自分でその都度、跡形もなく粉砕して解決してるけどな!

ーーエゴサとかするタイプですか?

 これはNO! エゴサは特にプラスになることもなさそうなので一生しない。にも関わらず、オレは自分に向けられた悪評に関しては、即時入手している。どんなシステムになってるのかと言えば、昔なじみの地元の友人や自転車部の後輩が、SNSとかでオレの悪評を見つけては面白がっていじってくるんだよね。求めてもいないのに、勝手にチクり包囲網が敷かれているわけ(笑)。結果としてエゴサーチ同等の環境になっちまってる。後輩が何か見つけると「〇〇〇野郎!」とか言ってきやがります。※〇〇〇は表記NGワードが入ります

ーー成功の秘訣や目標設定の考え方を教えてください。また、失敗や挫折を乗り越えるためにどんな心構えをしていますか?

 小刻みに目標を設定することが大事なのかな、と思う。ギリギリ達成できるポイントに目標を置き、その目標を達成するための通過点にも目標を置く。小刻みに目標があることで、迷わずに行動をとっていける。ギリギリ達成できる目標がセットできたら、その先の先の先を想像して「夢」をセットしておくと尚良しじゃないかな。ひとつひとつ目標をクリアしていけば夢に近づくってわけ。

 成功の秘訣があるならオレが聞きたいくらい。その上で答えるならオレは「自分の能力を信じること」がキーになると考えている。自分の能力を信じられなければ、スタートすら切れないのかもしれない。自分を信じることが必要不可欠じゃないかな。「失敗や挫折を乗り越えるための心構え」については持ち合わせていない。失敗なんて「人生終わったわー」ってレベルのことでも、時間とともに風化していく。「失敗? 気のせいだよ! ガハハ!」でオーケー。全然ふざけてない。これマジレス。だって失敗なんてホントに気のせいだから。

限界も失敗もすべては錯覚に過ぎない(撮影:島尻譲)

ーーいよいよ卒業して社会人になります。どんな気持ちで1年目を過ごせば充実した毎日を送れるでしょうか? 慎太郎さんのデビュー1年目を思い出しながらアドバイスください。

 社会人デビューおめでとうございます。オレは競輪選手だからペダルを早く回すことしか考えてないタイプの人間。そんなオレのアドバイスで平気かよ! とも思うけど、心当たりがないわけじゃないので、参考程度に受け取って。

 デビューの頃を思うと寝ても覚めても『勝ちたくて、勝ちたくて、勝ちたくて』の気持ちが強過ぎた。その結果、大いに空回りの遠回り。自分を外側から見ることもできず、「今、この瞬間」に集中し過ぎちまったんだよね。それを踏まえると「今だけじゃない長い目」が大切なんじゃないかなと思う。自分に与えられた役割は何か? 最初にいるポジションで何をするべきか? 将来どうなっていきたいのか? そこを考えて行動すると充実するんじゃないかな。

 若い時に意識を向けるべきは「今」じゃない気がしている。歳を重ねれば自ずと「今」に集中するしか選択肢がなくなる。がんばれ。

ーー影響を受けたアスリートはいますか? どのような部分に影響を受けましたか?

 神山雄一郎選手だね。地元GIで優勝する神山さんの姿を金網越しに見て競輪選手を志したので、いわば原点。今も尊敬する先輩であり、探求心絶えない姿勢には感銘を受けている。他競技ではサッカーの三浦知良さん。キングカズの本を読んでから、考え方を手本にしてみたり、ベテランとして生きる今に大きな影響がある。

慎太郎選手の原点は神山雄一郎選手にある(撮影:島尻譲)

ーー強烈にストイックなサトシンだけど、競輪人生で手を抜いた時期ってありますか?なければないですごいと思うし、あるとしたらどんな意識改革をしてストイックになれたのかを聞いてみたい。

 手を抜いたって表現は違うけど、全力でやれてなかったなと反省している期間なら覚えがある。競輪って戦術のトレンドだったり、レースにおけるルールの改正だったり、『走る環境』が変わることがある。ある時期、オレが憧れている競輪とは少し違う流れを感じていたことがある。その時期はうまく走れないと、環境のせいにしちまったりもしたわけ。負けても本心では受け入れてなかったし、練習なんかも集中して身につける気構えが低くて良くなかったね。

 でも、この時の体験と反省が今物凄く生きていると思う。意識改革なんて大袈裟なものではなく、「時間は有限」と当たり前のことに気が付いただけ。体も衰えるし、いつか選手をやめる時が来る。ならば一瞬一瞬を全力でやらないと後悔すると危機感を覚えた。オレにとって競輪はアドベンチャーであって、仕事だけど、仕事じゃない。自分で選んだアドベンチャー、自分をぶっ壊すくらい全力でやった方がいいのは明白だったよね。

ーー色々な競輪場で大声援を受けている慎太郎さん、特別好きな競輪場は?

 地元でもないのに、まるで地元じゃねえか? と錯覚するほどの声援を届けてくれるお客さんたちに本当に感謝している。最高のレースを見せたいって動機があるから日々頑張ることができる。だから特別ここが好きってのはない。日本全域にビッグラブって感じだわ。次走のウィナーズカップ開催地、別府もナイスな競輪場。行くのが楽しみだ。魚がうまい! 食堂にいるお姉さんも美人だし、笑顔が素敵! 別府の食堂最高!

 それでは今月はここまで! また気が向いたら一答入魂でアンサーするから、読者のみなさん、気が向いたら何か聞いてみて! それじゃ!

いざ、別府競輪ウィナーズカップへ(撮影:島尻譲)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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