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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎いざ出陣】激熱レースを振り返りながら「シャンパン」を一滴も残さず飛ばし切るイメージをかためる

2023/04/30 (日) 18:00 37

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん熱くなってマスカ? オレは武雄シリーズの前、温泉に浸かってきやした。武雄温泉は前にも入ったことがあるから熱さは覚悟していたが、相変わらず爪先まで痺れる…! 浴場では競輪好きのお客さんが話しかけてくれたし、身も心もホカホカに温まった。武雄温泉オススメ!

日本選手権競輪を前に温泉でパワー注入! 準備万端の鉄人・佐藤慎太郎(photo by Shimajoe)

選手はお互いの走りで語り合う

 それでは日本選手権競輪前にいくつかの激熱レースを取り上げ振り返っていく。最初に振り返るのは玉野記念の二次予選。連係した北井佑季がとても気持ちの入った走りで組み立ててくれた。北井の力量・能力は語るまでもないが、過去に連係した時に思い通りとは行かず、お互いに悔しさを共有していた。

 そんなバックボーンもあって、このレースで積極的に主導権を奪いに行った北井の走りに「慎太郎さん、オレの力はこんなもんじゃないですから!」というような熱い気概を見た。オレの勝手な解釈かもしれないが、そう感じた。その気持ちを受け取り、オレも「北井、もう一度勝負できねえか!?」と動いたが、ゴール勝負とはいかなかった。(※)

 選手はラインを連係する以上、お互いに最大限の相乗効果を発揮すべきだと思う。状況を見極めずに『常に心中の覚悟!』は違うのかもしれないが、それくらいのリスペクトを連係相手には持っていなくてはいけないし、北井はそう思わせてくれる選手。今回のレースのように「走りを通じた語り合い」があると、連係力のレベルアップに繋げることができる。次に北井と連係するときは絶対にゴール勝負だ。それでワンツーを決め込む! その上でオレが勝つ!

(※編集部注…当該レースは3月の「netkeirin月間好プレー大賞」に選出されているもの。記事最下部に記事リンクあり)

気持ちのやり取りを走りに活かすのが慎太郎ルール(photo by Shimajoe)

好調を実感するような「冴える感覚」が戻ってきた

 そんな予選を走り、ラインに対する気持ちを再確認しながら過ごしていた玉野記念。決勝は単騎の戦いとなった。「太田海也は、森田は、渡邉雄太はどう走るかな」と考えながら戦略を練ってみたが、最終的には流れに対してナチュラルに勝負していこうと決めた。玉野は連日お客さんの声援もすごく、難しい一戦とはいえ優勝以外に考えられなかった。

 いざレースになると熱い先行争いの展開となったが、すごく冷静に状況を見極められていたように思う。南関が捲りを仕掛けていった時にスイッチする選択もあったが、スピード差を考えて「追わず」を選択。しっかりと脚をためて内に入り、直線も伸びることができた。優勝にはあと少しで残念だったが、勝ちたい気持ちを全面に出して優勝争いに食い込めたのは良かったと思う。

最終バック過ぎ3角で最後方(慎太郎選手は3番車)も慌てずVロードを探った(photo by Shimajoe)

 レース後にVTRを分析したが、自分が下した判断と走りに『去年の絶好調の時期』と似たような感覚が戻っていると確認した。今年序盤は体の状態が戻っていても「神経反射が完全に戻るまでタイムラグがあるはず」と課題を感じていたが、この玉野決勝あたりで「かなり良い方向になっているんだな」と確信を持つことができた。

雨の武雄記念、去年の落車がよぎる

 充実感の中で武雄記念も決勝へ進出できたが、準決レース後に天気予報を見て「あすは雨」を確認した。去年地元ダービーを控えたタイミングで落車したことが頭をよぎった。

2022年の武雄記念決勝、慎太郎選手は落滑入で8着(photo by Shimajoe)

「ダービー前に無理しちまってオレはバカなのか?」と「目の前の勝利に貪欲であるべきだし、間違っていなかった」を交互に思い浮かべつつ武雄競輪場を後にしたことを思い出した(笑)。まあ、どんな状況だろうがどんな無理をしようが、勝利に突っ込んでくのが宿命なんだが! そんな心持ちでいたわけだが、今年の決勝は並びを決める前日から面白味があった。

 準決後、熊本の伊藤旭が「地元地区の開催だから前で頑張りたい」と山田庸平に伝えた。準決は脇本と山田で連係しているわけで、その流れに逆らわず決勝のライン構成が決まっても何ら不思議はない。脇本に九州2車、大川に四国2車のような感じで。オレら北日本はどうなろうが「響平-オレ-宣さん」で確定していたけどね。

 伊藤旭の気持ちから九州と四国の4車結束が決まり、順次ライン構成が確定した。その中で良かったのが伊藤旭の“ニュアンス”。「庸平さん、決勝も脇本さんに行きますか? 行かないですか?」ではなく「地元なんでオレに頑張らせてください」っていう感じ。このニュアンスの違いはデカくて、こういうエピソードから地区全体が盛り上がることもある。イチ競輪ファンの慎太郎からすれば「いいねえ」と見ていたんだが、オレは他地区の現役選手。「北も負けてられねえからな!」と必要以上の気合が入り、マジで優勝しかねえって気になったわ。

やっぱ競輪っておもしれえ(撮影:北山宏一)

勝負ごとに存在する『暗黙の了解』

 いつだったか麻雀のことを語った時に「麻雀にも競輪にも暗黙の了解が存在する」と書いたが、武雄の決勝はまさにそんな感じのレース展開となった。『脇本の強さにどう対抗するか』をそれぞれが考えて走っていたように思う。「暗黙の了解」を簡単に説明する。

全員がトップを目指している敵同士。その中でも一旦現状のトップ目の勢いを止めるべく、トップ目以外の敵同士が言葉を交わすことなく利害と役割を認識している状態。

 この決勝、「暗黙の了解」を楽しく推理してくれたお客さんも多かったのではないかな。結果は脇本の優勝で新山が2着。オレが3着。レースのカタチ的には「脇本対策、暗黙の包囲網」のようなものが、うまいこと全面的に出ていた。それをねじ伏せちまうわけだから本当に脇本はとんでもなく強い。

決勝ゴール手前の激闘(撮影:北山宏一)

 でも、あのレースはオレの中で「詰めが甘かった」と総括できる内容。裏を返すとオレの中で課題と発見があり、まだできることがあったということ。響平にもオレにも優勝の目があったわけだし悔しいが、長い目で見れば“収穫あり”とすべきレース。去年は落車で終えたシリーズだったが、今年は無事に走り終えられたばかりか、ダービーを前に大きな糧を持ち帰ることができた。

日本選手権競輪に向けてのイメージ・シミュレーション

 トレーニングと実戦の中でコンスタントに成果を積み上げ、ダービーを前に調子に反映されてきている感じがある。レース最終局面での反射的に体が動く感じは去年の絶好調の時期に近い仕上がりだろう。一昨年は3着、昨年は2着。果たして今年は? と自分に期待している。すでに戦う準備はできている。

 北日本には新山響平と新田祐大といった成長し続ける二枚看板がいる。響平は脚力面でも精神面でも急速に強くなっている。最近の響平の脚はマジでヤバい。後ろで度肝を抜かれている。あんなにイケメンであんなに強くて、響平はどこまでの存在になっちまうのよ(笑)。そして、今年は戦法に幅と奥行きを広く深く、もはや『最強の自在屋』と言っていい新田も当然ヤバい存在。この最強のツートップの後ろでマトモに仕事をするにはオレも発展を続けるほかない。ダービーで連係することが楽しみで仕方ない。

北の鉄人と北のイケメン(撮影:北山宏一)

 デカい舞台の前にはいつも「これがラストチャンスになるかもしれない」と覚悟している。でも平塚にはその覚悟以上にワクワク楽しみな気持ちで乗り込ませてもらう。今は優勝後のシャンパンファイトを思い浮かべて、すべて残さず飛ばし切るイメージトレーニングに励んでいる。ガスだけ抜けちゃうなんてことがないようにしなくちゃいけない。

 最後の一滴まで残さず絞り飛ばすつもりだよ! それではみなさんに意気込みを伝えたところで、決戦の湘南バンクにいってきます。みなさんゴールデンウィークの激闘、最高峰のGI戦をとくとお楽しみください。あ、ひとつ報告! パーマかけて乗り込むことにしたから! そちらもシクヨロ! ガハハ!

日本選手権競輪で会いましょう(撮影:北山宏一)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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