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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の近況報告】変わらずに目指している“特別な後輪”がある! 頼もしい仲間たちと漕ぎ出す全日本選抜

2023/02/17 (金) 18:00 51

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、佐藤慎太郎です。先日、2022年のリーディングトレーナー・矢作芳人調教師と「アグー豚のしゃぶしゃぶ」を愉しんできた。トップランナーとして走り続ける矢作さんの話は競輪選手にも落とし込める学びが深い内容であることは言うまでもない。馬になった気持ちで聞き入っちまったよ。

 矢作さんはnetkeirinでも本格予想コラムを連載するほど、まさに心から競輪を愛してくれている人だ。この日も見たいレースがあるとのことでタブレットを持参していた。競輪のレースを見て熱狂する矢作さんを見ながら、オレも将来のためにレース実況の練習をしちまったよ(笑)。この日、矢作さんの競輪愛に触れて、めちゃくちゃ嬉しかった。“超一流に認めてもらいたい”という欲が出てきたし、オレもさらに走りに磨きをかけて競輪と向き合いたい。矢作さん、気合が入りました。また一杯いきましょう! ガハハ!

業界の垣根を超えて意見交換し合える飲み仲間(写真:本人提供)

感覚を研ぎ澄ましていくフェーズ

 それでは出場レースの振り返りを書いていこう。まずは大宮記念からだね。結論から言えば、体の状態云々ではなく、感覚を研ぎ澄ましていく段階に入ったということ。しっかりと計画通りにトレーニングができていたし、練習では好調時と同等のタイムを出している。万全の状態はもう少し先にあるが、徐々に自分のイメージに近い走りができるようになっていた。晋也と連係した二次予選では久しぶりに1着を獲ることもできたしね。

久々の1着に安堵しつつ、スタンドのファンと交流した(撮影:島尻譲)

 ただし、100%の走りまでは“まだまだ”と思ったのも事実。準決勝では響平の捲りが強烈だったことはあるにせよ、自分の中では想定よりも離れた感は否めないし、決勝は中本匠栄に踏み負けている。手ごたえを掴んだとするにはまだ早い。レース状況を見極める能力や見極めた上での体の反応は、実際のレースでしか確認できないからね。焦らずにこのあたりの“実戦感覚”を確かめていく必要性を感じた。

 でも最終的には決勝へ勝ち上がり、優勝争いに名乗りを挙げられたこと。その結果だけを見れば悪いものではないし、次の奈良がより楽しみになった。それにしても大宮のお客さんはすごい声援でオレを後押ししてくれた。あの声援を頂戴してモチベーションが上がらないはずがない。決勝レース後にはすぐにウエイトトレーニングを敢行した。いつも言っているようにお客さんの声がすべての原動力だ。

目指すべき“自分の位置”を再確認

 奈良記念は大宮から少し間隔が空いたこともあって、さらに体を仕上げることができたように思う。良い感触の中でシリーズに入り、最終的には決勝2着。またしてもあと一歩のところで優勝を逃したのは悔しい限り。ただ、ここ最近の流れを思えば、二開催連続で優勝争いに食い込めていることはポジティブに捉えることもできる。計画通りにやるべきことをやれば道は開ける。まだまだ勝負できるということ。

奈良記念決勝ゴールシーン、直線伸びるもわずかに届かず(撮影:島尻譲)

 そんなシリーズになったわけだけど、気持ちの面で上向きになっているというか、北日本の選手たちと連係する中で、本当に心強く頼もしく、頑張らねばと刺激を受けた。全幅の信頼を寄せる小松崎大地は毎回強いレースをしてくれる。グランドスラマー新田祐大は文字通り“規格外”の強さを誇る。前を走る選手が気兼ねなく自由に走れるように、マーク屋のオレは死ぬ気で鍛錬しなくてはならない。

 それにしても準決勝の新田の走りは凄まじかった。あのレースを見ていて、オレは5年ほど前の気持ちを鮮明に思い出した。その時期はさまざまなことに対して考え方を変えて取り組んでいた時期で、「どうあれ、新田の後ろにしっかりと付け切ること」がテーマだった。それができればGIやグランプリで結果が出せると確信していた。新田という目標がいたからこそ、オレは今の位置で走れていると言っても過言ではない。そのために頑張れた。

 アクシデントを乗り越え、通常では考えられない走りで勝利した新田の姿を目の当たりにして、改めて「新田の後ろは自分の位置」と言い切れるように取り組もうと思った。5年前とは状況も違うが、練習で意識するテーマはやはり同じ。オレがタイトル争いをあきらめない限り、何をイメージして、何を目標にして脚を磨くのかは明白になった。

5年前を思い出し、気持ちを上昇気流に乗せた奈良記念(撮影:島尻譲)

選手だからこその驚き

 新田のレースを見たオレの心理をつらつらと書いたけど、ホントにすげえことなのよ。お客さんからしても驚きのあるレースだったと思うけど、オレたち選手の方がわかることもあって、度肝抜かれたわけ。

 少し選手目線で解説すると、レース中に接触のアクシデントが起こると身体の防衛本能が働いて一回全身が硬直するのよ。オレらはその現象をそのまま「固まる」って表現している(笑)。接触だけではなく、落車を避ける時なんかも固まるし、そこからは通常通りに走ることすら難しい。

 その「固まる」感覚を知っている分、すぐに頭を切り替えて捲っていった新田の走りは圧巻としか表現できないし、「脚力がある」だけでは説明がつかん。もちろん脚力がないと1着までは無理なんだけど、メンタルも計り知れない。人体の反射とか硬直とかの現象も抑え込むような“何か”が新田にはあるのだと思う。いやあ、すごかった。

接触のアクシデントにより金網付近まで上がった新田選手、最後方から捲って1着の衝撃(撮影:島尻譲)

得意な高知競輪! いざ全日本選抜へ

 今年は高知で全日本選抜が開催される。20年前にオレが全日本選抜を優勝した時も高知だった。それだけでも良いイメージがあるんだけど、記念を優勝していたり、優勝こそ逃しても納得のいく走りで準優勝だったり、とにかく相性抜群のバンクなんだよね。顕著に成績に表れているから、何か理由もありそうだけど、自分ではその理由が良くわかっていない。

 “何で相性が良いのかわかってない”って部分がいいのだと思うし、深く根拠は探らない。高知に行けばポジティブな気持ちが充満し、リラックスしてレースを走れる。結果として体の反応も良くなる。どんな戦いができるのか、今から楽しみにしている。当然狙っている。

相性抜群の高知で優勝を狙う(撮影:島尻譲)

 そして、北日本の仲間たちとの連係にも気合が入る。今回のコラムで書いてきたように、オレは一流の自力型と乗り込むことができる。今まで「逃げます」の印象だった響平は大宮記念で捲りの武器を繰り出した。あの捲りは「逃げていたら“たまたま”中団に入ったから捲った」わけではなく、完全に狙い澄ました一撃。戦法の幅を広げ、今後も発展していくはず。

 戦法の幅を広げているといえば新田も同様なのは言うまでもない。そして誰より信頼できる伝説の男・小松崎大地もいる。マーク屋として自分が自分をどれだけ高めてシリーズに臨めるか。優勝した20年前と今を比べれば、今のオレの方が断然強い。その自信とともに頼もしい仲間たちと2023年最初のGIで暴れてくる。そのために明日も明後日も佐藤慎太郎の肉体を限界まで追い込むぜよ!

【公式HP・SNSはコチラ】
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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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