閉じる
前田睦生の感情移入

【UCIトラックネーションズカップ】橋本英也の金メダルの裏に内野艶和の催眠術があった

2023/02/28 (火) 12:00 13

催眠術師・ツヤカ

パリ五輪への道を切り開く

 2月23〜26日にインドネシアのジャカルタで開かれた「ネーションズカップ第1戦」で、日本代表は男子エリミネーションの橋本英也(29歳・チームブリヂストンサイクリング/JPCU岐阜)の金メダル、女子ケイリンでは佐藤水菜(24歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU神奈川)の金メダル、梅川風子(31歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU東京)の銅メダル。そして太田海也(23・チーム楽天Kドリームス/JPCU岡山)が男子スプリントの銀メダルという結果を出した。

 男子エリミネーションはエイヤが金メダルで、窪木一茂(33歳・チームブリヂストンサイクリング/JPCU福島)が4位。2人は中長距離の日本代表として活躍をした後、競輪選手になり、また同じように、いやそれまで以上の活躍を世界で披露している。競輪選手であること、自転車競技の競技者であること、自転車人であることが織り交ざる。「自転車を通じて人生をいいものにしようよ」という原点がある。

 衝撃的な勝ちっぷりを披露したエイヤは「最後の2人になった時に、イケる!と思いました」。そして世界を興奮させるゴールシーンへと突入する。トップクラスの国際大会のゴールで愛くるしいピースポーズを爆発、世界に「ハッピー」を届けた。

 誰がこんなこと、できる?

勝利をイメージすることの重要さ

あれっオレのメダルどこいった?

 誰もを笑顔にする最高のシーンが生まれたのは「ツヤちゃんのおかげ」だったという。
「ツヤちゃん」とは内野艶和(21歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU福岡)のことで、エイヤがレース前に「ゴールの時のポーズはどうしたらいい?」と尋ねたところ、右手を目にかざすポーズを授けたという。

「イメージすることは大事」

 冗談半分、茶目っ気たっぷりの話でもあるが、裏には「勝利をイメージすることって大事だね」(エイヤ)と、真面目に思う部分もあったという。内野がそこまで読んでいたかは怪しいが、図らずもエイヤは「ツヤちゃんの催眠術」にかかっていたのだ。

 内野自身もいろんな収穫があったとのことで、これからの女子中距離を盛り上げ、“ツヤカスマイル”を世界に届けていく。

スーパー高校生

垣田真穂(左)さんと池田瑞紀さん

 垣田真穂さんと池田瑞紀さんの高校生2人がエリートの大会に初参戦した。女子チームパシュートの日本記録更新に大いに貢献するなど、計り知れないポテンシャルを見せつけた。いろんな経験をしつつ、帰国する時は女子マディソンで落車をしてしまった池田さんを垣田さんが支えながらでだいぶ痛そうだったものの、2人の決意は「パリ五輪の出場権を取れるように!」と明らかだった。

 若い素晴らしいエネルギーが沸き起こっていて、パリ五輪が楽しみになるばかりだった。2人とも福岡県出身で、普通に話せばただかわいらしさだけが目を引いた。なんとしても、目の前で走る姿を見たいと思った。

 活躍できた選手の他、悔しい思いを選手も多くいた。勝負の世界、これはやむを得ない。山崎賢人(30歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU)長崎、寺崎浩平(29歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU福井)、中野慎詞(23歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU青森)は背中から怖いオーラを放っていた。太田とは帰国のタイミングは一緒ではなかったので「カイヤの銀メダルは本当にすごい…」と称賛しつつも、みなが「オレも…」「オレが…」「オレこそ」の顔つきをしていた。

 すぐにエジプトで「ネーションズカップ第2戦」があるので、楽しみにしよう。

男子チームスプリントも収穫アリ!

悔しそうな中野慎詞

 チームスプリントは長迫吉拓(29歳・チームブリヂストンサイクリング)ー太田ー小原佑太(26歳・チーム楽天Kドリームス/JPCU青森)の順で日本記録を更新した。42秒742は、それまでの雨谷一樹ー新田祐大ー深谷知広が出した42秒790の記録を上回るもので、先輩たちへの恩返しはこうした記録更新と思えば、先輩たちもうれしかったと思う。

 成田空港に着いた時にはヘロヘロだった小原だが、チームスプリントについて聞くと笑顔になり「もっとイケる」と断言した。3-4位決定戦でフランスに敗れ、メダル獲得はならなかったが「海也が滑って、オレがそれを避けて、のタイム(42秒979)」と伸びしろしかないようだ。

 42秒台をコンスタントに出せれば、出場枠の獲得は見える。「あとは、世界選で出すこと、ですね」とギラついていた小原の瞳は頼もしかった。

 ナショナルチームで戦っている選手たちの姿をもっと知ってほしい。まずは5月12〜15日に行われる「全日本選手権」が有観客で、多くのファンを呼んで開催できることを祈る。

荷物運びがかわいい梅川風子


Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のTwitterはこちら

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

前田睦生の感情移入

前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

閉じる

前田睦生コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票