2023/02/22 (水) 12:00 35
2月23〜26日に高知競輪場で「第38回全日本選抜競輪(GI)」が開催される。中四国地区でのビッグレースなので、やはりこの2人に注目が集まる。松浦悠士(32歳・広島=98期)と清水裕友(28歳・山口=105期)のコンビだ。静岡記念(たちあおい賞争奪戦)で久しぶりにタッグを組んだわけだが…やはりワクワク感がすごかった。
この時の連係では清水が2回とも前を回った。躍動的な早仕掛けはヒロトらしさ全開で、ユウジの心に火を点けるものがあったと思う。今回の前後や中四国で、どうまとまれるかもあるが、この2人が燃えていることがシリーズを大いに盛り上げること間違いなしだ。
S班から陥落した年になる清水。しかし、最初のGIで赤いパンツの奪還、復権を図る。2018年9月の当地「共同通信社杯(GII)」では準優勝。高知の500バンクは広〜い感じがあるのだが、今のヒロトには小さいのかもしれない。
モヤモヤはすべてここで一気に飲み干す。
無論、現状の輪界の頂点にいるのは脇本雄太(33歳・福井=94期)だ。古性優作(32歳・大阪=100期)と2人。また復活の三谷竜生(35歳・奈良=101期)と稲川翔(38歳・大阪=90期)、山田久徳(35歳・京都=93期)と布陣は熱い。脇本としては優勝して、グランドスラム達成へ「競輪祭あと一つ」とすることが狙い。古性は連覇をかけての戦いだ。
近畿の他の強豪勢も「近畿はワッキーと古性だけ」と言われるのが憤懣(ふんまん)やるかたないところ。「近畿はすげえ」とファンをうならせるつもりだ。
気になる脇本の身体だが、残念ではあったが奈良記念(春日賞争覇戦)の初日のレース後に欠場の判断をしたことで今回には間に合うと思う。KEIRINグランプリ優勝の後から、「責任があるので」とGIIIを欠場せず走り抜く、と明言していた。身体は悲鳴をまた上げてしまったものの、歩いている道に迷いはない。
今年、グランプリVを含むゴールデンスラム達成なるか…の大事なシリーズになる。
九州と中部はやや上位戦で劣勢を強いられている。ただ、南関は深谷知広(33歳・静岡=96期)と郡司浩平(32歳・神奈川=99期)が完全発火。関東も昨年できなかった大国作りへとメンバーは揃っている。そして北日本はS班4人を抱え、一年を通して「北で」を見せ付ける。
中でも注目は佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)。ただ一度のGI優勝が2003年11月の高知全日本選抜だ。それから20年。20年後もこの位置にいることの衝撃を、“4日間”披露する。単騎でガムシャラに前に前に攻めて掴んだ優勝から、長い時を経て…。
20年のすごさをベテランが魅せ、また若手期待は町田太我(22歳・広島=117期)と犬伏湧也(27歳・徳島=119期)ら。特に町田は昨年一年間、苦しんだ。静岡でつかんだ復活の予兆を500バンクで爆発させる。
今年、大いに見つめてほしいのが瓜生崇智(28歳・熊本=109期)だ。静岡記念の準決は守澤太志(37歳・秋田=96期)との競りを選んだ。そこで競った以上、ここは競る、ここは競らないの中途半端は許されない。
競るべきところは競る。多くの番手選手が挑んできた道。これは肉体面以上に精神面で苦しいと誰もが言う。それでも、競輪における番手の意味は古今東西変わらない。その価値に挑む戦いがある。
瓜生は過去の偉大なマーク選手を追いかけるだけではない。“瓜生崇智”という一つの輝く星になるために、この道を選んだ。
井上茂徳(引退=41期)に憧れた加倉正義(51歳・福岡=68期)がいたり、飯嶋則之(44歳・栃木=81期)や師匠である木村泰丈(引退=65期)に憧れた芦澤大輔(40歳・茨城=90期)がいたり…。加倉も芦澤も、憧れの存在を超える戦いに挑み、自身を磨き上げた。
自力全盛、2段駆けが主流の今、この競輪界にまた大事な道を示す。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。