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前田睦生の感情移入

【競輪道】存在する? しない? 佐藤慎太郎が違和感を感じた批判…

アプリ限定 2023/02/11 (土) 12:00 84

“競輪伝道師”シンタロウ

新規ファンに伝えないといけないもの

 先日、“競輪伝道師”佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)が新規ファンの増加を喜ぶとともに、「ちょっと違う」と感じることがあると話していた。確かに競輪は複雑な要素もあり、わかりづらい、見えづらいものがあるのは事実だ。ピントがズレた批判を目にする機会があったという。

 “勝った選手より負けた選手の方が称賛される”といった事態が普通にある。それは競輪の素晴らしさの側面なので「よくわからん」「理解できない」で通り過ぎずに、そこを知ることで競輪に深くのめり込んでほしいというのが当方の願いだ。

 以前はスポーツ新聞の紙面や専門紙を通じてが中心だったが、今はインターネットを通じても加わり多くの情報が得られる。中には選手の実像が伝わっていないものもあるかもしれない。それがシンタロウが感じた違和感につながっていると思う。

 大事なのはメディアの存在だ。

心がけていること

競輪を考えることも…競輪

 私は選手もファンも記者も関係者も同じ地平に立っていて、レースを通し、いろんなものを共有することが大事だと思っている。記者の役割は、選手に直接触れることができるので、『ファンには見えていない部分を伝えること』になる。

 あるレースで誰かが勝った、負けた、うれしい、悲しい、良かった、悔しい…。様々なものがレースの度に生まれるわけだが、そこにどんな意味があったのかを整理して届けることが求められている。

 シンタロウが他地区の選手について「節操がない」という批判があったと聞く。この点に関しては、他地区の自力型を追い込み選手のトップであるシンタロウがマークする重み、が抜け落ちている。シンタロウがやってきた実績や考え方が、地区を越えて共有され、選手同士で高め合う。

 その良さを伝えるのが記者の仕事で、できる限りそれぞれの思いや考えを記事にすることで、ファンにわかるものにできればと思う。

明文化された“競輪道”はない

田中誠は古風なレーサー

 難解なのは“競輪道”という言葉があるからでもある。

 例えば、目標がなく競りに行く場合、不利とされる外で競るのが、正しい挑み方。これは、基礎的な選手間の共通見解だ。だが、そうしないといけないという決まりはない。

 競技規則に従っていれば、戦い方は問われないのだ。「競輪道はマイルールみたいなもの」。こう話したのは田中誠(39歳・福岡=89期)だ。この人ははっきりと“競輪道”を大事にしている。古風なタイプで、ジカで勝負する時はきっちりコメントを出してから。番手や3番手を回る時には、その仕事に愚直に徹する。

 そして、それをやらない選手を認めない。ラインの仕事をまっとうせず、自分勝手な立ち回りは許さない。こうした“競輪道”が反してはいけないルールであればわかりやすいが、競輪が持っている、ある意味で最大の問題点といえる「そんなものはない」が現実なのだ。

レースの度にファンに伝えるしかない

競輪を盛り上げたい一心

 これでは「じゃあやっぱりわからん」で終わりそうだが、答えを出すことは厳密に言って必要ないのが競輪との向き合い方だ。なぜか。競輪は連綿として続く物語。1個、また1個のレースの度にいろんなことを考え、思うことが、競輪を楽しむことだ。

 レースを見て怒ることも、そのひとつ。憤るようなことがあっても、「どうしてそんな走りが生まれたのか」を考え、次のレースへの糧にする。無間地獄を楽しむのが競輪の究極。“競輪道”があっても、みながお行儀よく走っていたらつまらないという面も持つ。荒くれ者が、スーパーゲリラでかき回すレースもまた面白さを生む。

 ひっかき回すような書き方になってしまったが、はっきり書く。

 “競輪道”はある。

 一定の基礎となる競輪競走の暗黙の戦い方があるからこそ、様々なものが生まれる。こうした時はこうこうという作法があるから、戦いに味わいが生まれる。競輪の戦い方にはこういうものがあって、選手は大事にしてきたんだ、というものを細々取り上げ、ファンがそれを知ることで、今、新規ファンが増えている時に、長く競輪と付き合ってもらえるように…。

 記者としての仕事と向き合いたい。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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