2023/02/05 (日) 12:00 7
現役時代はKEIRINグランプリを優勝するなどトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は奈良競輪場で開催されている春日賞争覇戦の決勝レース展望です。
SS班が5人参戦した【春日賞争覇戦】でしたが、初日の特選で2着となった脇本選手が腰痛で2日目から欠場。2日目の二次予選では大会連覇を狙っていた平原選手が落車、古性選手は失格と、準決勝を前に3名がいなくなったのは残念です。
準決勝でも嘉永選手のブロックで、新田選手がフェンスに激突しそうな場面もありました。これは奈良競輪場のバンクの難しさもあるのではないかと思います。見なし直線が特に短い333バンクだけに、どのラインも先行意欲が強くなるだけでなく、仕掛けるタイミングも難しくなります。
それでも新田選手は体勢を立て直しただけでなく、9番手から捲っての勝利は見事でした。佐藤選手も勝ち上がってきたことで、決勝はSS班が2人残ったのは良かったと思います。
決勝の並びは北日本ラインが阿部選手-新田選手-佐藤選手。近畿ラインが中西選手-山田選手-三谷選手-栗山選手。そして西日本ラインで皿屋選手-柏野選手となりました。
この並びで注目したいのは、準決勝の並びとは前後を変えてきた、阿部選手と新田選手の北日本ライン。そして中西選手の後ろが地元の三谷選手ではなく、山田選手となっている近畿ラインです。
まず、北日本ラインですが、この並びとなったからには、前を任せられた阿部選手は先行も辞さない覚悟で、後の2人を引っ張っていくはずです。
一方の近畿ラインですが、地元かつグランプリホルダーでもある三谷選手よりも、機動力のある山田選手を番手に置いた方が、レースがしやすいとの意図があったのかもしれません。
この並びだと、中西選手がある程度行ってくれたのならば、そこから山田選手も番手捲りがしやすくなります。その結果として、三谷選手に優勝のチャンスが巡ってくる可能性は高くなります。
阿部選手、中西選手ともに後ろが重くなっただけに、激しい先行争いを繰り広げていくと見ていますが、今大会の動きでは中西選手の方に分がありそうです。
もし、阿部選手が早めに仕掛けたとしても、すぐに中西選手は巻き返していくと思いますし、この展開となれば近畿ラインでの優勝は濃厚となってきます。
勿論、阿部選手が一気に行ってしまうようだと、番手捲りをしてくる新田選手-佐藤選手のワンツーフィニッシュとなるでしょう。 しかしながら、阿部選手と中西選手がある程度までやり合ってしまうようだと、第三のラインである皿屋選手-柏野選手の出番となります。
今大会の皿屋選手は初日の1レースを1番車で勝利しただけでなく、準決勝でも佐藤選手とのゴール前勝負を制するなど、調子の良さが目を引いています。
その一方で二次予選のようにレースの組み立てが上手くいかなかったり、気持ちの優しさが勝ちに繋がらないレースも見られています。タテ脚の鋭さは本物だけに、一気に突き抜けたのならば、高配当も演出してくれるのかもしれません。
果たしてレースの主導権を握るのは阿部選手なのか、中西選手なのか? もしくは皿屋選手に願っても無い展開となるのか? 車券もその3つを想定しながら予想を組み立てていこうと思います。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。