2024/12/04 (水) 12:00 31
松山競輪場で大阪・関西万博協賛「開設75周年記念 金亀杯争覇戦(GIII)」が12月6〜9日に開催される。11月小倉競輪祭(GI)決勝で2着、準優勝だった犬伏湧也(29歳・徳島=119期)はどんな形相でこのシリーズを戦うだろうか。
競輪祭決勝は、突っ張るかイン粘りか、という狙いだったと犬伏ラインの3人は振り返っている。一番の焦点は、近畿を全員出したら優勝は脇本雄太(35歳・福井=94期)で決まり、というものだ。強い脇本の優勝チャンスをなくすことが、自分たちの優勝可能性を上げる。
勝負事の鉄則として松浦悠士(34歳・広島=98期)と荒井崇博(46歳・長崎=82期)の頭にはそれがあった。犬伏としてはまずそれをできなかったことはミスにあたる。その後、打鐘で叩きに行くタイミングもあったが、待った。脇本の勝機を消す、という攻めができなかったことは、ラインとしてはマイナスになった。
だが、これも相手のあること。その動きを犬伏にさせないくらい力を消耗しても、寺崎浩平(30歳・福井=117期)は近畿ラインで出切るように攻めた。脇本が長い距離を踏まざるを得ない形に持ち込んだことは、自分たちの勝機を完全になくさない形には踏ん張れたと言えるが、いかんせんワッキーはワッキーだった。
激烈に強かった。
犬伏の特徴としては、そもそもの力が強いため、力で勝つ、というレースが多い。相手はどうであれ、自分の力を出し切れれば勝てる、というところからスタートしている。だが、それではラインが生きないケースがある。上位の選手たちはさすがに手強い。
中四国地区にお手本になる選手がいる。清水裕友(30歳・山口=105期)だ。清水は自分の仕掛けられるポイントが来れば、逃さない。攻めて自分のレースに持ち込むことでラインを生かし、勝機を作り出す。相手からすれば、「清水は必ず来るから、手強い」になる。犬伏がこのヒロトっぽさ、も備えるようになれば、壁を破れると思う。松山では、そんな意識での攻めを期待したい。
地元の静岡グランプリ出場がかなわなかった深谷知広(34歳・静岡=96期)。競輪祭準決の落車で左肩の亜脱臼などのケガを負い、帰り支度をしている時の顔色は青かった。無論、誰にもわかりえないほどの心の痛手もあったと思う。とても、声をかけられなかった…。
しばらく休むんだろうな、と思っていたし、少し休んでほしいとさえ思っていた。それでも、こうして深谷知広の名前がシリーズにあると、勝手に落ち込んでばかりいるのではなく、自分も頑張らなければと強く感じさせられる。
深谷にはそういう力がある。最後の挑戦が落車という形で終わったが、その時点から深谷の物語はまた始まっている。それを、見せてくれる。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。