2023/02/02 (木) 12:00 9
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は奈良競輪「春日賞争覇戦(GIII)」に出場する三谷竜生選手を解説する。
⚫︎三谷竜生
公式プロフィールでは身長168cm、体重77kg。S級上位クラスだと身長は若干低めか。競輪は選手間の身長差によってそこまでハンデは生まれないが、手足は長い方が良い。てこの原理で動く自転車は、力点(力を加える場所)と支点(支えとなる場所)の距離が離れているほど、効率よく大きな力を発生させられるからだ。
三谷選手は手足が長いほうとはいえないものの、KEIRINグランプリをはじめGIタイトルを制した。5年前、脇本雄太選手の番手と言えば三谷選手だった。自力基調ながらも、横の捌きにも対応し、地脚をベースとしたスタミナ戦が最も得意。当時は、脇本選手の番手からズバズバ差し込み、タイトルを奪取したものだ。
だが、そんな時間は長くは続かなかった。競輪界の頂点を極めた三谷選手だが、そこから不調の谷に迷い込んだのだ。グレードレースどころか、F1戦でも勝てない。どこかチグハグなレースが続いて存在感も薄れていった。今では脇本選手の番手といえば古性優作選手だろう。
だが、そんな時でも三谷選手はブレない強気で自力戦を続けたのだ。不調時はあっさり捲られていた先行スタイルが、徐々に捲られなくなっていき、逃げ切りも増えてきた。三谷選手の持ち味であるスピードや地脚が蘇り、気付けば競走得点は110点を超えた。
時は来た。三谷選手の地元である春日賞争覇戦で、三谷選手は完全復活の狼煙を上げるのだ。特に直線の短い春日賞争覇戦で、脇本選手を差し切るのは困難だが、逆に結果を出せば三谷選手にとって存在感をアピールできる。
現在、近畿で、脇本選手の捲りに毎回キッチリ付け切れるのは古性選手だけだ。差し切らずともしっかりと付け切れれば、三谷選手の評価は間違いなく上がる。彼にとってこの4日間は、1着を狙う重責とは別の緊張感に包まれるはずだ。グランプリレーサーの復活を刮目せよ。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
2023年も脇本選手の勢いは止まらない。何度も連携している古性選手とのコンビに対抗出来るラインは見当たらない。
グランドスラマー新田祐大選手と佐藤慎太郎選手のSS級コンビが対抗格だが、やはり厳しいか。素直に脇本選手のレースを狙うのが賢者だ。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。