2021/04/06 (火) 15:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は松阪競輪場で開催されているウィナーズカップの決勝レース展望です。
ベイサイドナイトドリームが行われる四日市競輪場は、400バンクで走りやすく、あまり重くも感じなかった一方で、直線が長く感じた印象があります。また、海沿いということもあるのか、時として風が強く吹く日もありました。選手時代は窓の外から競輪場の隣にある煙突からの煙を見て、「真横に煙が流れているから、今日は風が強いな」といった判断材料にもしていました。
準決勝の3レースが終わった時に、中四国の並びはどうなるのだろうかと気になっていましたが、予想していた通りに松浦選手の後ろには準決勝と同じく原田選手が付け、その後ろには香川選手-福島選手と4人が並びました。
準決勝と同じ並びとなったのが、平原選手と諸橋選手の関東コンビ。3日間を通して先行している深谷選手の後ろには、守澤選手が付けることになりました。決勝では唯一の地元選手となった浅井選手は、初日の特選と同じく、単騎でのレースを選択しています。
登録地は秋田の守澤選手ですが、現在は冬季移動で、深谷選手の登録地である静岡県の競輪学校で練習を行っています。また、守澤選手は神奈川の郡司選手とも幾度となく連携をしているように、以前から北日本と南関東は関係が深く、この2人が並んだのも納得がいくところです。
中四国4人の先頭を任された松浦選手は、深谷選手や平原選手を相手に、捨て身の先行をすることは無いと見ています。松浦選手は初日の特選のレースでも前受けをして、深谷選手の先行を中段から捲っていきましたが、決勝はその時よりもラインも長くなりましたし、同じようなレースを想定しているのではないのでしょうか。
深谷選手ですが、後ろを任せた守澤選手への信頼度も高いと思われるだけに、ほぼ間違いなく先行してくるはずです。その際、3番手を平原選手と浅井選手のどちらが取るかなのですが、ラインのある平原選手が一度インを切って、深谷選手を迎え入れそうです。そうなると浅井選手は5番手、松浦選手は6番手から早め、あるいは遅めの仕掛けになっていくと見ています。
ウィナーズカップでは、それほど調子が良くないようにも見えた松浦選手ですが、ただ、最終日は思い切ったレースをしたことが、ラインの清水選手の勝利を導きました。体調面ではそれほど変わりは無いと思いますが、この勢いと前向きな気持ちが、準決勝までのレースにも表れていると思います。
ただ、松浦選手に先行させるわけにはいかないと見た深谷選手は、早めに仕掛けてくると見ています。その後ろにいる平原選手や浅井選手も早めに捲っていくとするのなら、松浦選手と言えども、6番手の位置取りから前を捉え切るのは大変なはずです。
となると、前に積極的なレースをしてくれそうな深谷選手を置き、後ろの松浦選手よりも早く仕掛けられそうな平原選手が、この決勝では有利となるのではと見ています。
平原選手は準決勝でも強さだけでなく、前を取りながらすぐに引いて、中段を取りに行くという、上手さのあるレースを見せてくれました。これは天性のレースセンスだと思いますし、切り返した時のスピードも含めてS級S班らしい総合点の高さだと思いました。あとは元々単騎の競走が得意な、浅井選手の動きにも注目です。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。