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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の所信表明】2023年、己に打ち勝ち“定説”を覆す!

2023/01/17 (火) 18:00 52

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、本年もよろしくお願いします。今回は2023年の初コラムということで、バシッと所信表明しようと思う。昨年は「一瞬一瞬に己のすべてを懸け、最大出力を放つ」と表明したが、今年も基本スタンスは何ら変わらない。だが、そこにプラスしたいことがある。

鉄人・佐藤慎太郎の2023年がスタート(photo by Kenji Onose)

時代の変化を感じながら

 本題に入る前に出場したレースを振り返る。グランプリは7着という残念な結果だったが、現状での仕上がりを考えれば、つべこべ言わず受け止めざるを得ない。

 レースはご存じの通り難解な展開となったが、その内容どうこうではなく、「新田の後ろを堂々と主張できなかったこと」からオレは向き合わなくてはならない。グランプリは期末テストのようなもの。レースだけではなく、そこに至るまでの道に反省点がある。しっかりと自己分析をして、ともに戦った北日本の仲間たちと次に向かっていく。

KEIRINグランプリ2022の北日本ライン(撮影:島尻譲)

 それにしてもグランプリに来場してくれたお客さんの熱量は凄まじかった。ここのところ「競輪が盛り上がってきている」と肌で感じているが、平塚では改めて感動した。敢闘門から出て行くときに「みんながんばれ!」と声が聞こえてきたり、耳馴染みのある唄が聴こえてきたり、「応援するぜ」という意思をビンビンに届けてもらった。その中に「新しい競輪ファン」の存在がいるってことも感じている。

 時代の変化を感じるとき、ベテランのオレは身が引き締まる思いがある。一人でも多くの人に競輪の熱さを見せたい。感動してもらいたい。だから頑張るしかない。

敢闘門から出て行く際の大きな歓声は地響きのようだった(撮影:島尻譲)

“ツキ”のありなし

 グランプリが終わり、年が明け、オレは立川記念に出場した。落車続きでトレーニングができず悔しい思いをした2022年後半だったり、結果を残せなかったグランプリだったり、とにかく払拭したいことばかりだった。2023年のグランプリ開催地である立川競輪で優勝して、スカッと最高のイメージを得たいと考えていた。どうにか決勝まで勝ち上がり、オレは新田と連係。道中はお互いにやるべき仕事をやり、新田とゴール勝負できるイメージも鮮明に描けた。

1番車(白)新田選手と5番車(黄)慎太郎選手は南関ライン分断の策、激しいバトルを展開(撮影:島尻譲)

 しかし後輪がブッ壊れてしまい、最終直線に入る前に万事休す。悔しさに悔しさを上塗りするような結果になってしまった。反射神経的に「車体故障とは“ツキ”がなかった…」と考えてしまった自分にも腹が立つ。このケースは“ツキ”のありなしで片づけることではない。この思考は弱みになるので考え直す。

 以前、「好運はある程度までは作れるもの」と綴ったことがある。その逆も然りで、「不運もある程度までは自分が引き寄せるもの」だと思う。やるべきことはやったレースだったが、絶好調のときと比べて心の余裕はあったか? 細かいことまで神経が行き届いていたか? は疑問だ。何より新田が前で頑張り優勝しているわけで、オレは「マーク屋」だ。最低でも2着にはならないといけないレースであり、お客さんに申し訳なかった。2023年の一発目の立川記念は悔しさ五万倍で帰路についた。

「1着選手のマーク屋はゴール勝負できないとね」と本人談(撮影:島尻譲)

落車が引き金になり下降していくベテラン

 そんな悔しさと向き合いながら日々のトレーニングに励んでいるわけだけど、冷静に自己分析してみれば「落車の影響でトレーニングできなかった時期の反動」が如実に出ている時期だとわかる。タイムは元に戻ってきているが、筋肉や神経の反応が好調時と異なるような違和感がある。体と脳がマッチしていない。

『落車による怪我、怪我による成績不振、成績不振によるモチベーション低下、モチベーション低下によるトレーニング不足。トレーニング不足による弱体化ってサイクルかな? 慎太郎君、今ここが限界のようだね。もうさすがに気力でカバーできないでしょう』という声が内面から聞こえてくる。冗談じゃない。

 偉大な先輩たちの“ベテラン期”の足跡を辿れば、落車・怪我から調子を崩していくケースは良くあることだし、“定説”とも言えるのかもしれない。その現実を知っているから、オレの中の『ネガティブ慎太郎』も最近やたら威勢がいい時がありやがる。落車をきっかけに下降していくことが定説ならば、今年はその定説を覆していくような日々を送りたいと思う。

「限界? 気のせいだよ」はオレのポリシーの核にある言葉だ。ポリシーの核と言うくらいだから「体VS脳」の対決では絶対に「脳」が勝たなくてはならない。極限まで体を痛めつけて、不安や弱気、悔しさや焦りといったネガティブ精神から定説まで、すべてなぎ倒して進むつもり。新しいことを試すよりも基本に立ち返る。才能のないオレにはトレーニングしかない。今年、佐藤慎太郎を徹底的に追い込み、年を重ねて効きの良くなった“体のブレーキ”を脳でブッ壊す。

自分にだけは負けたくない(撮影:島尻譲)

己に打ち勝ち“定説”を覆す 〜今年の抱負〜

 ということで今年は定説を覆し、年末の立川グランプリの舞台を目指していく。だから目標は「GI優勝」に他ならない。昨年グランプリを一緒に戦った響平、新田、守澤をはじめ、オレには強力な仲間兼ライバルがたくさんいる。北日本は強い。

 己に打ち勝ち、GI戦で勝機をものにしたい。この一点を信じて疑わず、物事に一喜一憂せず、目の前にある自分に課したことをひとつひとつクリアしていく。定説を覆せるのか、定説に飲み込まれるのか。オレ自身めちゃくちゃ楽しみだわ! とりあえずバイク(※)をブッ壊すくらいにモガいてくわ! ガハハ!

(※)慎太郎選手は練習のために購入した誘導用バイクと「人体VS機械」の“耐久勝負”をしているとのこと。「自分とバイクのどちらが先に壊れるか? 両方徹底的に酷使しよう」と練習仲間の選手たちと話をしているそうです。稀にバイクのギヤがスムーズに切り替わらないこともあるそうで、「今のところ五分五分の勝負ができている。今日乗ったら絶好調だったけど(笑)。かなりの強敵だけど負けるつもりはない」とのことでした。

2023年も暴れ回る(撮影:島尻譲)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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