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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の約束】グランプリは揺るぎない自信を胸に戦う! 最近、素晴らしい“競輪道”を見たことだしな

2022/12/14 (水) 18:00 47

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、いつも応援ありがとうございます。すでに120%の気合とともに練習に励んでいる佐藤慎太郎です。まず本題に入る前に書き出しからハッキリさせておくわ。今、グランプリまでに身体を戻していける感覚がある。今日も納得の練習ができたし、年末までの日数を逆算してみても状態に不安がない。ここ最近は怪我をして心配ばかりかけていたから、ファンのみなさんにこの点は最初に伝えておきたい。すごく充実している。

療養明け、小倉競輪祭に出場(写真:公財JKA提供)

“競輪道”とは何か

 さて、それでは“競輪道”の話へ。この言葉は、選手や記者さん、ファンのみなさんが歴史とともに創り出してきた言葉だから当然定義することは難しいもの。それぞれの意味があり、それぞれの捉え方がある。ただ、オレなりに解説するなら“武士道”みたいな意味合いかな。思想とか道徳とか、心構えとか。そのあたりを表している言葉に違いない。競輪道を説明しようとすれば、レースの事例とともに分厚い本を執筆しなくてはならないだろうね。

 ラインを形成して走る競輪のレースには選手同士の“持ちつ持たれつ”があり、暗黙の了解が存在する。それは「人情」と表現できるものもあれば、「絆」と表現できるものもあれば、「戦略」と表現すべきものまでさまざまだ。ひとつ間違いなく言えるのは「自己犠牲の精神」が思想の中心にあるということ。「人のために、仲間のために」が競輪には存在する。これがキーポイントだね。

 もちろん、それだけが競輪道ではないし、そもそも「自己犠牲の精神」なんて選手によってそれぞれ大きさも違えばニュアンスだって違う。各自が心の中に持っているわけだし、正解は無数にあるだろうな。ただ、先日の競輪祭決勝、オレはひとつの競輪道を目の当たりにしたと思ってるわけよ。

競輪祭決勝の北日本ライン

競輪祭決勝、新田祐大-新山響平-守澤太志-成田和也で結束(撮影:島尻譲)

 響平とはオレも何度も連係してきた。ラインのために風を切ってきた響平を知っている。だから響平の歓喜の瞬間はうれしかった。響平、おめでとうな。今年の競輪祭、主役は新山響平だった。しかし、オレからすれば、このレースはダブル主演であり、もう一人主役がいる。グランドスラマー新田祐大は輪界を代表するエース格だ。直前のGIを獲ってグランドスラムを達成し、その後1発目のGI決勝で後輩の前で駆けたこと。あれはなかなかできる芸当じゃない。メンタル的にすげえ話だと思う。

 しかも主役の2人だけがすげえだけじゃないってことにもストーリーに深みがある。3番手4番手には最優秀助演賞までいるわけ。後方からの攻めを止めに行く守澤太志、自分のグランプリ権利争いのクライマックスを迎えながらも4番手を決断した成田和也。「北日本すげえ!」って、見ていて嬉しくなっちまったよ。ここにそれぞれの“競輪道”を見たし、それは本当に素敵で自分の地元地区の躍動に心打たれたよね。

北日本の猛者たちによる新方式の胴上げ(撮影:島尻譲)

発走台では決着がついている

 話を変えて、オレ自身の振り返りについて書いていこう。競輪祭は落車のダメージ云々ではなく、満足できる練習ができていないことから脚の絶対値が落ちていた。いざ走ってみて自己分析してみると好調時が100とするなら60くらいのデキだった気がする。

 気合でカバーしようと試みていたが、残念ながらどうしようもできない感覚もあった。少なからず車券に貢献できたこと、怪我やアクシデントなく完走できたこと、これは最近の状況を考えれば安心すべきポイントでもあるのかもしれないが、いざ出場すると当たり前にできてたことができないのってすごく悔しいんだよね。

初日2着も脚力が落ちていることを痛感した(撮影:島尻譲)

 万全の状態で「やれることはすべてやった」って自信がなければ、戦いはプラスに向いていかないと痛感。競輪祭で改めて練習の重みを認識した。

 発走台に立った時、レースの結果は当然出ていない。ただ、この発走台に着いた時に、すでに一つの決着はついている。自分が自分の走りをするためにどれだけ準備ができたのか。どれだけやり切った毎日を積み重ねたか。自分との勝負に勝った上で発走台に立ち、はじめてスタートラインがあるってこと。

 GIともなれば、なおのことだ。レースの中で即断即決し、体も俊敏に反応させていく必要があり、それらは“感覚的に繰り出せるもの”であり、もはや神経レベルの話になる。「やれることをすべてやってきた」って自信こそ、その神経を活発に働かせる唯一の鍵となる、とオレは思ってる。

絶対的な自信とともにスタートを切る必要がある(撮影:島尻譲)

 競輪祭は悔しかったが、すぐに頭を切り替えた。次に発走台に立つときは絶対にやり切った状態でいようと思った。次がグランプリだからってわけじゃない。常にやり切っていたい。悔しがってる時間すらねえわけ。

 聞くところによれば、オレにはグランプリ最年長優勝がかかっているらしいが、記録に意識はない。誰にも真似できないほど練習して徹底的に準備するだけ。やり切った先にのみ勝利があり、そこにたまたま記録があるのだと思う。今年のグランプリもとんでもないメンバーが揃っている。狙って獲れるレースじゃない。

2022年を振り返り思うこと

 今年1年を振り返ってみると、いろいろあったなと思う。結果だけ、成績だけ見れば前半が良くて後半は良くなかったね。続く落車に苦悩したこともあった。お客さんにも迷惑と心配をかけた。ただ、残すレースはグランプリ1本って状況で「佐藤慎太郎の1年」を自己採点すれば、100点満点で90点はつけてやりたい状況。落車の影響がある開催以外は発走台に立って「すべてやれることはやった」と確信して走ることができたレースばかりだった。

“やり残したことはない”と思えることが基本(撮影:島尻譲)

 グランプリも万全の状態で臨み、あと5点くらいは加点したい。今、充実の毎日を過ごしているから“強気のオレ”がさらに強気になっている。全力で取り組めなかった練習に全力で挑める毎日は幸せだ。体も大いに戻ってきたわけだし、今年の最終自己採点を95点で締めくくりたい。平塚の前検日までにやれることはすべてやって乗り込むつもり。

 オレに甘い優しいファンのみなさんは「100点もあるぞ慎太郎!」なんて言ってくれそうだけど、どうやってもマイナス5点は取り返せないな。5月、地元いわき平の日本選手権で優勝できなかった事実だけは、自分が納得できるレースができたにせよ、頂点に立ちたかったので。“ファンが作ってくれた佐藤慎太郎”をお客さんに証明して恩返しするなら、今年はあの舞台しかなかったと思う。あのレースだけは結果に対してマイナス点がついちまうね。

地元いわき平で44ぶりに開催された日本選手権(撮影:島尻譲)

佐藤慎太郎の“渾身の走り”をしたいだけ

 ともあれ、オレはたぶん、「佐藤慎太郎の走り」ができなくなることが1番怖いんだと思う。だから限界を作らない練習に明け暮れて、いつだってレースに臨みたい。GIだGIIだGIIIだって、グレードなんて全く関係がない。それがグランプリだってそう。

 ただただ最高の練習をして、佐藤慎太郎の“渾身の走り”をしたいだけ。追い込み選手として最高のパフォーマンスができる状態を作っていたいだけ。それがオレの競輪道でもある。

 今年の春に平塚を優勝した時、シャンパンファイトの前に「三本ローラーの唄」を熱唱した。実体験を通して平塚の地で勝って熱唱するイメージはできている。

今年、平塚「湘南ダービー」を優勝し、美酒をラッパ飲み(撮影:島尻譲)

今年のおわりに

 それでは今年ラストのコラムはこれにて。みなさんの応援はいつもしっかり届いています。その都度、ガッチリ気合が入るし、限界を超えるための起爆剤にさせてもらっています。オレは限界なんて脳が作り出した幻だと本気で思っています。いわゆる「気のせい」です。今年はそんなTシャツも作りました。

 グランプリの発走台には自信の塊となって立つことを約束するので、この12月も1発、みなさんの熱い声援をよろしくお願いします。バシッとやってくるからよ! ガハハ!

鉄人・佐藤慎太郎が2022年末の平塚を熱くする(撮影:島尻譲)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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