ラインが3つある3分戦、それぞれのラインがどう動くか考えよう

TK　連載第2回はミッドナイト競輪を買ってみました。前回はGIIIレースだったので9車立てでしたが、ミッドは7車ですね。2車少ないだけでも少し楽に感じました。

木村　9車立てに比べると考えることが少なくなるし、ラインが2つだと予想は楽なんだけど、TKさんが買ったレースは3つのラインが出来ていたんだよね。

TK　高本ー栗本ライン、長谷川ー戸塚ライン、比佐ー石貞ラインの3つです。自分は高本ー栗本から購入しましたが車券は外してしまいました。高本ー栗本は自信があったので当たると思って…いつもは1点100円なんですが、ちょっと強気に200円ずつ買いました(苦笑)。

木村　高本は2着、栗本は3着と車券には絡んだけど、1着に戸塚が来るとはねー。3連単は⑥①②で12,620円と付いた。

TK　高本は準決勝で捲って5車身差の圧勝。競走得点も一番高いし、ここでは力上位かなと。番手で競走得点2位の栗本とは4場所前の大垣で連係してワンツーを決めてます。最も信頼できるのが高本ー栗本ラインでした。

　徹底先行の比佐が残り2周で前に出て、逃げた所を最終周回のバック過ぎで高本が捲って勝つ予想。高本が番手の栗本に差された場合も考え、1着と2着に2人を置きました。

木村　スタート時の初手の位置はどう考えたの？

TK　高本ー栗本、泉谷、比佐ー石貞、長谷川ー戸塚です。

木村　最後方の長谷川はどう動くと思った？

TK　いや…長谷川の動きまでは考えていませんでした。比佐が上がって空いたポジションに収まるぐらいの感覚で。そのまま位置なりの競走をするかなと。

木村　うーん、長谷川だって勝つために何か考えるわけだから、そこはもう一歩踏み込んで予想してみようよ。

TK　はい、次回から3分戦の場合、3つのラインがどう動くかも考えるようにします。木村さんはこのレースの出走表を見た時にまず何を考えたんですか？

木村　長谷川と比佐の先行意欲はまあまあありそうかなと。2人の比較では比佐の方が長谷川より先行意欲がある。バック数に現れているよね。

　長谷川に関しては、今の若手は人の前で死に駆け(番手選手を勝たせるために死ぬ気で踏んで逃げる)をしないし、西武園は戸塚の地元とはいえ、長谷川から見ると戸塚は点数も持っていない。引っ張る理由がないと思ったんだ。

　ラインの先頭3車を比較して、1番強いのは高本、比佐は先行に入るところを、長谷川が叩きにいったり動いたりしたところを高本が捲るというのが予想した展開だった。

TK　1着だった戸塚の番手捲りに驚きました。出走表の決まり手を見ると「逃げ」以外は0なんですよ。逃げ以外の決まり手がない選手が番手… 怖くて買い目に入れられなかったです。

木村　戸塚は逃げられなかったら1円もいらない徹底先行の選手だから…まあそう思うのも仕方ない(苦笑)。

　長谷川ー戸塚はスタート後、最後方からの後ろ攻めになった瞬間に肚を決めたんだと思う。ここぞというタイミングで踏み上げ、ギリギリまで高本を引き付けた。高本はホームから巻き返せば、戸塚の所までは行けた。戸塚はヨコの動きができる選手じゃないから、高本が長谷川の後ろに付けて、捲りになることもあったんじゃないかな。ラインの総合力では高本ー栗本に劣っていたけど、長谷川ー戸塚の作戦で勝利をもぎ取ったレースだと思うよ。

レース映像を面倒くさがらず見てみよう

木村　勝った戸塚だけど脚力が上がっているなと少し気になっていたんだ。

TK　どんな所を見てそう思ったんですか？

木村　前場所の奈良は周長333mと先行選手に有利なバンクとはいえ、2日目準決勝で格上のA級1・2班でも勝てそうな大本命の菊谷相手に逃げてあわやの2着。その前場所の西武園で8場所ぶりに準決勝を突破していたし、決勝でも充分買える選手だなと。

TK　出走表の直近成績を押して着順を見るだけではなくて、レースを見ないとダメですね。決勝になると当たり前ですがメンバー全員が良い着順なのでなおさら…。

木村　番手はnetkeirinの記事に書かれていたように準決勝に続き2回目。こういう時は準決勝のレース映像を見て欲しいんだけど。

TK　記事は読みました。でも面倒だったので映像は見ませんでした(苦笑)。

木村　大事なお金を賭けるんだから、そこは見ようよ(笑)。

　戸塚の準決勝は、打鐘から長谷川ー戸塚ラインが逃げ体制に入ったとき、別ラインの瀧本が長谷川の番手を狙って戸塚と並走状態になった。競輪用語で「飛び付き」って言うんだけど、戸塚は番手の競走が初めてにも関わらず、長谷川の番手を守り抜いた。戸塚のような番手経験の浅い選手が飛び付かれると、ほぼいなくなる(苦笑)。でも、戸塚は凌いだ。そして4コーナー4番手から西武園の伸びない外を伸びてきた。

　決勝でも番手の競走が再現出来るかといえば、メンバーや展開もあるから一概には言えないけど、車券を買うファンはこのレースを知っているかいないかは大きいと思うよ。他人が気づく前に気づけるか、だね。

TK　なるほど。戸塚の脚力が上がってきていることや番手の競走が出来ることを知っていれば、高本ー栗本軸の3連単マルチで戸塚を入れることも出来たわけですよね。競輪は出走表の情報だけで当てるのは難しいですね。

木村　前走、前々走チェックする。例えば戸塚が次に出走するレースの出走表には「まくり」が1個しかなくて、今回の西武園の決勝を見ていない場合、当たり車券を取り逃がす可能性がある。数字だけで見えない部分は、レース映像を見たり、「直線の切れ味が鋭い」とか「2周駆けしたら持たない」など、自分なりの視点で良いので選手の特徴を把握しておくことが大事だと思う。

ミッドナイトの1番車は有利なのか？

TK　高本は初日予選では初手から先頭を走り、残り2周で相手が来ても先頭を譲らない「突っ張り先行」を見せて勝っていましたが、なぜ決勝では突っ張らなかったのでしょうか？

木村　初日はラインが2つの2分戦で、競走得点の差も大きかったから突っ張っても勝てると考えていたと思うよ。もう1つのラインを潰せば、実質自分のラインの3車立てだったから。競走得点の高い選手が割り振られる1番車は、突っ張って逃げて敵ラインに競走をさせないことが多いんだ。

　決勝戦は競走得点やラインの総合力が拮抗する場合が多い。今回は3分戦だし、高本は突っ張ると勝てる可能性が少なくなるとわかっていたので、前を取って捲りに回ったんじゃないかな。番手の栗本に差される可能性や、比佐との踏み合いになれば長谷川に捲られる展開も考えられるからね。

TK　わかりました。予選では力の差があるので特に2分戦は多少強引な競争をしても勝てると。ミッドの1番車は有利なんですか？

木村　1番車は単純にスタートしてから先頭に立つまでの距離が短いから位置を取りやすい。外枠になればなるほど距離損が生まれるし、先頭を取るためにはダッシュが必要になる。

　ミッドは1番強い選手が位置を取りやすい1番車。2分戦の場合だと競走得点の高い選手のラインは、先頭の位置を取って、もう1つのラインが上がってきたら突っ張ればよいだけ。3分戦はラインが1つ増える分、先頭の位置を取ることが必ずしも有利ではなく、1度下げて捲りに回ることもあるけど、自分が思った位置を取りやすいので有利なんだよね。

TK　自分たちが有利に運べる1番車は有利なんですね。とはいえ、3分戦の場合だと今回の決勝のように作戦次第では他ラインにもチャンスはある。いろんなレースの車券を買って勉強していきます。

第2回の学び

第2回 木村先生からの通信簿