2022/09/11 (日) 12:00 9
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は岐阜競輪場で開催されている長良川鵜飼カップの決勝レース展望です。
現役時代、様々な競輪場でレースをしてきましたが、その中でも斡旋が楽しみだったのが、【善知鳥杯争奪戦】が開催されている青森競輪場でした。
地元の新鮮な魚が出てくる宿舎の食事は美味しく、その宿舎内には本格的な温泉も備え付けられていました。
泉質はナトリウム-塩化物強塩温泉で、お湯の色は白いタオルを持って行くと、変色してしまうような茶褐色。筋肉痛の改善にも効果があるようで、自分も練習やレースの後には、幾度となく疲れを癒していました。
この時期の青森は残暑の影響も少なく、【善知鳥杯争奪戦】に参戦している選手たちも、素晴らしいコンディションの下で、激しい戦いを繰り広げています。
その中でも注目を集めているのが、デビューから無傷の連勝を重ねながら、この準決勝で30連勝となった中野選手ではないでしょうか。
これまでは7車のレースでの連勝だっただけに、9車となる【善知鳥杯争奪戦】で、どんなレースを見せてくれるか楽しみにしていました。
初日から3連勝の内容も圧巻でした。特に二次予選では突っ張り先行をしていくと、そのまま2周の距離を逃げ切るという、圧巻の内容でした。準決勝でも突っ張り先行ができないと見るや、最後方まで車を下げてから、一気にかましていきました。
いずれのレースもトップスピードの高さだけでなく、持続力も証明しており、本当に凄い選手が出てきたなと思わされるばかりです。
決勝でその中野選手の後ろに付くのが、地元青森の新山選手。3番手は準決勝で中野選手のかましに付いていった、ベテランの内藤選手となります。
3車となったのは北日本ラインだけで、その他は郡司選手ー和田選手の神奈川ライン。
近畿は2人が決勝に乗りましたが、清水選手-三谷選手、吉田選手-椎木尾選手と、それぞれがSS班の後ろからのレースを選択しています。
この並びでポイントとなるのは、車番的にも前受けが濃厚となった中野選手が、突っ張るのか、突っ張れないのか。そして、連日好調な和田選手の動きです。
北日本ラインの後は清水選手-三谷選手、その後は神奈川ラインで、最後方となった吉田選手が椎木尾選手と共に、早めに北日本ラインを抑えにいくと思います。
その時、中野選手が突っ張っていくようだと、番手を回る新山選手が俄然有利となります。ただ、準決勝のように中野選手が車を下げてから発進していくようだと、その後ろに、先行体制に入った郡司選手が飛びつく可能性もあると見ています。
新山選手は自力型としても一流ではありますが、この決勝の中野選手や、準決勝で前を任せた磯島選手のような後輩の選手と一緒のレースとなった時には、番手からのレースもするようになってきました。
ただ、横の動きがそれほど上手くないだけに、他のラインから狙われやすいのも事実です。そして、今大会のレース内容を見ても、昨年の競輪祭のような強さには戻り切っていません。
一方、郡司選手はここまで全て2着ながらも、決勝までの勝ち上がり方を知っているようなレースをしているというのか、初日の特選から全て早めに仕掛けていました。
その結果がゴール前で後ろの選手に交わされての2着でしたが、決勝は自分の勝てる位置から仕掛けていくでしょうし、そのためにも、中野選手の後ろが優勝に一番近い位置だと思っているはずです。
中野選手の連勝を止めるとするなら、経験値も含めた総合力で勝る、郡司選手となりそうです。それでも突っ張り先行なら車券圏内、かまし先行ならば連に絡んでくるどころか、優勝の可能性もあると見ています。
個人的に中野選手にはこのメンバーを相手に優勝を果たすだけでなく、今後のGIIやGIでも、連勝記録を伸ばしてくれないかと期待をしています。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。