2022/07/26 (火) 12:00 5
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は佐世保競輪場で開催されている九十九島賞争奪戦の決勝レース展望です。
【九十九島賞争奪戦】にはSS班から郡司選手、守澤選手が参戦。その2人は力の違いを見せつけるかのように準決勝を快勝して、決勝へと進んできました。
抜群の出来だった郡司選手が当日欠場となったのは残念ですが、その一方でSS班の常連だった新田選手は二次予選で5着に敗れ、決勝進出を逃しています。
新田選手は3日目の特選では山口選手との競り合いを制して、今大会初勝利をあげていますが、まだまだ本調子ではないという印象を受けました。怪我の影響も大きいのでしょうし、万全な状態まで戻して、強い新田選手の走りを見せてもらいたいです。
対照的に今大会抜群の出来と言えるのが、二次予選で自らが今年の1月に樹立したバンクレコード(10秒7)を、更に塗り替えた(10秒6)中川選手です。
ただ、中川選手は抜群にいい走りを見せる日もあれば、全くダメな日もあると、車券的には狙いにくい選手です。ただ、準決勝ではジャンから先行を見せて、守澤選手の強襲にあったものの3着に残っています。
中川選手の長所はナショナルチーム仕込みのスピード能力の高さであり、特に立ち上げる能力の速さです。その一方で揉まれ弱いところがあったりと、能力の高さを発揮できないレースも多いですが、九州ラインの先頭を任された決勝では、積極果敢な先行を見せてくれるはずです。
その九州ラインを含めた決勝の並びですが、中川選手の後ろが山田選手-井上選手。北日本ラインが守澤選手-和田(圭)選手。和田(健)選手、杉森選手、伊藤選手は単騎となります。
初日の特選でも同じ3名(山田選手-井上選手-中川選手)で並んだ九州ラインですが、その時と違うのは、中川選手が前を任されたことです。
スタートを取るのは1番車に井上選手がいるだけに、九州ラインだと思います。その後ろは守澤選手が2番車となった北日本ラインで、単騎の3人はラインの切れ目か、7番手、8番手、9番手からのレースとなりそうです。
いい時の中川選手がとても強いのは、これまでのレースを見ても明らかです。そうなると他のラインや選手が欲しいのは、九州ラインの後ろ(4番手)となりますが、そこは2番車に入った守澤選手が入っていそうです。
目標がいなくなった和田(健)選手は、車番も悪いだけに、杉森選手の後ろにつけるか、強引に和田(圭)選手の後を狙っていく、もしくは中川選手を抑えに行くことも考えていると思います。
それでも中川選手が突っ張り先行に入ったのならば、北日本ラインの後ろにいる守澤選手は、勝負どころで捲りに入るはずです。その時、中川選手があまりにもかかっているようならば無理に交わさずに、山田選手の位置を狙ってくると思います。
山田選手は番手捲りの打てる選手ですし、守澤選手との横の争いを制して、地元の井上選手を引きつれて二段駆けができたのならば、優勝する可能性は非常に高いと見ています。
ただ、中川選手がマイペースで先行できたのならば守澤選手、山田選手も差し切るのは大変でしょうし、その場合は中川選手の逃げ切りも考えられます。
当日欠場はファンの皆さんも驚かれたでしょうし、決勝を走る選手たちにとっても、レースプランを見直す必要が出てきました。ただ、九州ラインへの影響は無かっただけに、ラインでの上位独占も充分に考えられそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。