2022/06/14 (火) 10:00 17
普段、松戸競輪場に取材に行くケースは少なく年1回のビッグレースぐらい。今回は、脇本雄太、日野未来がいるし、ペーチャンネルの出演下準備もあり、前検日の取材に向かった。
もう、脇本雄太選手に「ワッキー」とか、日野未来選手に「みく」と言うのは失礼だと思ってしまう。若い頃の無邪気で大酒呑みのワッキーも知っているが、ナショナルチームに加入して、世界を目指した経験から風格が出てきた。根は今でも「ゲーム好きの普通の少年」だろうが、敢えて、自分を戒め、厳しい姿勢でいると思う。数年前まで近畿における村上義弘の後継者は、稲垣裕之、稲川翔に繋ぐ流れだと思っていたが、一気に流れが変わり、脇本雄太が全てにおいて近畿のリーダーになって行くと思う。走りではない、それ以上の物を脇本雄太は持っているからだ。
日野未来選手に会うのも昨年夏の弥彦以来で1年ぶり。彼女がデビュー前のタレント時代から一緒に仕事をやっていたし、今の日野未来は信じられない。もう「中原未來」は忘却しないといけないし、今では立派なアスリート。学校時代はゴールデンキャップを取ったが、代謝のピンチもあった。僕自身、選手として“箔"をつけて、またこちら側の業界に戻ってくれば良いと思っていた。この時点で、女王(児玉碧衣)を破り、優勝するとは想像も出来なかった。
そして初日から3日目までペーチャンネルに出演。ゲストに高木真備さんが来てくれたが、改めて頭の回転の良い人だと思った。現役時代は緻密な走りが持ち味のグランプリレーサー。犬の保護司としての活動が夢で、それも引退を決めた理由のひとつの様だが、この業界から去るのは、もったいない。現状、ガールズ専門の解説者は不在だし、バラエティーのトークも上手い。それが番組中の「本命、全、全と言う買い方を覚えた。尾方真生ちゃんの頭が堅いと思い、真生ちゃん全、全をやったら落車で100万円車券(笑)。次は碧衣ちゃん全、全を松戸の初日にやったら2着。なんで、なんで、なんで…」と言う感じでした。これは、“すべらない話”に出演しても、爆笑ネタになると思う。現役の時は「自分が勝つ走りを想定してレースを組み立てた。だけど、車券は全体の動きを読まないといけないから難しい」と、この日は大苦戦。彼女の才能があれば犬の保護司と競輪界の二刀流は可能。夕食のお弁当が予定より1時間届くのが遅く、番組出演後になったが「せっかく頼んで戴いたのだから待っています」との人間性も素晴らしかった。「毎日が刺激的です!」は彼女の本音だろう。
最終日は普通にビールを飲み、焼き鳥を食べ、場内で一人のファンとして楽しんでいた。どこの競輪場も売店が閉鎖される中で、売り切れ続出の店が多かったのは良い事だ。ナイターは“夏のお祭りの雰囲気がベスト”だと思うし、ライブ感も十分あった。そして、ガールズ決勝。こんなドラマが待ち受けているとは思っていなかった。女王の児玉碧衣を、日野未来が破るなんて…。タレント時代、そしてデビュー前、デビュー後。今みたいな精悍な顔ではなかったし、体も引き締まっていなかった。タレントだから自分の魅せ方は上手い。だけど、アスリートは実力の世界だから数字が全て。ゴールした瞬間、僕は呆然と立ち尽くし、走馬灯の様に色々な思い出が蘇ってきた。そして、自然と涙ぐんでいた。そうしたら、A主さんが駆け寄ってきていて、A主さんも涙ぐんでいた。同じ場所で同じ感動を共有出来るなんて夢みたいだ。A主さんは、“育ての親”であり、木三原さくらさんは日野未来の“盟友”だ。チャリチャンのスタジオを見に行ったら、さくらちゃんも宝石の様な涙を流していた。決勝は脇本雄太が圧巻のレース。ひと言、心の中で「おめでとう」と言い、松戸競輪場を後にした。これが、ここ数日の僕の出来事だ。
町田洋一
Machida Yoichi
基本は闘うフリーの記者。イー新聞総合プロデューサー、アオケイ・企画開発パブリストの肩書きも持つ。自称グルメでお酒をこよなく愛す。毒のある呟きをモットーにして、深夜の戯言も好評を得ている。50代独身で80代の母親と二人暮らし。実態はギャンブルにやられ、心がすさみ、やさぐれている哀しき中年男である。