2022/06/12 (日) 16:00 18
雑談の中から真実の言葉を引き出すのが、有能な記者だと思っている。それには、普段からの雑学や教養、こちら側の言葉のセンスや競輪の知識、当たり前だが信頼関係も大切になってくる。この年になると周りからの目を気にしなくなったり、人から好かれたいと思わなくなる。中継番組に出たりするとアンチの言葉も多いが、敢えて耳を傾けるようにしている。
ただ、新規ファンが増えて、間違った競輪に行くのは心を痛めている。少数意見でもネットでの拡散で、大きな意見に見えてしまうからだ。やはり、取手記念の前検日も佐藤慎太郎先生とその話題になった。
「競輪の間口が広がり、新たなファンが増えたのは良い事。昔からの競輪ファンなら、俺がやっている競輪を理解してくれると思う。ただネット民にアンチが多い。ファンの裾野が増えたと思い、これは我慢するしかないな」
続けて「寝る前に携帯の電源は切った方が良い。そうでないと、夜、目覚めた時や朝起きる前にLINEなどのチェックをすると思う。交感神経と副交感神経が刺激を受け自律神経が乱れる。俺はアンチのコメントに頭がくるから、携帯をソファーに放り投げてから電源を切り寝るけどね(笑)」
あとは宿口陽一選手の「宇都宮記念が終わり、平原さんから手厳しい言葉を貰った」と言うのもあった。詳しい内容は教えてくれなかったが、これも2人だから分かる世界。聞いてしまうと野暮だと思うが、40歳になった平原康多選手に高松宮記念杯で聞いてみようと思う。この言葉があり、宿口陽一は完全に復調している。
武田豊樹選手の「まだ、追い込み1年生」、宿口陽一が芦澤大輔を称える「後ろが闘将(芦澤大輔)だから気合が入った」、小嶋敬二の「爆笑、引退否定会見」も面白かった。やはり、これから関東は吉田拓矢が中心となり引っ張って行って欲しいし、新たなリーダー像を築くのを願いたい。
弟2人は吉本興業のお笑い芸人より面白いが、拓矢は寡黙で無骨。平原康多の後継者は間違いなく吉田拓矢だ。そしてレインボーファイナルでは台和紀が2着に入り勝負駆けに成功してS級特進。平原道場に行き成績がアップしたが「練習内容は変わらない。ただ、練習を一緒にやる様になり、“良い運気"を感じる様になった」。これが平原効果なのだろう。
どうしても、南修二選手から深い競輪道を聞きたいが、今回も夢破れた。南修二は、走りと同様、男は黙って仕事をやるタイプ。僕が以前書いた「近畿のマーク屋の序列について」でも、南修二の序列は高い。だから、若手自力選手が逃げて自ら止めに行く流れや、無茶で無謀な走りをやる自在選手に対しての考えも求めたかった。ここでも自分の三流記者ぶりを実感。
決勝は吉田拓矢に乗った吉澤純平が5年ぶりの地元記念の優勝。もう忘れていたが、あの5年前は吉澤純平・武田豊樹の師弟コンビと、吉田拓矢・芦澤大輔は別線で戦っている。吉澤にすれば、今年は、拓矢の番手で優勝したいと言う強い信念があっただろう。決勝メンバーが発表された時に、僕はその事を失念していて、吉澤純平に話を聞く事が出来なかった。継続して“ドラマ"があるのが競輪の魅力。それを反省して、次の松戸GIIIの取材に向かった。
町田洋一
Machida Yoichi
基本は闘うフリーの記者。イー新聞総合プロデューサー、アオケイ・企画開発パブリストの肩書きも持つ。自称グルメでお酒をこよなく愛す。毒のある呟きをモットーにして、深夜の戯言も好評を得ている。50代独身で80代の母親と二人暮らし。実態はギャンブルにやられ、心がすさみ、やさぐれている哀しき中年男である。