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猪突猛進

【清水裕友コラム】 どん底から状況一変! “ビッグ”連覇の原動力は「ラインの信頼関係」 #6 猪突猛進

2022/04/02 (土) 12:00 18

競輪は何が起こるかわからない。前回のコラムで「競輪人生で一番ショック」と嘆いたばかりだったが、宇都宮で開催されたGIIウィナーズカップを連覇。準決勝では通算200勝も達成した。清水裕友コラム第6弾『猪突猛進』は、どん底からどう立て直したのか。そして自身をV字回復へと導いた原動力はなんだったのか。ウィナーズカップの回顧を中心にお届けします。最後にはお便りコーナーも。

どん底から状況一変! 自身をV字回復へと導いた原動力とは(撮影:島尻譲)

ーーまずは通算200勝達成。そして、ウィナーズカップ連覇おめでとうございます。

 びっくりですね。底に落ちてみたり、GIIを獲ってみたり。まさか勝てるとは思っていなかった。とにかく、今回はラインのおかげで優勝できた。200勝達成は素直に嬉しい。通過点だけどデビューしてから、もうこんなに経つのかと思う時もある。これからも一歩ずつ頑張っていきたい。

ーー詳細はまたのちほど。前回のコラムが「競輪人生で一番ショック」と、どん底にいました。周囲から反響はありましたか?

 選手からというよりは、知り合いの方からの反応が多かった。

ーー心配の声?

 いや、心配というよりは励ましというか。声をかけてくれる感じの。

ーー3月1本目の名古屋記念(金鯱賞争奪戦)も準決勝敗退。最終日も9着でした。

 状況は変わらずでしたね。でも、これで逆に吹っ切れた感じはあったかな。

ーーそして迎えたGIIウィナーズカップ。昨年の松阪で優勝した大会。今回はどんな心理で臨みましたか?

 前検日の時点では、気持ちはそこまで入っていなかった。優勝したい、結果を出そうというよりは、一戦一戦、やれることを頑張ろう、と。

「一戦一戦、やれることを頑張ろう」と臨んだウィナーズカップだった(撮影:島尻譲)

ーーこれまでとは少し違う感じに。

 結果を残そうとするとダメな事が多い。まずは気持ちの面から(変えよう)と思って。

ーー初日特選が取鳥雄吾選手マークから1着。優秀戦『毘沙門天賞』が町田太我選手、松浦悠士選手の3番手回り。準決勝が町田選手マークで1着。決勝は太田竜馬選手、松浦選手の3番手回りから優勝。4日間、人の後ろでした。

 本当にラインのおかげ。前を走ってくれた選手が強かった。それに尽きる。それ以外にない。サマーナイトフェスティバルで3日間、人の後ろはあったけど、4日間の開催で全部、人の後ろだったのは初めて。

ーー今回の松浦選手との前後はすんなり決まったのですか?

 優秀戦は(町田)太我と松浦さんが同県だったので、そこの3番手はすんなり、でしたね。決勝は、太田君が先頭を頑張ってくれるってなって、松浦さんに“どうしますか?”って聞いたら、準決勝の僕がキツそうに見えたみたいで。状態のいい俺(松浦)が前をやろうか、って。実際にキツかったんですけどね。相手が脇本(雄太)さんだったし、自分がハコ捲りして、あのタイムで上がれるとは限らなかったから。結果的には良かったと思う。脇本さんがいつ飛んでくるのか、どれだけ凄いスピードでくるのか、気が気じゃなかったけど、太田君の掛かりが凄かった。

決勝戦は太田竜馬-松浦悠士-清水裕友という並び「太田くんの掛かりが凄かった」(撮影:島尻譲)

ーー連覇でした。ビッグレースの同一大会Vも初めて。

 連覇は初めて。本当にびっくり。フタを開けてみたら、って感じ。中四国の層の厚さに助けられた。これで調子が戻るわけではないけど、その中で結果が出たのが嬉しい。こういう時に勝てたのは大きい。

ーー清水選手がいなかった奈良記念(春日賞争覇戦)の決勝もそうでしたが、あらためて中四国ラインの底力を見せてもらった気がします。

 若手が増えて盛り上がっている。今回はラインがなかったら絶対に優勝できていない。現状は脇本さん相手には二段駆けじゃないと厳しい、と露呈してしまっているけど…。

ーー裏を返せば、束になればラインの力で一番強い選手を倒せる。

 そうですね。少しでも多くの選手が勝ち上がると有利になってくる。

ーーラインの重要性が浮き彫りになってきたところで、清水選手が考えるラインあり方とは?

 あり方…。難しいね。おのおのが、自分のやる事を頑張る、って事かな。普段からの信頼関係もあるだろうし。その場、その場でお互いが機能する、誰と組んでも相手に抵抗できるような、それが理想なのかな。

町田太我-松浦悠士-清水裕友という並び。ラインの信頼関係が大切(撮影:島尻譲)

ーー松浦選手とは信頼関係が築けている。

 そうですね。松浦さんの後ろを回る場合は、付いていくだけなので。

ーー今回のウィナーズカップに関しては、ラインが機能した。

 前の選手が強かった。頑張ってくれた。それだけ。自分は彼らに対して何もできなかったし、番手の選手としてはまだ機能しているとは言いがたい。初日の雄吾にしても、準決勝の太我にしても、あれだけ頑張ってくれたのに、もう少し援護したかった。後ろを回った時に課題がある。まだまだ経験不足。これからまたこういう機会も増えてくるだろうし、しっかり出来るようにしていきたい。ラインの先頭を受け持った時は、いかに勝負どころを逃さずに仕掛けられるか、ですね。

「まだまだ経験不足」と気を引き締めたが、200勝達成は素直に嬉しかった(撮影:島尻譲)

ーー賞金面でも大きい今年初優勝だったと思います。

 結果に関しては少しホッとしてます。本当にわからないもんですね。自分が一番びっくりしているし、誰も僕が優勝するとは思っていなかったでしょうしね。賞金は大きいは大きいけど、まだまだここから長いので。目の前の一戦一戦を頑張っていきたい。

ーー心理面の変化は先ほどうかがいました。具体的に何か変えていったものはありましたか?

 自転車は新車で行った。シューズやセッティングのセットも4日間、全て変えて臨んだ。5月のダービーに向けて、自転車の組み合わせ、自転車とシューズの組み合わせ、何がどうかみ合うのかを試していた。こういうのをベースにやっていこうかな、というのは見つかった。ダービーまでに自力で戦えるように戻していきたい。ラインに勝たせてもらったウィナーズカップの結果で満足するわけではない。あくまで、自力でビッグレースを勝つ事を目標にやっていきたい。

どん底の状態にいながらも、ラインの結束力でVを勝ち取った。逆もまたしかり。強い選手が絶好調でも勝てるとは限らない。競輪の面白さ、深みを体現している清水裕友。次なるビッグレースの日本選手権(5月3〜8日、いわき平競輪場)に向けて、このVを上昇のきっかけにしてみせる。


【読者から届いた質問コーナー】

ーー周りのレベルがかなり上がっている、と前回のコラムでありましたが、具体的にはどのレースでそれを感じましたか?

 どのレースでも感じてますね。全体的にタイムが上がっているし、みんなモガける距離が長い。なかなか緩むところがなくてレースが難しくなっている。

ーー今でも、特に仲がいい同期は誰ですか?

 渡邉雄太(静岡)と石塚輪太郞(和歌山)さんですね。一緒に旅行も行ったりしました。宿舎とかでもよくしゃべっています。名古屋記念でふたりと一緒でしたね。

ーー次は凄い質問です。近いうちにデビューする者です。これから競輪選手になる上での心構え、大切なことなどを教えていただけたら嬉しいです。(匿名)ですって。匿名なのが残念ですが。

 心構え…。うーん、とにかく自分のやりたいようにやる。何かの目標を持って、それに向かってやっていく。ですかね。自分がそういうスタンスなので。まぁ自分の人生ですからね。あとは公営競技なので、お客さんのお金がかかっているのを自覚することですかね。最近ふがいない自分が言っても、あまり説得力がないかもしれませんけど(苦笑)。

公営競技はお客さんのお金がかかっている(撮影:島尻譲)

ーー調子が悪くても赤裸々に話してくれるヒロトがかっこいいです! 自分も頑張ろうって気持ちになります! ところで本とか読みますか?

 本は一切、読まないですね。これまでも、読んだことがないに等しいくらい、読んでない。

ーー山口県のハモを食べてみたいです。清水選手が好きなお魚はなんですか?

 マグロとウニですね。刺身が好きです。羽田空港で時間があってお寿司屋さんに寄る時は、マグロづくし、ウニ何貫とかだけ頼むくらいその二つが好きですね。

ーー今、花粉症に悩まされています。清水選手はアレルギーはありますか?

 僕も花粉症です。スギ、ヒノキ。冬は気管支がやられるし、春は花粉症。夏は暑くてダメ。過ごしやすいのは…秋くらいかな。そういえばアレルギー体質かも。豆乳を飲んだり、濃い豆腐を食べたら、ノドがかゆくなって呼吸が苦しくなっちゃいますね。

ーーモーツァルトは「ジュピター」が好きです。格調が高いと思います。清水さんはどの曲がお好きですか?

 短調の曲をよく聴きますね。「交響曲40番」とか、ミサ曲の「レクイエム」。モーツァルトが最後に書いた曲なんですけど。ただ、モーツァルトが完成させたわけではないとも言われている曲ですね。

ーー卒業・入学シーズンですね。学生時代の春の思い出ってありますか?

 特にないかなぁ。高校の卒業式だったか、その直前だったのかちょっと忘れたけど、講堂で表彰される機会があって。名前を呼ばれて立たないといけない時に、寝ちゃってて立てなかったんですよね。あとから注意されましたわ。あとは中学3年の時に、どこかから家に帰って、また出かけようとしたら、家に置いていた自転車がなくなっていた。盗まれていたんですよ。ママチャリが。鍵をかけるのを忘れてて。それくらいですかね、思い出は。

春の思い出は…(撮影:島尻譲)

(取材・構成=netkeirin編集部)

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清水裕友

Hiroto Shimizu

清水裕友(しみずひろと)。山口県防府市出身。105期。日本競輪選手会山口支部所属。師匠は國村洋。ビックレースはGI「読売新聞社杯全日本選抜競輪」(2020年)、GII「サマーナイトフェスティバル」(2020年)、GII「ウィナーズカップ」(2021年)。

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