2022/03/29 (火) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は玉野競輪場で開催されている瀬戸の王子杯争奪戦の決勝レース展望です。
3月にリニューアルオープンしたばかりの玉野競輪場はバンクだけでなく、宿舎も新しくなりました。その宿舎には国内の競輪場としては初めてホテル(KEIRIN HOTEL10)も併設。ファンの皆さんも宿泊先の部屋から、競輪を楽しめるようになっています。
個人的にも玉野競輪場は好きなバンクでした。環境の良さだけでなく、成績も良かった印象があります。また、岡山には仲のいい選手もいたので、頻繁に合宿にも行ってましたし、夏の練習後にはその選手が持っていたボートに乗って、瀬戸内海の島を巡ってもいました。
玉野市内はホテルの数も少なく、今後はこのホテルに宿泊に来られた方が、競輪の魅力に気付くということも考えらます。自分も久しぶりに玉野に行ってみたくもなりましたし、その際は是非とも、このホテルに宿泊してみたいと思っています。
今大会に出場した選手たちも素晴らしい環境の元、連日共に力を出し切っていましたが、やはり、実力者たちが決勝に勝ち上がってきました。
決勝の並びですが、3車が勝ち上がってきた中国ラインは、地元岡山の山根選手と柏野選手に挟まれる形で、広島の松浦選手が番手となりました。
準決勝では2着に敗れはしたものの、力の違いを見せている脇本選手の後ろは、佐藤選手-和田選手の北日本ライン。その脇本選手を準決勝で差し切った吉田選手の後ろは、同じ関東ラインの志村選手。熊本の松岡選手は単騎となっています。
地元では初めての記念競輪出走ながら、決勝に進んできたのが、119期のゴールデンキャップを獲得した山根選手です。準決勝では、同じく自力型の太田選手の捲りを封じ込むかのように、早めに先行していったレース内容は見事でした。ただ、その山根選手を凌駕するようなスピードを見せていたのが脇本選手です。この3日間を見ていても、【ウィナーズカップ】より良くなっている印象はありながらも、まだ全盛期の状態には戻り切ってないのか捲り、もしくはかまし先行のレースが多くなっています。
自力型の吉田選手も先行よりは捲りを狙っているでしょうし、必然的に山根選手の先行が濃厚となります。前受けをするのは脇本選手となりそうですが、後方にいる吉田選手が並びかけた時に車を下げていくはず。それを見て、一気に先行していきそうなのが山根選手です。
松浦選手を筆頭に、最近の記念競輪では中四国ラインの選手たちの活躍が目立っています。【ウィナーズカップ】もそうですが、ラインの結束力も強く、山根選手が全開で踏み出していったのなら、脇本選手とは言えども、力でねじ伏せるのは難しいかもしれません。
しかも、山根選手の後ろを回る松浦選手は、タイミングを見計らって番手捲りをしてくると思いますし、その後ろを回っている柏野選手も調子の良さが目立っています。準決勝と同様に、決勝でもこの2人でのワンツーフィニッシュとなる可能性は高そうです。
中国ラインの後ろを回っていそうな吉田選手も調子が良く、松浦選手の仕掛けに合わせて二段掛けのようなレースが出来たのならば、2人(松浦選手、柏野選手)の間に割って入ることも考えられます。
もし山根選手の先行に、脇本選手がやり合っていくようだと、吉田選手には願ってもいない展開となります。逆に吉田選手が山根選手に並び駆けて、車列が短くなるようだと、脇本選手が一気に捲りきってしまうはずです。
脇本選手は全盛期の状態では無くとも、このメンバーでもスピードの違いは明らかであり、車券から外すわけにはいかないでしょう。むしろ宿舎も綺麗で、環境も整った玉野で四日間に渡り鋭気を養ったことで、決勝ではベストパフォーマンスを見せてくれるのかもしれません。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。