2025/01/16 (木) 12:00
昨年12月に引退した神山雄一郎氏が、4月1日付けで日本競輪選手養成所の所長に就任すると発表された。昨年12月23日の取手F1で909勝目を挙げて引退したレジェンドが、若手の育成にかかわることは嬉しい限りだ。今の滝澤正光所長は、JIKのアドバイザーに就くと合わせて発表された。
神山氏と言えば、競輪ファンなら誰でも知っているレジェンドだ。グランプリこそ縁がなかったが、グランドスラムを達成するなど、長きにわたり競輪界を引っ張ってきた。競輪だけではなく1996年のアトランタ五輪ではスプリントに出場。ケイリンが正式種目になった2000年シドニーには、ケイリンとオリンピックスプリント(現在はチームスプリント)に出場し、オリンピックスプリントではメダルこそ逃したが、5位入賞を果たした。
その神山氏を慕う選手は多い。ただ心配なのは、今の若者が神山氏を意識しているかどうかだ。正直なところ、これから選手を目指す子は神山氏の全盛期を知らない。もちろん、師匠や先輩から話は聞いているだろうが…。
滝澤氏が現役を引退し、養成所には「滝澤教場」(T教場)が置かれた。当時はそれこそその期のトップクラスが滝澤教場で教えを請う形になり、マスコミも大いに注目した。
2016年、ブノワ・ベトゥ氏がナショナルチームのヘッドコーチに就任してからは、ナショナル仕込みの「ハイパフォーマンスディビジョン」(HPD)に注目が集まり、多くの訓練生がHPDを目指した。このHPDは世界で活躍する選手の育成を目指したもので、ナショナルチームと同様のメソッド、理論、トレーニング機器を使用するもの。この頃からナショナルチームの脇本雄太が競輪でも結果を残すようになり、HPDが主流になっていると言っても過言ではなくなってきている。その中でも、滝澤教場で力をつけた選手もいる。その代表が北井佑季だろう。滝澤所長を心酔し、その言葉を信じた結果、昨年のG1高松宮記念杯競輪を優勝することができた。
さて、神山氏はどのようなスタンスで候補生に接し、指導していくのだろうか。滝澤所長はひとことで言えば、泥臭く、乗り込みが根幹にあった。神山氏は五輪を2度経験していることもあり、滝澤所長の考えに加え、ナショナルチームのトレーニングにも精通していると考えられる。独自色を出しながら、若手をキッチリ育てていってくれることであろう。「神山さんは先生タイプ」と多くの選手が言っていると聞いたことがある。それは、理論もそうだが、教え方も上手だということだろう。何しろ、競輪を心から愛している神山氏なら、競輪選手としてだけではなく、人間として成長させてくれるのではないかと期待を抱かせる。その手腕を今から楽しみにしたい。
Text/Norikazu Iwai
Photo/P-NAVI編集部
※掲載写真は引退を発表した会見時のものです
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター