2018/08/10 (金) 10:49
ガールズの7期生が7月からデビューしている。在校1位&卒業記念レース1位の柳原真緒(福井114期)をはじめ、在校時にゴールデンキャップを獲得した日野未来(奈良114期)など、早くから話題に事欠かなかった。ただ、残念ながらこの原稿を執筆している時点で、優勝したのは佐藤水菜(神奈川114期)と野本怜菜(埼玉114期)の2人だけである。佐藤は7月26日の川崎で、3日間先行して、高木真備(東京106期)、林真奈美(福岡110期)の実力者を寄せつけなかった。野本は8月3日の京王閣で、児玉碧衣(福岡)、梅川風子(東京)を捲りで撃破した。No.1の柳原はどうか?取手開催(8月12日)までに6走して、1着はわずか1回。奈良、豊橋と、決勝には進んでいるものの、前評判通りの強さは影を潜めている。8月9日からの川崎開催に出ている日野も6走で、1着は岸和田の最終日(一般戦)だけである。
ここに来て評価が急上昇しているのは那須萌美(宮崎114期)であろう。競輪学校在校時は4位ながら、あまり目立たない存在であった。デビュー戦の高知で決勝に進出し、続く佐世保では2日目に大敗を喫しって、惜しくも決勝には進むことができなかった。だが、ファンや関係者をうならせたのは8月8日に終わった平塚開催だろう。初日は山原さくら(高知104期)の後ろに追い上げ、ピッタリ追走。ガールズケイリン、それも新人らしからぬ走りでスタンドを沸かせた。2日目も好位置を取ってからの追い込みで1着。高木真備を3着に沈めた。山原、高木、尾崎睦(神奈川108期)が争ったシリーズで、無名に近い那須は走る度にファンの心を鷲掴みにしたに違いない。スピードがある訳でもなく、捲りが強烈な訳でもない。しかし、追い込みテクニック、位置取りの巧さは先輩たちを遥かに凌いでいた。決勝は山原の2番手という絶好の展開だったが、最後は3番手の高木に抜かれて3着だった。
優しそうな、おとなしそうな風貌とは裏腹に、トコトン勝負に徹している。一歩間違えれば落車につながるかもしれない競走だが、マーク屋としてのセンスは抜群だ。「自力で頑張ります」などと言いながらも動けない選手、動けないならば初めからそんなコメントを残す必要はないだろう。キレイ事を言う選手がガールズケイリンには多い気がしてならない。だが、那須は黙して語らずではないが、一本筋が通っているように思えるのだ。
選手個々のことを書いてきたが、114期生に対して、危惧していることがある。佐藤は3シリーズ目となる西武園2日目に『誘導員早期追い抜き』の反則で失格を犯している。柳原も失格にこそなかったが、豊橋で並走状態のまま外に膨れるような動きがあった。プロである以上、佐藤の反則は実に初歩的なところ。柳原の案件は“永遠のテーマ”というのは大袈裟だが、ガールズケイリンのルール、その杜撰(ずさん)さが垣間見られたようにも思える。筆者は以前にも書いたが、ガールズケイリンは国際ルールに則ったものである。しかしながら関係者は「あくまでも準拠」だと言い張る。国際ルールを適用するのであれば、横の動きや相手が不利になるような膨らみや押し込みはアウトの裁定が下る。これは柳原を批判しているのではなく、改めてガールズルールを考え直してもらいたいと切に願うゆえの問題提起である。それと同時に新人に対するルール周知を徹底すべきだ。競輪学校を卒業したばかりの選手がなぜ?と、疑問に思ってしまう。言うまでもなく競輪競走は危険の伴うものであるのだから、今一度、ルールをガールズの選手たちに叩き込んで欲しい。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター