2018/08/21 (火) 13:32
自転車競技の普及とガールズケイリン選手の育成を掲げたガールズサマーキャンプが今年も8月に日本競輪学校で行われた。参加費は6,000円と9,000円、自転車を持っていなくてもレンタル可能。自転車競技に興味を持っていても、なかなか踏み込めない女子に門戸を開いた形だ。国内トップレベルのスタッフが懇切丁寧に指導にあたる。参加費用には宿泊代、食費も含まれている。
2010年から数えて9回目。年々、参加者は増え、今年は100人を超えた。そして、グループを3つに分けた。自転車トラック初心者、中学生対象は8月8日〜10日、11日〜14日。中級・上級者向けは15日〜18日。このキャンプからガールズケイリンのスターになった選手は多い。また、サマーキャンプだけではなく、3月にはガールズサテライトキャンプが武雄競輪場で開かれた。自転車競技の裾野を広める意味では成功だろう。関係者によれば「これだけの人数が集まってくれたのは本当に驚きだし、嬉しい」とのことだ。
今年は五輪メダリストのテオ・ボス(オランダ)が15日から特別コーチとして参加したのも話題になった。15日組は秋に行われる118期生の試験を受ける女子がほとんどだ。中には何度もキャンプに参加している女子も見受けられた。高校の部活とは違い、怒号が飛び交うこともなく、和気あいあいとスケジュールが消化されていった。中でも特別コーチのボスが一番盛り上がっていたかも知れない。参加者がヘトヘトになっても、手綱を緩めない。もちろん、そこは超一流のアスリートであるから参加者を巧く乗せる術(すべ)は心得ている。
初心者組も数時間のトレーニングで簡単にバンクを疾走できるようになった。断崖絶壁を思わせるバンクで恐怖心を取り除くのも一苦労なのにである。熱中症対策も万全で、1時間、いや30〜40分のトレーニングが終わるとシッカリ水分補給が行われた。これだけ恵まれたキャンプは他の競技にはないだろう。「未来の五輪選手」や「ガールズケイリンのスター選手」の発掘・育成、関係者の熱意が伝わるキャンプであった。バンクでのトレーニング以外にも女性アスリート特有の講義も行われた。
今年の高校総体(インターハイ)から、女子の自転車競技が“正式種目”になった。昨年までは“公開競技”だったのだが、関係者の努力で認められた。あと2年に迫った東京五輪には今回のキャンプに参加したメンバーは間に合わないが、参加者の中には「2024年のパリには出たい」と、目標を掲げる者もいた。憧れの選手も以前は圧倒的に加瀬加奈子(新潟102期)だったのだが、今は小林優香(福岡106期)が人気になっている。
筆者は毎回ではないが、時間の都合がつけばサマーキャンプの取材に足を運ぶ。世間ではマイナー競技の自転車だが、女子の競技人口は間違いなく増えている。そして、五輪に対する思いも以前とは比べものにならない。残念なのはメディアの扱いが小さすぎることだ。もう少しメディアが注目してくれることを願っている。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター