2022/03/28 (月) 12:00 15
玉野競輪場はリニューアルし、バンクの真横にブリリアントなホテルができた。その名は「KEIRIN HOTEL 10」。
宿泊する人には“10人目の選手になった気持ちで”という思いが込められている。競輪に思いを込めて何かしている人がいるという事実だけでもグっとくる。とにかくいろんなことが落ち着いたら泊まりに行こう。
競輪には可能性がある、ということを教えてくれるものでもある。「競輪はもっとこうしたら、ああしたら」「あんなことやっちゃっても」。何十年も語りつくされてきたと思うが、バンクの真横にホテルを建てるというのは結構ぶっ飛んでいる。
しかし、競輪はファンが楽しむものなので、率直にそこに来てもらう、楽しんでもらうという狙いはストレートだ。海が近い玉野というロケーションもあるわけだが、こういう球をビシビシ投げてほしい。プロ野球が開幕し、日本ハムの“BIG BOSS”新庄剛志の強烈さ、その上での真面目さがうらやましい限りだが、競輪界もやれないことはない。
玉野のホテルとは全く別で、向日町競輪場について窓場千加頼(30歳・京都=100期)と話したことがある。「向日町競輪場の地下を掘り起こすと思わぬ文化遺産とか出てくるんでしょう」と聞くと、千加頼は「京都あるあるで、家を建てようとして地盤調査をすると、何か見つかったとかいって工事が止まって、なかなか家を建てられないことが結構あるんですよ」と笑っていた。
趣あふれる京都なので「なんか昔っぽい競輪場に変えるのもいいんでしょうね」と話すと、千加頼は「金網の部分を竹の柵にするとか風情があっていいかもしれませんね」と笑った。
その時は「竹、いいね〜」と返したものだが、今振り返ると「レース、見えなくね? 」。千加頼(チカヨリ、あえてこう書かせてもらいますよ)の穏やかな発想が今になって思い返される。
競輪場はすぐに建て替えたりは難しいもの。しかし、玉野が見せた一撃で、他の競輪場は動き出せるのではないか。土地柄に合った競輪場をグイグイ押し出してほしい。その一角に、もつ煮込みを出すお店を置いておけばいいのです。
10年ほど前にこういうことを書く時は、「高齢者の保養施設として血圧を測れる部屋を作り、地域のホスピタリティとしての競輪場を」と書いてきたが、もうそんな時代を過ぎて、もっと革新的なものが求められている。
千葉競輪場の跡に建てられた「TIPSTAR DOME CHIBA」もそうで、競輪場は新たな形を生み出せる。可能性があることは証明されている。その可能性に踏み込めるかどうか、が今だ。
ボートレースは年間の売り上げが2兆円を軽く超え、競輪も1兆円超え復活は目の前まで来た。今動かないでいつ動くの? という時代だ。改修工事中の熊本競輪場もだいぶポップに建て替える建設計画もあったが、センターボールを建てないといけないという古い規則にぶつかったという。
現在の発達した映像技術を駆使すれば、多方面からの撮影で審判行為の確実性は担保されるだろう。どうしても競輪界の内側から物事を見がちだが、全く違う視点を大いに取り入れる業界でいいはずだ。根本の公営競技としての公正安全については、揺るぎない精神を持つわけだから。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。